感染研が「院内感染」等のクラスター事例集公開




コロナ対策

新型コロナクラスター発生の
典型6事例を分析

国立感染症研究所(感染研)の感染症疫学センターは8月13日、国内でこれまでに発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)を分析した結果をまとめ、事例集として一般に公開しています*¹。

感染研は厚生労働省の依頼を受け、クラスターが発生した地域に対策班を派遣し、これまでおよそ100件に対応してきました。

事例集では、「典型的なクラスター発生場面」として以下の6ケースをあげ、それぞれの分析結果を図式化し、紹介しています。

▪医療機関
▪スポーツジム
▪カラオケを伴う飲食店
▪接待を伴う飲食店
▪職場会議
▪バスツアー

今回分析対象とされたクラスター発生場面は、上記のようにさまざまです。
しかし、それぞれの場面におけるクラスター発生状況の分析結果をみると、そこには、以下のような感染拡大を招いたいくつかの共通要因があることがわかります。

▪狭い空間で換気が不十分だった
▪マスクを着けずに近距離で長時間会話をしていた
▪症状が出ても勤務を続けていた

このような結果から分析チームは、
「3密を避ける生活様式の徹底」「マスクの着用」「手洗いの励行」
といった基本的な感染対策の徹底こそがクラスターの発生を未然に防ぐとして、その徹底励行を改めて呼びかけています。

1人の患者(感染者)を発端に
院内・施設内・家族内の11人に

事例集がトップで紹介されているのは、医療機関における「院内感染クラスター」です。

ここで事例として紹介しているのは、新型コロナウイルスに感染していたものの発症前であったため、本人はもとよりかかわった医療スタッフも感染に気づかず入院生活を続けていた患者Aを発端(感染源)にしたクラスター事例です。

患者から看護師への病棟内感染が院内感染へと広がり、さらに患者の退院後には退院先の施設内感染から感染を受けた看護師の家族内感染へと続き、最終的には都合11人が感染しています。

具体的には、患者Aが入院していた「病棟1」では、まず2人の看護師が感染。
そのうち1人の看護師からその家族1人へと感染が広がっています。

その後患者Aは、感染に気づかないまま退院し、介護老人保健施設に入所しているのですが、その施設において、入居者2人と職員1人に感染が拡大。

さらに、「病棟1」で患者Aから感染を受けた2人の看護師、あるいはそのいずれかと休憩室で一緒の時間を過ごした「病棟2」の看護師が感染。

この看護師から「病棟2」の患者2人に感染が広がり、このうち1人の患者のリハビリテーションを担当したリハビリ技師も感染を受けています。

院内感染クラスター
発生要因と感染防止対策

この院内感染ケースについて専門家チームは、クラスターが発生した主な感染拡大要因として以下の3点があると分析しています。

  1. 処置やリハビリ時における基本的な手指衛生等の感染対策が不徹底、不十分であったことによる患者から職員への感染
  2. 休憩室など、換気しにくく、狭く密になりやすい環境における飛沫、接触感染、また共用物品(仮眠室のリネン、PHS等)による職員間の感染による別病棟への感染拡大
  3. 感染に気づかないまま、介護老人保健施設へ退院、退院先で感染が波及

院内感染クラスターを発生させない感染対策

この分析結果から、以下の対策を徹底して院内感染クラスターの発生を防ぐよう呼びかけています。

  1. 新型コロナウイルス感染症の感染経路は、主に喀痰や鼻水などの体液、およびそれらで汚染された環境に触った手で目や鼻、口などの粘膜に触れたり、くしゃみなどの飛沫が目や鼻、口などの粘膜に付着したり、呼吸器に入ることにより感染する。
    したがって、新型コロナウイルス感染症の流行期にある現在は、患者の診療・ケアにおいては、感染の有無にかかわらず、すべての患者に標準予防策に加え、接触予防策と飛沫予防策を特に意識して徹底する
  2. 有症状者の早期探知
    新型コロナウイルスの潜伏期は1~14日間であり、ウイルス曝露から5日程度で発症することが多いとされている。
    発症前から感染性があり、発症から間もない時期は感染性が高いことがクラスター発生の原因とも考えられている。
    初期症状はインフルエンザや感冒に似ているため新型コロナウイルス感染症を早期に探知することは容易ではないが、発熱、咳、ときに味覚や嗅覚の異常があれば疑ってみる*
  3. 院内の3密(密閉、密集、密接)の環境を減らす工夫をする
    3密は1つでもあれば感染リスクとなるため、換気の徹底、フィジカルディスタンス(身体的距離)の確保を徹底してリスクを減らす
    特に職員用休憩室は「換気が不十分」「狭い部屋に密集」「備え付けの備品を共有する」など感染リスクが高いことを意識する
  4. 転院、退院時の情報共有

気をつけたい新型コロナウイルス感染症「疑い患者」

なお、新型コロナウイルス感染症「疑い患者」の要件として、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第2.2版」は以下をあげている*²。

  • 発熱または呼吸器症状があり、COVID-19の確定診断を受けた者との濃厚接触がある患者
  • 37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状があり、これらの症状が発症する14日前以内に、COVID-19の流行が確認されている地域に渡航または居住していた患者
  • 37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状があり、これらの症状発症14日前以内に、COVID-19の流行が確認されている地域に渡航または居住していた者と濃厚接触歴がある患者
  • 発熱、呼吸器症状、その他感染症を疑う症状があり、医師が集中治療かそれに準ずる治療が必要と判断するものの、特定の感染症と診断することができないとして、COVID-19の鑑別が必要となった患者
  • 以上に加え、発熱かつ呼吸器症状等の症状から入院を要する肺炎が疑われ、高齢、基礎疾患があるなどを考慮し、医師が総合的に判断してCOVID-19を疑う患者

参考資料*¹:クラスター事例集

参考資料*²:新型コロナウイルス感染症(covid-19)・診療の手引き・第2.2版

この8月(2020年)に刊行されたばかりのこちら本も参考に!!