COVID-19軽症者らの療養は宿泊施設を基本に




ホテル生活

COVID-19の軽症者ら
自宅療養から宿泊療養へ

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)で「軽症」と診断された患者らの療養場所について、加藤勝信厚生労働大臣は4月24日の記者会見で、自宅は原則禁止とし、都道府県が借り上げたホテルなどの宿泊施設の利用を基本とする考えを表明しました。

軽症者、およびPCR検査で陽性であっても症状が現われていない、いわゆる無症候性感染者については、厚生労働省はこれまで、高齢者や基礎疾患があるなどの重症化リスクが高い人を除き、自宅もしくはホテルなどの宿泊施設で療養することを容認してきました。

新型コロナウイルスの感染者が急増して入院患者数が既存の病床数を上回り、重症者への対応が間に合わず救える命も救えなくなってしまうような医療崩壊を招かないためには、入院患者数の抑制が不可欠となります。
軽症者らの自宅療養容認は、そのための苦肉の策だったと言っていいでしょう。

家庭内感染防止と急変時の迅速な対応を

しかし、軽症患者、あるいは無症状の感染者とは言え、自宅における療養については、家庭内での感染リスクが高いことが懸念されていました。

また、COVID-19は、初期症状が通常の風邪やインフルエンザのような症状であっても急性増悪する可能性があることがわかっています。
自宅療養では、この急変時の対応が遅れることを心配する声も少なからずあがっていました。

そんななか埼玉県内で、新型コロナウイルスに感染し、軽症と診断されて自宅で療養中だった男性患者が、容体が急変して死亡するといったことが続けざまに起きてしまいました。
この事態を深刻に受け止めた厚生労働省が、原則禁止へと方針転換したわけです。

なお、子育てなど家庭の事情で自宅療養を選択せざるを得ない軽症患者も少なからずいるでしょう。このようなケースについては、患者と家族双方をしっかりフォローアップする態勢を用意することを条件に、自宅療養を容認するとしています。

軽症のCOVID-19とは言え
急性増悪する可能性が……

COVID-19は、年齢層や基礎疾患の有無などにより重症度が異なることが多いのが特徴です。
そのため、「軽症」に関する明確な定義もないのが現状です。

たとえば、高山義浩医師(沖縄県中部病院感染症内科・地域ケア科/横浜港におけるクルーズ船対応で厚生労働省技術技官として対応に奔走)が提示したCOVID-19の臨床経過図によれば、普通の風邪を思わせるような発熱や咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻閉感程度の症状であれば、一般に「軽症」と判断されるようです。

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。一般市民はもちろん医療従事者も「敵の姿」が見えてこないだけに不安が強い。幸い、感染症と公衆衛生の専門医により「新型コロナウイルス感染症の典型的な臨床経過」と、その経過を踏まえた感染対策が公表された。

この状態であれば、風邪がちょっと長引いているといった程度で、水や食事も自分で摂ることができるでしょうから、入院するまでもないだろうと判断され、各都道府県が用意した「宿泊施設で様子を見ましょう」となるようです。

厚生労働省によれば、4月24日時点で、すでに32を超える都道府県が宿泊施設に軽症者を受け入れる取組みを実施、あるいは準備を進めているとのこと。

その一つ、東京都が実施しているホテルなどでの宿泊療養では、軽症者らが急性増悪する可能性があることを踏まえ、看護師と都の職員が24時間常駐して1日に2、3回は健康チェックを行い、医師も日中は健康管理に当たる態勢を整えているそうです。

なお、東京都医師会は4月24日、宿泊施設で療養する患者についてオンライン診療で健康状態を確認する仕組みの導入を検討中であることを明らかにしています。

軽症者らの重症化チェックに
パルスオキシメータ―を活用

宿泊施設で療養中の軽症者らに、風邪症状に加え、倦怠感や呼吸数の増加、息苦しさ(呼吸困難)が認められるときは急性増悪のサインと捉え、重症化を避ける対応が求められます。

このとき特に重要なのは呼吸器症状です。
自覚症状だけで判断するのではなく、血液中の酸素濃度、つまり「SPO₂(血中酸素飽和度)」を測定するなどの医学的な対応が必要となります。

測定結果からSPO₂の低下が認められ、酸素補給が必要と判断されると、入院の手続きがとられることになります。

この判断を迅速かつ適正に行うため、厚生労働省は4月7日に発出した通達「軽症者等の療養に関するQ&A」のなかで、軽症者らのために都道府県が用意する宿泊施設には、「パルスオキシメーター」を備え付けることを求めています。

ご承知のように、「パルスオキシメーター」とは、指先に洗濯ばさみのようなセンサー(プローブ)を挟むだけでSPO₂と脈拍数を測定できる装置です。

宿泊施設に常駐する看護師らは、軽症者らの健康観察を行う際に、必要に応じこのパルスオキシメーターを活用してSPO₂値を把握し、その結果を対象者個々の健康観察票に記録するなり、測定値によっては迅速にドクターコールすることになります。

SPO₂値が90%未満は
呼吸不全の状態と考え医師に報告

パルスオキシメータ―の取り扱い方や測定方法、および酸素飽和度SPO₂値の評価をめぐっては、日本呼吸器学会が一般の医療従事者向けにQ&A形式でまとめた小冊子『Q&A パルスオキシメータ― ハンドブック』*¹が参考になります。

このなかに、「SPO₂値がいくつであったら、専門医に相談するべきですか」
という問いがあります。

これに対する答えは、
「安静時のSPO₂値が95%以下であれば専門医に相談すべきです。95%を超えていても息切れなどの症状があるときは相談を考慮すべきです」
となっています。

そのうえで、基礎疾患などがあれば測定値に影響が出ることを念頭に総合的な判断が必要で、
⑴ いずれの場合においてもSPO₂値が90%未満は呼吸不全の状態と考え
⑵ その状態が続くと、心臓や脳など重要臓器に十分な酸素が供給されていないためにさまざまなダメージを引き起こす危険があるため、
⑶ 早急に医師に相談する必要があるとし、
⑷ その目安を、「今回の測定値が前回の測定値より3~4%低下していた時」
としています。

「息苦しさ」は低酸素血症以外でも

また、軽症者らが訴える息苦しさ(呼吸困難)は必ずしも低酸素症によるものではないということも、頭に置いておく必要があるようです。

特に、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの基礎疾患がある患者の場合は、患者が訴える呼吸困難の度合いが進んでいてもSPO₂値の低下が見られない場合があることも考慮した対応が必要と、記してあります。

なお、パルスオキシメータ―によるSPO₂値の読み方、および医師への報告のタイミングや報告に必要な情報などについては、『SpO2低下編 (ベストタイミングを逃さない報告のコツ Vol.1)』が参考になります。

厚労省が軽症者について緊急性の高い13症状のリスト公表
COVID-19の軽症者または無症候性感染者で宿泊施設や自宅で療養している患者について、厚労省は4月29日、重篤化を招く緊急性の高い症状をチェックできるように、リストを公表しています。
【表情・外見】
①顔色が明らかに悪い ②唇が紫色になっている ③いつもと違う。様子がおかしい
【息苦しさなど】
④息が荒くなった(呼吸数が多くなった) ⑤急に息苦しくなった ⑥生活をしていて少し動くと息苦しい ⑦胸の痛みがある ⑧横になれない。坐らないと息ができない ⑨肩で息をしている ⑩突然(2時間以内を目安)ぜーぜーしはじめた
【意識障害など】
⑪ぼんやりしている(反応が弱い) ⑫もうろうとしている(呼びかけても返事がない) ⑬脈がとぶ。脈のリズムが乱れる感じがする

参考資料*¹:日本呼吸器学会『Q&Aパルスオキシメータ―ハンドブック』
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/guidelines/pulse-oximeter_medical.pdf