新局面を迎えた新型肺炎「正しく恐れて!」




コロナウイルス

新型コロナウイルスの感染拡大
国内初、医師の感染確認

加藤勝信厚生労働相は2月13日深夜の会見で、肺炎で死亡した神奈川県の80代女性について、死後に出た新型コロナウイルス検査の結果で陽性が確認されたことを報告しました。
新型コロナウイルスの感染と死亡との因果関係は現時点では不明ですが、感染者が死亡したのは国内で初めてです。

加えてこの日は、死亡した女性の親族で東京都内に住む70代の個人タクシー運転手の男性(直近の中国への渡航歴なし)の感染も発表されています。

さらに、全国の医療関係者に衝撃を与えたのは、和歌山県内の病院に勤務する50代の男性外科医(中国への渡航歴なし)が、新型コロナウイルスに感染し、肺炎の症状が現れて入院していると伝えられたことではないでしょうか。

「明日は我が身」の危機感を抱いている看護職の方も少なくないと思われます。
そこで、医療機関における新型コロナウイルス感染症の疑いがある人や新型コロナウイルス感染症患者への対応時の感染予防策について、最新の情報をまとめてお届けします。

感染が疑われる患者の
疑似症か否かの見分け方

厚生労働省はWEBサイトに、「新型コロナに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)」と題するコーナーを設けています*¹。

そのなかには「問7」として、次のような質問があります。
「体調を崩した方が医療機関を受診した際に、現場の医師や看護師などはどのようなことに注意して診察を行うべきでしょうか?」

この問いには、次のように答えています。
「新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者が受診した際には、その患者が新型コロナウイルス感染症の疑似症に当たらないか注意して診察することが重要です。都道府県・関係団体などを通じて周知している疑似症の基準に沿った診察をお願いします」

このなかの「新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者」、つまり「疑似症の基準」は、
「37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状があり、
・発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域あるいは湖北省または浙江省(せっこうしょう)に渡航あるいは居住していた人
・発症前14日以内にWHOの公表内容から新型コロナウイルス感染症の流行が確認されている地域あるいは湖北省または浙江省に渡航あるいは居住していた人と濃厚接触歴がある人」
となっています。

ただし、これまでの発症事例に関する情報によれば、患者のなかには発症初期に発熱がみられなかったり、咳やくしゃみ、喉の痛みといった肺炎に特徴的な呼吸器症状がないケースも少なくないことが報告されています。

一方で、一部の患者に共通して「倦怠感が長く続いた」とする報告もあります。
これらの点も念頭に置きつつ対応していただきたいものです。

なお、「濃厚接触」については、「必要な感染予防策なしで手で触れること。または対面で会話することが可能な距離(目安として1メートル以内)で15分以上の接触」として説明されています。詳しくはこちらを参照してください。

*濃厚接触者の定義が4月21日変更されている。 COVID-19の確定患者が発症した2日前から接触した者のうち、①その患者と同居、あるいは15分以上の接触(車内、航空機等内を含む)があった者、⓶適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した者、③患者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者、④手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安として1m以内)で、必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者、のことをいう

感染の疑いのある患者への
対応時の感染予防策

次の「問8」の質問は、「感染の疑いがある患者を診察する際、医療者はどのような準備や装備が必要ですか?」です。

これには、手洗いなどの衛生対策を心がけるように促し、
①手などの皮膚の消毒を行う場合には、消毒用アルコール(70%)、
⓶物の表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)、
が有効であることを伝えています。さらに、
③検体を扱う際にも、患者の取り扱い時と同様の感染対策をするよう求めています。

そのうえで、詳しくは日本感染症研究所疫学センターと国立国際医療センター国際感染症センターがまとめた新型肺炎に対する院内感染対策指針を参照するよう促しています。

この院内感染対策指針については、先の記事で紹介しましたが、疫学的所見やウイルスに関する新たな知見の蓄積に伴い、内容が随時更新されています。

中国武漢市で多発している肺炎が新型のコロナウイルスに関連した肺炎であることがWHOで確認された。その数日後、日本で初めての感染者が確認された。死者も出ているだけに、パンデミックを恐れる声もあるが、感染力は低いとのこと。その院内感染対策指針を紹介する。

最新版(2月10日改訂)の「医療機関における新型コロナウイルス感染症の疑いがある人や新型コロナウイルス感染症患者への診察時の感染予防策」*²は次のようになっています。

標準予防策を遵守する。つまり、医療従事者は、呼吸器症状のある患者の診察時にはサージカルマスクを着用し、手指衛生を遵守する。
呼吸器症状のある患者には、サージカルマスクを着用させる。
その上で、新型コロナウイルス感染症の患者(確定例)、疑似症患者、濃厚接触者のうち何らかの症状を有する者を診察する場合、
Ⅰ 標準予防策に加え、接触・飛沫予防策を行う
Ⅱ 診察室および入院病床は個室が望ましい
Ⅲ 診察室および入院病床は十分換気する
Ⅳ 患者の気道吸引、気管内挿管、検体採取などエアロゾル発生手技を実施する際にはN95マスク(またはDS2など、それに準ずるマスク)、眼の防護具(ゴーグルまたはフェイスシールド)、長袖ガウン、手袋を装着する
Ⅴ 患者の移動は医学的に必要な目的に限定する
なお、職員(受付、案内係、警備員など)も標準予防策を遵守する。

なお、院内感染対策の基本ちゅうの基本である「標準予防策」については、勘違いや思い込みが多いと指摘されています。その点を中心に書いたこちらの記事も読んでみてください。

院内感染対策の基本は、すべての患者に例外なく実施する「標準予防策」だ。新型コロナウイルスの感染拡大に無症候性感染者が多少でも関与していることを考えると、標準予防策の徹底が求められる。その実施において勘違いしがちな点を中心に再確認の意味でまとめてみた。

基礎疾患のある高齢者
免疫不全者には十分な注意を

新型コロナウイルスについては、感染者に国内で初めて死者が出たことや、中国との明らかな接点のない医療関係者などが感染し、発症していることなどを受け、感染症の専門家たちは、新型感染症が新たな局面を迎えたことを指摘し、
「かなりの規模の感染者が周囲にいる可能性を念頭に置きつつ、感染拡大の防止に力を入れることが重要」と話しています。

この点について日本感染症学会は、2月3日にWEBサイトで発表した「一般診療として患者を見られる方々へ――新型コロナウイルス感染症に対する対策のあり方について」*³のなかで、すでにこの時点で「すでに本邦にウイルスが入り込み市中において散発的な流行が起きていてもおかしくない状況と考えられます」としていました。

続けて、新コロナウイルスの感染性、つまり1人の患者から何人に感染が広がるかについては「1.5~2.5人と推定」、感染性および病原性は「通常のインフルエンザと同程度、あるいはやや強い程度と考えてもよい」と推定しています。

したがって、基礎疾患のある高齢者や免疫不全者については肺合併症や重症化に十分な注意が必要ですが、予防対策を徹底してさえいれば、過剰に恐れる必要はないこと、つまりウイルスの特性をよく知って「正しく恐れる」ことの大切さを強調しています。

なお、感染が確認された男性医師が勤務する和歌山県内の病院では、その後国内初の新型コロナウイルスによる院内感染が確認され、医療関係者の個人レベルでの感染予防が待ったなしの課題となっています。詳しくはこちらの記事を。

新型コロナウイルス 国内初の院内感染を受けて 新型コロナウイルスによる国内での感染者が日を追って増えています。…

参考資料*¹:厚生労働省「新型コロナに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00004.html
参考資料*²:国立感染症研究所「新型ウイルス感染症に対する感染管理」
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/2019nCoV-01-200210.pdf
参考資料*³:日本感染症学会「一般診療として患者を見られる方々へ――新型コロナウイルス感染症に対する対策のあり方について」
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/2019ncov_sinryo_200203.pdf