ひとりで悩まずつらい気持ちを伝えてください




リラックス

常に緊張感・焦燥感を抱えつつ
コロナの医療現場で働く方に

すでに約1年に渡り、新型コロナウイルス感染症対応の最前線で診療を続ける忽那賢志(くつなさとし)医師(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)が、
「新型コロナを診療する医療従事者にかかる精神的な負荷」
について、当事者として、正直なお気持ちを「告白」しておられます*¹。

「常に緊張感・焦燥感を抱えながら診療に当たっています」
「こころが折れることもしばしばであり、毎日仕事を辞めたいなと思っています」
「不眠(入眠障害・中途覚醒)になり、飲酒量が増えています」

忽那医師のブログと言いましょうか、現場からの情報発信は、いつも大変興味深く読ませていただいているのですが、今回の記事はいささか衝撃的でした。

忽那医師でさえも、こんな心情に――。
新型コロナの医療現場がいかに厳しい状況にあるのか、改めて教えられた気がします。

と同時に、心身ともにギリギリの状態にあるときこそ、そのつらさや不安に感じていることをひとりで抱え込まず、忽那医師のように、言葉にして、誰にでも、またどんな方法でもいいから、伝えることの大切さを再認識させられました。

高齢の感染者が増加し
重症者を急増させている

今や国内における新型コロナウイルスは感染拡大「第3波」の真っただ中にあり、新規感染者も重症者も急激に増加しています。

この状況を、日本感染症学会理事長で東邦大学の舘田一博教授は、NHKの取材に答え、
⑴ 幅広い世代で感染がみられ、高齢者の感染者が多い状況が続いている
⑵ 感染者に高齢者が多いことにより、重症者の増加スピードが速くなっている
⑶ この先しばらくは重症者の増加が続くことを覚悟しなければならない
と説明しています。

そのうえで、重症者に対応できる医療機関の病床数について、
⑴ 病床を確保するには別の病棟から医療スタッフを引っ張ってくる必要がある
⑵ 別の病気で治療を受けている患者に移動してもらう必要も生じる
⑶ これらの調整にはかなりの労力と時間がかかる
として、厳しい状況にあることを訴えたうえで、こう指摘しています。

「医療現場の負担は、今メディア等で繰り返し示されている病床占有率の数値以上に逼迫(ひっぱく)している状況であり、病床や人員の確保はもちろんだが、何よりも重症になる人をこれ以上増やさないよう感染拡大を抑える対策が重要です」

現場で働く医療従事者の
精神的負荷の大きさに注目を

新型コロナウイルス感染症の入院患者、とりわけ重症者が増加することにより、本来なら助かるはずの命さえ救えなくなるような医療崩壊が懸念されています。

しかし今、同時に、あるいはそれ以上に目を向けるべきは医療従事者の精神的負荷の大きさでしょう。

先述の忽那医師は、新型コロナ患者を診療している医療従事者の多くは、次のような不安を抱えながら患者に対応していると書いています。

  • 自分が新型コロナウイルスに感染するのではないか
  • 自分が新型コロナウイルス感染症で死ぬのではないか
  • 自分から家族や同僚に感染させてしまうのではないか
  • 自分や家族が周囲から偏見を持たれるのではないか

現場の医療従事者の3割強がバーンアウトを経験

そのうえで、感染拡大第1波の時期に、聖路加国際病院で新型コロナウイルス感染症患者と接触があった医療従事者を対象に行われたバーンアウト(燃え尽き症候群)に関する次のような調査結果を紹介しています。

  • 回答した312人の医療従事者のうち31.4%がバーンアウトを経験していた
  • バーンアウトの経験者は男性より女性に多く、職種別では医師は82人中11人(13.4%)に対し、特に多かったのは看護師で126人中59人(46.8%)だった
  • 以下の医療従事者にバーンアウトが多かった
    ①個人防護具に慣れていないために不安が強い人
    ②第1波前に比べ睡眠時間が短くなった人
    ③仕事量を減らしたいと考えている人
    ④感謝や尊敬の念を期待する人

先に紹介した日本赤十字社医療センターの調査でも、新型コロナウイルス感染症患者の対応に当たった医療従事者の約3割(27.9%)が、抑うつ気分や不眠、食欲不振などの症状を自覚し、うつ傾向にあったことが報告されています。

苦労話を共有できる仲間と
ねぎらい合い、孤独に陥らない

日赤医療センターで調査を行った呼吸器内科部長の出雲雄大(いずもたけひろ)医師は、調査結果に「うつ傾向にある人が予想より多く驚いた」としたうえで、「孤立しないこと」と「リフレッシュすること」の大切さを訴えています。

また、筑波大学の太刀川弘和(たちかわひろかず)教授の教室(医学系臨床医学域 災害・地域精神医学講座)も、新型コロナウイルス感染症の対応にあたる医療従事者のメンタルセルフケアとして、以下の具体策を提案しています。

  1. 業務にあたっては、こまめに休息をとり、決して無理をしない
  2. 感染対策上、行動を制限されるような場合にも、苦労話を共有できる仲間と連絡を取り合う
  3. その際は、お互いをねぎらい、孤独に陥らないように留意する
  4. 精神的につらさを感じたら、上司や信頼できる人に相談する

厚生労働省もこころのケアを受けられる相談先を紹介

厚生労働省も、
「新型コロナウイルスの影響で不安を感じている方が多いと思うが、どうかひとりで悩みを抱え込まず、まずはご家族やご友人、職場の同僚など、身近な人に相談してほしい」
と、呼びかけています。

しかし、なかには職場の同僚や家族、友人といった身近な人には相談しづらい、あるいは安心して相談できる人が周りにいないという方も少なからずいると思われます。

そのような場合の、メンタル面の相談先として、「全国の精神保健福祉センター」を用意していることを伝えています。

センターにより支援内容は多少異なりますが、
「新型コロナウイルス感染症のこころのケアに関するページ」
を特設して、「新型コロナウイルス感染症に対応している医療従事者」を対象にメンタルヘルス指導を行っているセンターもあります。

また、ストレスチェック法や簡単なリラクゼーション法を紹介しているセンターもあります。
まずは最寄りの精神保健福祉センターにアクセスしてみてはいかがでしょう。

新型コロナウイルスの影響で直面している金銭的なことや住居に関すること等、生活全般に関する悩みの相談については、こちらの記事を参照してください。

なお、憂うつな気分やストレス状態の改善を食の面から研究している医師がすすめる「こころに効く食事」についてまとめた記事も参考にしてみてください。

日本看護協会も「新型コロナウイルス感染症に関する看護職の相談窓口」のなかの「メール相談窓口」でメンタル面の相談に対応しています*²。

WHOもメッセージを発信

WHO(世界保健機関)も3月に、「COVID-19アウトブレイク中のメンタルヘルスと心理社会的影響に関する検討事項暫定ガイダンス」を公表しています。

そのなかにある医療従事者向けメッセージをこちらの記事で紹介しています。
参考にしていただけたら幸いです。
→ COVID-19の患者対応で燃え尽きないで!!

参考資料*¹:新型コロナの診療に関わる医療従事者の精神的な負荷について

参考資料*²:看護職を対象とした新型コロナウイルスに関するメール相談窓口