新型コロナ治療薬「レムデシビル」に回復期間の短縮効果を確認 米国NIH




治療薬

抗ウイルス薬「レムデシビル」が
COVID-19患者の回復を早めた

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として期待されている抗ウイルス薬の「レムデシビル」について、アメリカ国立衛生研究所(NIH)などの研究チームは、5月22日、患者の回復を早める効果が見られたとする臨床試験(治験)の結果を発表しました。

日本において「レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)」は、アメリカで緊急使用の許可が出たのを受けるかたちで、5月7日、新型コロナウイルス感染症に対する国内初の治療薬として特例承認*、つまり特例制度の下に薬事承認されています。

レムデシビルは、もともとエボラ出血熱を対象に開発が進められてきた抗ウイルス薬です。
この薬を新型コロナウイルス感染症の治療に緊急使用することを許可するに際し、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、臨床試験を行っています。

このときの治験において、新型コロナウイルスの増殖を抑える効果が見られたことから、新型コロナウイルス感染症患者の治療に使える可能性があるとして、NIHなどの研究チームにより臨床試験が継続して行われています。

今回発表されたのは、今年2月から4月にかけてアメリカをはじめ、ヨーロッパやアジア数カ国、合計68施設において実施された登録患者対象の臨床試験データをもとに解析した結果です。
日本からは国立国際医療研究センターが参加しています。

*特例承認とは、一定の条件下で国内審査の手続きを簡略化できることを定めた薬機法(旧薬事法)にある「特例制度」に基づいて新規医薬品の薬事承認を行うこと。
この制度を利用したことにより、レムデシビルは、通常は申請から1年以上を要する薬事承認が申請の3日後に承認されている。
詳しくはこちらの記事を参照されたい。
→ 知っておきたい新型コロナウイルス感染症治療薬

酸素投与中の患者が
人工呼吸器が必要な状態に陥る前に

今回の初期臨床試験では、新型コロナウイルス感染症で入院中の、主に症状の重い患者1063人を対象に、レムデシビルを投与するグループと、プラセボ(偽薬)を投与するグループに分け、薬を10日間投与した後、およそ4週間にわたり経過を観察する方法で行われました。

その結果、臨床的に改善し、退院できるようになるまでに要した期間の中央値は、レムデシビルを投与された患者グループでは11日で、プラセボを投与された患者グループの15日より4日短くなっていました。
このことから研究チームは、患者の回復期間を短縮する効果が見られたとしています。

さらに、この、臨床的改善効果による退院までの回復期間の短縮化は、酸素投与が必要な重症患者(日本の重症度分類では、概ね「中等症Ⅱ」以降に該当する)においてより期待できると、研究チームはみています。

なお、厚生労働省が5月18日に公表した新型コロナウイルス感染症の「重症度分類」については、こちらの記事を参照してください。
→ 新型コロナ診療の手引き改訂「重症度分類」提示

有意差はなかったが死亡率を下げる効果も示唆

また、臨床試験開始から2週間以内に死亡した患者の割合についても、比較検討しています。
この点については、レムデシビルを投与した患者グループの方が低い傾向が見られ、死亡率を下げることも示唆されたようです。

ただし、レムデシビル投与グループ(7.1%)とプラセボ投与グループ(11.9%)の差は統計的に優位といえるものではありませんでした。

このことから研究チームは、死亡率に関しては、レムデシビルによる明確な効果を確認することはできなかった、としています。

以上の結果から研究チームは、
「新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの有効性が示された」
としたうえで、使用方法として、以下の2点を指摘しています。

⑴ 酸素投与が必要な患者が、人工呼吸器が必要になる前に投与を開始すること
⑵ 死亡率を下げるためには、他の薬との併用方法を検討する必要がある

この結果は専門家による査読を受けて、アメリカの医学雑誌「ニューイングランド・オブ・メディシン」に掲載されています。

わが国における現時点での
レムデシビル投与対象患者

なお、レムデシビルは、製造元での供給数量が限られているため、日本への供給量は限定的なものとなる可能性のあることが想定されます。

この点を踏まえ、厚生労働省は医療機関に対し、レムデシビル投与対象患者としては、
「ECMO装着患者、人工呼吸器装着患者、ICU入室中の新型コロナウイルス感染症の患者であって、適格基準や除外基準、さらには基礎疾患の有無も踏まえ、医師の判断により投与することが適当と考えられる者」
とすることを要請しています*¹。

厚生労働省による適格基準と除外基準

参考までに、ここでいう適格基準および除外基準は、以下のようになっています*²。
【適格基準】
⑴ PCR検査において新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が陽性の患者
⑵ 酸素飽和度(SPO₂)が94%以下(室内気)または酸素投与中の患者
⑶ 入院中の患者
⑷ クレアチニンクリアランスが30㎖/minを超える患者
⑸ AST(GOT)およびALT(GPT)レベルが基準値上限の5倍未満の患者

【除外基準】
⑴ 多臓器不全の症状を呈する患者
⑵ 継続的に昇圧剤が必要な患者
⑶ ALT(GPT)レベルが基準値上限の5倍を超える患者
⑷ クレアチニンクリアランスが30㎖/min未満、または透析患者
⑸ 妊婦

経口治療薬「アビガン」の
早期承認が待たれるが……

新型コロナウイルス感染症の治療薬としてのレムデシビルは点滴での使用となります。
そのため入院を必要とするようなある程度重症の患者にのみ使用することになります。

そこで、入院を必要としない軽症の患者も治療の対象となるような経口治療薬として、かねてから期待が寄せられている国産の抗インフルエンザ治療薬「アビガン(一般名:ファビピラビル)」の早期承認が待たれるところです。

アビガンについては、このところネット上で、「有効性を示せなかった」などとする情報が飛び交っており、少々落胆させられますが……。

アビガンの新型コロナウイルスへの治療効果を研究している藤田医科大学の研究責任者である土井洋平教授は、5月20日、WEB会見を行い、
「学外の専門家による評価委員会による中間解析の結果、安全性などに問題はないため、臨床試験を最後まで続ける」と発表しています。

有効性については、「中間解析は有効性の確認が主目的ではない」として、現段階では判断できないと説明。誤解や事実誤認を招きかねない報道を控えるよう求めています。

新型コロナウイルス感染症は8割が軽症で、その多くは自然に回復するとされています。
それだけに軽症者向けの治療薬としてアビガンの有効性を確認するのは難しいとの指摘もあるだけに、臨床試験が根気強く続けられることが期待されます。

参考資料*¹:厚生労働省「レムデシビルの投与をお考えの医療機関の皆様へ」
参考資料*²:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部「新型コロナウイルス感染症におけるレムデシビル製剤の各医療機関への配分について」