新型ウイルス対策に現代版ナイチンゲール登場を




クルーズ船

新型コロナウイルスによる死者が
SARSを超えて908人に

中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、中国政府は2月10日、同日午前0時の時点で死者908人、感染者が4万171人に達したことを発表しています。

2003年に大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)による全世界での死者、774人をすでに大幅に上回っており、事態の深刻さを改めて痛感させられます。

WHO(世界保健機関)の報告では、中国本土以外では、日本やタイ、シンガポールなど27の国と地域において380人の感染者が確認され、そのうちフィリピンと香港ではそれぞれ1人の死亡が確認されているそうです。

事務局長のテドロス氏は9日、中国への渡航歴がない人から新型コロナウイルスが広がったと懸念されるケースがあることを指摘。
「公衆衛生上の緊急事態」が続くなかで、すべての国が新型ウイルス上陸の可能性に備えて感染対策を強化するよう求めています。

国内の流行はないが
クルーズ船内で集団感染発生

わがくに国内においては、今のところ流行が認められる状況にはないと考えていいようです。

しかし、2月3日に横浜港に到着し、新型コロナウイルスの集団感染が発生したためそのまま停泊している大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内では、乗客と乗務員、延べ336人に新型コロナウイルスの検査が行われ、陽性反応が確認された135人(10日午後6時現在)が、順次国内の感染症病床を有する医療機関に搬送されています。

これらの搬送者には、高血圧や糖尿病などの持病を持つ高齢者が多いうえに、日本語を話さない外国籍の方も少なからずいると聞きます。

感染者を受け入れている現場の看護師さんは、院内感染防止対策の徹底に加え、高齢の感染患者にあっては肺炎と持病の重症化防止、さらには慣れない外国語による対応と、日々大変な苦労をしておられることと思います。

新型コロナウイルスの発生地である武漢市内の医療機関では、ウイルスに感染してしまった医療関係者もいれば、患者対応に追われる苛酷な勤務状況に加え、食事も満足にとれない状況もあって、ストレスから心身ともに疲労困憊してダウンした方が少なくないと聞きます。

わが国の現状はそこまで深刻化していないとは思いますが、看護師さんをはじめ現場の医療スタッフが倒れてしまったら、手の打ちようがなくなってしまいます。
どうかセルフケアを第一に考え、オーバーワークにならないように心してほしいものです。
また、食事と休息・睡眠を十分とることをお忘れなく。

濃厚接触がない乗客は
19日に隔離終了の方針

一方、日々心配が募るのは、停泊中のクルーズ船内で隔離状態に置かれ、船内の客室内での生活を余儀なくされている3000人を優に超えるとされる乗客の方々です。

WHOは10日午前、この乗客の隔離期間について、「感染者と濃厚接触した人以外は今月19日に終了する」との見通しを発表しています。

19日は、船内の乗客に、ウイルス検査により最初の感染が確認された今月5日から起算して14日が経過したタイミングとなります。

一方で、感染者と濃厚接触した人は、最後に接触した日から14日間の隔離が必要だとされ、19日以降も船内にとどまることになります。

メディアの報道によれば、すでに10日の時点で、乗客の多くが疲労のピークに達していて、さまざまな不安や不満、苦情が関係者のもとに寄せられているようです。

隔離状態にある乗客から
常用している「薬を」のSOS

数ある不安や苦情のなかでも、とりわけ健康、時には命にも直結する問題として迅速な対応が待たれるのは、かかりつけ医の処方を受けて常用している高血圧や糖尿病といった持病の治療薬の手持ちがなくなっている、との訴えでしょう。

厚生労働省は9日、乗客から要望のあったおよそ1850人分の薬のうち、必要性が高いと判断される750人分の薬を船内に届けたと発表しました。
残りの分についても、10日には搬入できるよう鋭意手配中だとしています。

ところが、船内に届いているはずの薬が、必要としている方の手元に届いていない状況が続いているようで、10日の午後になっても、多くの乗客がバルコニーなどから「くすり」などと書いた垂れ幕を垂らすなどしてSOSを発信しています。

取材した記者によれば、船内に届いた薬については、薬剤師が確認したうえで当事者に間違いなく配薬することが必要なのですが、その作業が追いついていないとのこと。
これには、「薬剤師会がもっと人員を手配して、必要としている人にもっとスムーズに届けてあげることはできないのかしら……」といった声が聞かれますが、いかがでしょうか。

隔離状態にある乗客の
人的・物的生活環境に問題が

健康上、人びとが生活する環境を整えることを重視する看護の視点からすれば、
「船内で感染者が確認され、客室から出ないようにとの指示が出た5日以降、室内の掃除はもちろん、シーツ類やタオル類を交換してもらえていない」
といった乗客の訴えがとても気になります。

客室にバルコニーがあれば、窓を開けて換気をすることも可能でしょう。
バルコニーに出てストレッチや屈伸運動などをすれば、筋力の低下を防ぐこともできるでしょうし、なによりも気分が晴れるでしょう。

ところが、バルコニーのない客室も数多くあるようです。
そこは窓を開放することもできないとの報があり、閉じこもり症候群や狭い部屋で長時間じっとしていることによるエコノミークラス症候群、高齢者であればそれがフレイルにつながることも懸念されます。

たまたま一人旅だったりすれば、何日もほとんど会話のない状態で隔離された生活が続くことになります。心身のストレス状態から精神面へのマイナスの影響が懸念されます。
高齢者であれば、認知機能の低下を招くことだって、決してないとは言い切れません。

ナイチンゲールだったら
この状態を見過ごさないのでは

そんなことを考えていて、ふと、クリミア戦争時のナイチンゲールのことが頭に浮かびました。
ナイチンゲールのような発想をしてクルーズ船の乗客たちに支援の手を差し伸べる看護職がいたらいいのになぁと思い、日看協のWEBサイトにアクセスしてみたのですが、今回の新型コロナウイルスに関する情報は一つも見当たりません。

それでは、と気持ちも新たに「日本感染看護学会」や「日本災害看護学会」など、いくつかの関係しそうな看護学会のWEBサイトをみたのですが……、残念ながら皆無です。

感染者が運び込まれた医療現場での活動とは別に、船内に隔離状態に置かれている乗客たちの日々の生活や心情に思いをはせて動き出すような現代版ナイチンゲールが登場したなら、乗客たちはさぞかし救われることでしょう。

また、看護職の存在や看護の力の大きさを社会にアピールする絶好の機会ともなると思うのですが、いかがでしょうか。

新型コロナウイルス関連肺炎の院内感染対策指針は、こちらの記事を参照してください。

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