コロナ感染第2波に備え個人防護具(PPE)の適正使用法再確認を




コロナ 医療

自衛隊中央病院で
院内感染が発生しなかった理由

東京都を中心に、新たな感染者が連日のように最多を更新し、新型コロナウイルスの感染再拡大が現実の脅威となりつつあります。

感染第2波への備えが喫緊の課題となっている今、7月3日の医療専門サイトm3.comに非常に貴重なインタビュー記事*¹が掲載されています。

そこでは、ピーク時には102人もの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を受け入れた自衛隊中央病院で、院内感染が発生しなかったのはなぜかを、院長以下、関係者へのインタビューを通して検証しているのです。

自衛隊中央病院は、災害時に傷病者を大量に受け入れる防衛省の医療機関です。
同時に、エボラ出血熱や天然痘、ペストといった1類感染症の患者対応に当たる第一種感染症指定医療機関としての任も負っています。

したがって、いざというときに備え、指揮系統や関係諸機関との連携システムが徹底されています。加えて、日頃から、感染症の基礎知識に関する教育(年2回)と、1類感染症患者の受け入れを想定した個人防護具の着脱手技訓練を毎週月曜日に実施しているそうです。
→ COVID-19院内感染の原因にならないために

個人防護具(PPE)など
感染対策の基本手技徹底を

上記のような日頃からの訓練に加え、実際にCOVID-19の患者を受け入れるに際しては、
「目から飛沫・接触感染するリスクも想定」し、患者対応に当たる職員には、個人防護具(Personal Protective Equipments:略称「PPE」)として、フェイスガード、N95マスク、ガウン、ゴーグル等の着用を義務づけたそうです。

そのうえで、安心して診療に当たるには「感染対策の基本を守り続けることに尽きる」との考えのもとに以下の徹底を図ったと、同院第3内科部長の青野茂昭医師は説明しています。

  1. 自分にきちんと合ったN95マスクを選ぶために、定期的にフィットテスト*で空気の漏れの有無を測定し、正しい装着方法を身に着けておく
  2. N95マスクを装着するたびにユーザーシールチェックを行い、マスクと顔の隙間から空気が漏れないことを確認する
  3. 個人防護服(長袖ガウン)は、特に脱ぐときが重要であるため、一人でもチェックできるよう、姿見の鏡を随所に設置する
  4. 手指消毒を徹底する
  5. 感染症病棟以外でも、ドアノブやエレベーターのボタン、業務用タブレット端末など、職員や患者が手に触れるものの消毒を徹底する
  6. ICT(Infection control team:感染対策チーム)のメンバーによる各種会議での注意喚起、巡回指導の徹底
*フィットテスト
CDC(米国疾病管理センター)のガイドラインは、呼吸器防護具(N95タイプのマスク等)のフィットテストを、以下のように規定している。
「どの呼吸器防護具が使用者に十分フィットするかを決定し、(固定方法など)どのような場合に呼吸器防護具が正しくフィットするか使用者の知識を確実なものにするために行うこと」
なお、日本にはフィットテストの実施に関する規定はないが、通常は入職時や感染リスクの高い病棟への配属時などに加え、最低でも年に1回は実施するのが望ましいとされている。

N95マスク等個人防護具の
正しい着用手順のポイント

日本環境感染学会の「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版」では、「個人防護具の種類と着脱手順例」を写真入りで紹介しています*²。

このなかで「N95マスクの着用を要する場面」として、
「気管挿管、NPPV(非侵襲的陽圧換気マスク)、気管切開、心肺蘇生、用手換気、気管支鏡検査など一時的に大量のエアロゾルが生じる処置の実施時」
をあげ、その場合の個人防護具の着用手順を次のように説明しています。

  1. N95マスクを装着する
  2. N95マスク装着後は、以下の手順でユーザーシールチェックを行う
    ① 両手で装着したマスクを覆う
    ② そのままの状態で息を強く吐き出す
    ③ マスクと顔の隙間から空気が漏れないことを確認する
  3. フェイスシールドまたはゴーグルを着ける
  4. キャップを着ける
  5. ガウンを着用する
  6. 手袋を装着し、手首が露出しないように手袋でガウンの袖口を覆う

N95マスク等個人防護具の適正使用については、規格外製品が相当数出回っていることを受け、日本環境感染学会等が注意喚起のメッセージを公表しています。
詳しくはこちらの記事を参照してください。
→ N95マスク等呼吸用防護具の使用に注意喚起

ガウンなど個人防護具の
ウイルス汚染を防ぐ脱衣手順

ウイルスに汚染されやすいのは、個人防護具を脱ぐ(脱衣する)ときです。
日本環境感染学会の対応ガイドは、その手順を、次のように紹介しています。

  1. ガウンと手袋は次の手順で一緒に、裏返しながら脱ぐ
    ① 手袋をしたままの手でガウンの表面(外側)をつかみ、
    ② 首の後ろ部分をちぎる
    ③ 裏側が表になるようにしてガウンと手袋を脱ぎ取り、
    ④ 手袋を脱いだ素手でガウンの外側になっていた部分に触れないように注意しながら、
    ⑤ ガウンと手袋を小さくまとめて、
    ⑥ 破棄する
  2. 手指衛生を行う
  3. キャップ → フェイスシールド(ゴーグル) → N95マスクの順に、それぞれの表面(外側になっていた部分)が顔に触れないように注意ながら外す
  4. 手指衛生を行う

感染管理認定看護師による
個人防護具の着脱動画

なお、より具体的に知りたい方は、自衛隊中央病院の感染管理認定看護師による医療従事者用【感染防止動画 ガウンの着脱編】*³をYoutubeで視聴してみてはいかがでしょうか。
そこでは、以下の手順が紹介されています。

◆ガウンの装着
手指消毒を行う → キャップをかぶる(接触感染防止のために髪をすべて入れる)→ N95マスクを装着する(ノーズワイヤが鋭角になると頂点に隙間ができてしまうため注意)→ ガウンを装着する(ヒモをしっかり結んで隙間をつくらない)→ 手袋を装着する(ガウンの袖を手袋に入れて手首を露出させない)→ ゴーグルを装着する

◆ガウンの脱衣
手袋をしたまま手指消毒をする → 脱衣時の感染を最小限にするため、最初に手袋を交換する→ 姿見の鏡で見ながらガウンを脱ぐ(汚染部位をくるんで、周囲を汚染しないように小さく丸める)→ 手指消毒 → ゴーグルを外す(ウイルスが目に入らないように目をつぶって行うといい)→ マスクを外す(表面を触らないようにヒモを持って)→ キャップを外す

参考資料*¹:検証・自衛隊中央病院 Vol.2 院内感染”ゼロ”、訓練と基本の徹底の賜物
参考資料*²:日本環境感染学会「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版」
参考資料*³:自衛隊中央病院・感染管理認定看護師による医療従事者用【感染防止動画 ガウンの着脱編】