COVID-19の患者対応で燃えつきないで!!




コロナ 感謝

COVID-19と闘う医療従事者に
感謝の声が届く一方で

目の前の新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の患者を助けたい、救いたい――。
そんな強い思いで日々懸命に治療やケアに奮闘している医療従事者の方々に、感謝の気持ちを届ける取組みが各地に広がっています。

4月3日には、「フライデーオベーション、金曜日に感謝の拍手を!!」との呼びかけで、福岡市役所や茨城県庁などで、正午の時報に合わせて職員らがベランダに出て、医療や介護に携わる人びとに向け、一斉に感謝の拍手を送ったことが報じられています。

患者の治療やケアに追われ、三度三度の食事も簡単なものになりがちだろうと、免疫力アップにいいと言われる野菜や果物、ナッツ類を集めた新鮮な特製サラダカップや軽食、あるいは弁当を、病院スタッフに差し入れるといった試みも、あちこちに広がっているようです。

医療従事者や家族への嫌がらせや差別も

この他にも、胸が熱くなるような取り組みがさまざま報じられているのですが……。
一方で、とても悲しく残念な話も漏れ伝わってきます。

COVID-19の感染が拡大するのに伴い、患者や医療従事者、さらにはその家族に対する誹謗中傷が日を増すごとに広がっていると言うのです。

COVID-19という確かな治療法のない新興感染症への対応でひっ迫した医療現場にあって、ただでさえ心身ともに疲弊しきっているなか、心ない嫌がらせや差別に振り回されて燃えつき(バーンアウト)してしまい、冷静な対応ができなくなる――。

そんなことにならないように、今回は、あなた自身のメンタルケアに役立てていただける情報をお届けしたいと思います。

WHOから医療従事者に向けた
メンタルケア・メッセージ

COVID-19の現状を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言したWHO(世界保健機関)は、3月18日、「COVID-19アウトブレイク中のメンタルヘルスと心理社会的影響に関する検討事項暫定ガイダンス」を公表しています、

そのなかにある、医療従事者に向けたメッセージのポイントを、以下に紹介します(「非公式日本語訳/2020年3月27日」*¹による)。

  1. 医療従事者として、現在の状況においてストレスを感じるのはごく普通のことです。
    現在経験しているストレスとそれに関連する感情は、あなたに仕事の能力がないこと、またはあなたが弱いことを反映しているわけではありません。
  2. 自分自身を大切にして、ストレスに有効な対処手段を積極的にとるようにしましょう。
    勤務中やシフトとシフトの間には休息と休憩をとるようにして、健康的な食事を摂ったり、運動をしたり、家族と連絡を取り合ったりするようにしましょう。
    タバコやアルコール、薬物といった無益な対処手段をとるのは避けてください。
    今回のCOVID-19のアウトブレイクといった事態は、多くの医療従事者にとって前例のない事態です。しかし、過去にストレスを受けたときに有益だった対処手段が、今のあなたにも役立ちます。あなた自身のストレス緩和、解消法を一番よく知っているのはあなた自身ですから、躊躇することなく自分の心理状態をよく保つことに取り組んでください。
  3. 医療従事者のなかには、残念ながら、COVID-19に対するスティグマ(偏見)や恐怖のため、家族やコミュニティから避けられる経験をする方もいるかもしれません。
    その際は、あなたが大切に思う人と電話やビデオ通話などで連絡を取り合い、人とのつながりを保つ努力をしてみてください。
    同僚や上司など信頼できる人に社会的支援を求めてみるのもいいでしょう。
  4. 知的障害、認知機能障害、心理社会的障害のある人とのコミュニケーションには、文章のみに依存することなく、彼らが理解しやすい手段を使いましょう。
  5. COVID-19の影響を受けている人たちを支え、利用可能な社会的資源につなげる方法について、情報リテラシーを高める(情報を収集し理解を深める)ことは、当事者へのサポートに役立つだけでなく、あなた自身のメンタルケアにも役立つことです。

なお、個人的には叫びの壷 を活用して、ときにはこころの中に溜まっている不安や怒りやイライラを大声で思いっきり叫んでみることもお勧めしたい。スッキリしますよ!!

チームリーダーや管理者向けの
メンタルケア・メッセージ

WHOの上記ガイダンスでは、「医療施設のチームリーダーや管理者の方」に向けたメッセージも掲載されています。ポイントをまとめてみます。

  1. COVID-19への対応が続く間は、すべてのスタッフを慢性的なストレスや精神的に不健康な状態から守ることは、彼らが各々の役割を果たす能力を高めることにつながります。
    現在の状況は一晩で終わるものではありませんから、短期の緊急対応を繰り返すよりも長期的な労働環境の整備にシフトすべきであることを心に留めてください。
  2. すべてのスタッフが、質の高いコミュニケーションを確保し、正確な情報にアクセスできるようにしてください。
    高いストレスがかかる任務と比較的ストレスの低い任務でローテーションを組むこと、また、経験の浅いスタッフをより経験豊富な先輩と仕事を組めるように配慮することは、支援の提供やストレスのモニタリング、安全手順の強化につながります。
  3. スタッフ自ら進んでシフト中の休憩や休暇がとれるように配慮してください。
    スタッフ自身やその家族メンバーがストレスフルな出来事の影響を受けているような場合には、勤務スケジュールを柔軟に調整して、スタッフ間でお互いを支え合うことができるように、そのための時間を組み入れてください。
  4. メンタルヘルスや心理社会的サポートサービスへのアクセス方法をスタッフが十分認識できていることを確認し、アクセスを促してください。
    管理者やリーダー自身もスタッフ同様にストレスに直面しているうえに、職責の程度に応じたさらなるプレッシャーがかかる可能性があります。
    自らもストレス軽減のためのセルフケアに取り組んでみせることで、スタッフの手本となることもを重要な役割です。
  5. 看護スタッフや救急車運転手、ボランティア、コミュニティのケアリーダー、検疫所スタッフなど、COVID-19に対応しているすべての人が、心理的支援を行えるように、そのためのメンタルケアの方法をオリエンテーションしてください。

COVID-19がもたらす
3つの感染症

日本看護協会の福井トシ子会長は、4月3日のCOVID-19に関する記者会見のなかで、自身もCOVID-19に感染した看護師が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負った事例や、看護師の子どもがいじめを受けた事例を紹介して、看護職をはじめとする医療従事者やその家族に対する差別や偏見をなくすよう訴えています。

同時に、新型コロナウイルスのような未知のウイルスは「3つの感染症」、つまり「生物学的感染症」「心理的感染症」「社会的感染症」をもたらすとされ、COVID-19対応においては、生物学的感染症への感染対策はもちろんのこと、心理的かつ社会的感染症がもたらす影響も考慮に入れながら、医療従事者をサポートする体制が必要であるとする説*²を紹介しています。

なお、COVID-19の対応に当たっている医療従事者に対するこころのケアについては、こちらの記事で、筑波大学医学系臨床医学域・災害・地域精神医学講座(太刀川 弘和教授)の説を紹介しています。是非目を通してみてください。
→ 新型コロナウイルス感染症の重症者救命に向けて

なお、燃えつき、つまりバーンアウトに関しては、こちらの記事を読んでみてください。
→ 看護師の「バーンアウト」を防ぎたい!!

参考資料*¹:WHO「COVID-19アウトブレイク中のメンタルヘルスと心理社会的影響に関する検討事項暫定ガイダンス」(非公式日本語訳/2020年3月27日)

参考資料*²:日本赤十字社「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイド」

厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症関連 SNS心の相談」コーナーを設けています。こちらを活用するのも一法です。https://lifelinksns.net/