新型コロナウイルスの職業感染を疑ったら




感染予防

新型コロナウイルス曝露により
職業感染を受けた看護師さん

「あーあ、ついに出てしまったか」――。
2月17日、神奈川県相模原市の病院に勤務する40代の看護師さんが新型コロナウイルスに感染したと聞き、なんとも残念でやりきれない気持ちになりました。

なぜならこの看護師、Aさんは、新型コロナウイルスの感染が確認され国内で初めての死亡例となった80代女性の看護を担当していたと報じられているからです。

厚生労働省の発表によれば、死亡した女性が新型コロナウイルスに感染していたことは、死亡後に届いた検査結果で初めて確認されたようです。

そのためA看護師は、患者を新型コロナウイルスの感染者として認識できないまま血圧測定や排泄介助などの日常的ケアを介して感染者に濃厚接触し、その結果としてウイルス曝露による職業感染を受けてしまったことになります*¹。

なお、この女性の死因について担当医は、県の調査に対し「死亡診断書では、検査結果が出ていなかったことから普通の肺炎としたが、新型コロナウイルスによる新型肺炎が直接の死因と考えている」との見解を明らかにしている旨、報じられています。

ウイルス曝露による職業感染は
感染予防策の徹底と体調管理で防ぐ

A看護師に関する報道を見聞きして、
「もしかしたら自分も感染を受けてしまうのでは……」
と危機感を抱きながら、医療現場において日々担当業務をこなしている看護師さんも少なくないと思われます。

慶応大学病院は4月23日、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)以外の患者67人に対し、入院前や手術前に、このウイルスに感染しているかどうかを調べるPCR検査を行った結果、COVID-19の症状が見られる患者はいなかったものの、6%にあたる4人が陽性だったことが確認されたことを報告している。発熱や呼吸器症状以外の訴えで外来を訪れる患者の感染状況を反映している可能性があると考え、すべての診療科や救急外来で感染リスクを踏まえた対応が求められる。

新型コロナウイルスによる職業感染を防ぐには、まずはその感染リスクがごく身近にあるということを強く意識することが重要でしょう。

こうした認識のもとに、先の記事で紹介した
「医療機関における新型コロナウイルス感染症の疑いがある人や新型コロナウイルス感染症患者への診察時の感染予防策」
を徹底することにより、ウイルス曝露から身を守るのが最も確かな方法です。

新型コロナウイルスの感染拡大 国内初、医師の感染確認 加藤勝信厚生労働相は2月13日深夜の会見で、肺炎で死亡し…

同時に、自身の体調の変化にはいつも以上に気を配り、「少々熱っぽい」とか「いつになく倦怠感が強い」など、「いつもと違うな」と感じるときは、次に紹介する「相談・受診の目安」を参考に、躊躇することなく最寄りの「帰国者・接触者相談センター」の専用ダイヤルに相談することをおすすめします。

体調に異変を感じたときの
「相談・受診の目安」

体調に異変を感じたときの相談については、加藤勝信厚生労働相が2月17日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症専門家会議(座長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)における議論を踏まえてまとめられた「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」を発表し、厚生労働省のWEBサイトで公表しています*²。

その後、5月7日には目安の見直しを行い、以下のように変更しています。

■風邪症状を自覚したら勤務を休む
そこでは冒頭、「相談・受診の前に心がけること」として、次の2点をあげています。
⑴ 発熱等の風邪症状が見られるときは、学校や会社を休み外出を控える
⑵ 発熱等の風邪症状が見られたら、毎日、体温を測定し記録しておく

このうち⑴については、「私が休むと人手が足りなくなる」などと考えて無理を押して勤務に出るといったことはなんとしても避けるべきです。
この点については、やはり看護管理者の理解が欠かせないところでしょう。

■軽い風邪症状が続いたら相談
そのうえで、「帰国者・接触者(電話)相談センターに相談する目安」として、
⑴ 発熱やせきなどの軽い風邪症状が続く
⑵ 強い倦怠感(だるさ)や呼吸困難(息苦しさ)、高熱
のいずれかに該当することをあげています。
このうち⑴が4日以上続く場合は「必ず相談」、⑵については「直ちに相談」としています。

■基礎疾患があり重症化しやすい人は早めに
例外として、高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、COPD等の呼吸器疾患)がある、あるいは透析治療中であったり、免疫抑制剤や抗がん剤を使用している人は重症化しやすいとして、上記の⑴もしくは⑵があれば、すぐに相談するよう促しています。

なお、小児については現時点で重症化しやすいとする報告はないため、通常の目安どおりに対応すればよいとしています。
ただし妊婦については、念のため重症化しやすいケースと考え、該当症状があれば、専用ダイヤルにてすぐに相談するよう助言しています。

受診をすすめられたら
紹介された医療機関を受診する

相談先として挙げられている新型コロナウイルスに関する「帰国者・接触者相談センター」の専用ダイヤルは、全国の保健所などに設けられています。
最寄りの相談センターは厚生労働省のWEBサイトで探すことができます*³。

同センター窓口では、受けた相談内容から「新型コロナウイルスに感染した疑いがある」と判断すると、相談者がより適切な診療を受けられるよう、最寄りの「帰国者・接触者専門外来」を紹介してくれることになっています。

■受診には公的交通機関を利用しない
その際は、サージカルマスクを正しく着用し、公共交通機関の利用を避けて、受診をすすめられた医療機関の「帰国者・接触者専門外来」を受診することになります。

医療機関勤務の看護師さんとしては、仮に勤務先に顔見知りの感染症専門医がいたりすれば、その医師の診療を受けたくもなるでしょう。

しかし厚生労働省は、感染が疑われる人をより適切な医療につないぐことにより新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点からも、
⑴ 相談センターがすすめる医療機関を受診すること、
⑵ 複数の医療機関を受診することは控えること、
を厳守するよう求めています。

とは言え、指定された医療機関への移動手段が公共交通機関以外にないということもあるでしょう。
その場合は、各相談センターによって対応に多少の違いはあるものの、保健所が用意している感染症患者専用の搬送車両、あるいは救急車などで搬送してもらえるようですから、是非相談してみてください。

■医療費は保険の自己負担分が公費で
なお、ウイルス検査で陽性反応が出てしまったために保健所の勧告を受けて入院することになり、一定期間仕事を休むことになった場合は、感染症法第37条が適用され、指定感染症認定期間中にかかる医療費は各自治体の判断のもと公費で負担されます。

この場合、患者が加入している各種公的医療保険が優先して適用され、その自己負担分が公費で賄われることになります。
ただし自治体によっては、世帯員(日常の住居、生活を共にしている人の集まり)の総所得額によって、一部負担額の公費負担分に20,000円の上限を設けているところもあります。

いずれにしても、この制度により、少なくとも経済面では安心して治療に専念することができるように配慮されていることになります。

職業感染により入院といった事態を避けるためにも、十分な休養と睡眠、そしてなによりもウイルスに打ち勝つための免疫力アップに向けた食事の充実をお忘れなく!!

新型コロナウイルス 国内初の院内感染を受けて 新型コロナウイルスによる国内での感染者が日を追って増えています。…
日本環境感染学会は3月2日に改訂した「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版」*⁴のp.11にて、患者対応にあたった医療従事者のウイルス曝露のリスク評価と対応を表にまとめ紹介しています。
詳しくはこちらの記事を参照してください。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。このまま感染者が増え続けると、一般の医療機関でも感染者対応が求められることに。その想定の元、日本環境感染学会は対応ガイドの第2版で、医療従事者のウイルス曝露リスク評価と対応を提示している。そのポイントをまとめた。

参考資料*¹:新型コロナウイルス感染症による新たな県内の患者確認について(神奈川県)
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000596963.pdf
参考資料*²:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596905.pdf
参考資料*³:厚生労働省「新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター」
参考資料*⁴:「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版」
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide2.pdf