コロナ患者対応医療従事者の約3割がうつ状態に




最前線で働く医療従事者を
精神面で支える対策を

「新型コロナウイルス感染症患者の対応にあたった医療従事者の約3割が、うつ状態になっていたことがわかりました」

7月7日早朝、NHKのニュースがそう報じるのを聞いたときは、
「えっ、3割も!?」と、一瞬耳を疑いました。

聞けば、日本赤十字社医療センターが行った調査結果とのこと。
続いて、調査を行った医師からのこんな指摘が紹介されていました。

「無症状でも感染させてしまうといったこのウイルスの特徴もあり、対応に当たる医療スタッフの不安が増している。彼らを精神面で支える対策が必要だ――」

新型コロナウイルス医療の最前線で働く医療従事者に対するメンタルヘルスの重要性は、WHO(世界保健機関)のガイダンスをはじめとしてこれまでも再三指摘され、メディアなどでも繰り返し報じられています。

このウイルス自体、正体が依然としてよくわかっていないことが最大の不安要因です。
加えて、治療法もまだ手探りの状態で、これといった予防法も確立されていません。

このようなウイルスを相手に、感染患者やその疑いのある患者に日々接している医療従事者に加わるストレスの強度は思いのほか大きく、なかには不安障害やうつ病を発症するケースもあると聞きます。

現実のものとなりつつある新型コロナウイルスの感染第2波への備えとして、深刻な状態に陥らないための、不安やストレスへの対処法をまとめてみたいと思います。

孤立させないケアや
リフレッシュできる勤務体制を

NHKニュースが報じた調査*¹は、日本赤十字社医療センターが、新型コロナウイルス感染が拡大していた4月から5月にかけ、およそ2000人の職員全員を対象に実施したものです。

当センターでは6月末までに、新型コロナウイルスに感染した疑いのある人を含め218人を受け入れ、うち76人の患者に感染が確認されたそうです。

調査では、抑うつ気分や不眠、食欲不振があったかなど、アンケート形式で尋ね、医師や看護師、事務職員など848人から回答を得ています。

その結果、27.9%に当たる237人が「うつ状態」となっていることがわかったというのです。
この、うつの傾向は、感染患者の治療やケアに当たる医師や看護師だけでなく、受付などの事務職員でも見られたそうです。

うつ傾向の人が予想以上に多いことに驚く

調査を行った呼吸器内科部長の出雲雄大(いずも たけひろ)医師は、
⑴ 未知のウイルスであること
⑵ 自覚のないまま感染し、患者や家族、同僚などに感染させる可能性があること
⑶ 家族に感染させないよう、ひとりでホテルに宿泊するといった対応をとっていること
などが影響してうつ状態に陥ったのではないか、と分析しています。

さらに出雲医師は、「うつ傾向にある人が予想より多く驚いた」と感想を語ったうえで、感染再拡大が懸念されるこの先に向け、次のようなメッセージを伝えています。

「長期戦が予想されるなか、孤立させないケアを行ったり、リフレッシュするために交替勤務にするなど、医療者を精神面で支える対策が必要です」

慢性的なストレスには
燃え尽きにつながるリスクが

新型コロナ禍による医療従事者の精神面の負担を軽減しようと、日本赤十字医療センターが3月の上旬という早い時期に、
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイド」*²
を公表し、最前線で働く多くの人達のこころを支えてきたことはご存知のことと思います。

その後当センターでは、4月に臨床心理士や看護師等が最前線の医療スタッフをサポートするチームを立ち上げ、ときに面談なども行いながら不安の聞き手になったり、ストレスの対処法などについて具体的なアドバイスを行ったりしているそうです。

このチームで活動を続ける臨床心理士の秋山恵子さんは、NHKの取材に応え、
「病院全体であなたたちのことを気にかけている、力になりたいと思っているというメッセージを伝えようと活動している。病院として、職員を守る気概があることを、言葉にして伝えていくことが必要だ」と話しています。

同時に、新型コロナウイルスの感染再拡大とウイルスとの闘いのさらなる長期化が懸念されるなか、「病院全体に慢性的な疲労感が漂っている」と指摘。

「慢性的なストレスがさらに続くと燃え尽きる可能性が高まり、より重い抑うつ症状を引き起こしかねない」ことから、今の状態が凶器化することを想定し、医療従事者のストレスを和らげる対策を強化する必要があると訴えています。

精神的につらさを感じたら
信頼できる人に相談を

新型コロナウイルス感染症の対応に当たる医療従事者のこころのセルフケアについては、精神医学が専門の太刀川弘和(たちかわ ひろかず)教授の教室(筑波大学医学系臨床医学域 災害・地域精神医学講座)が、以下の具体策を提案しています。

  1. 業務にあたっては、こまめに休息をとり、決して無理をしないこと
  2. 仮に行動を制限されるような場合にも、苦労話を共有できる仲間と連絡を取りあうこと
  3. その際は、お互いをねぎらい、孤独に陥らないように留意する
  4. 精神的につらさを感じたら、上司や信頼できる人に相談する

また、所属機関の看護管理者等には、以下の2点を要請しています。
⑴ 業務の内容と、それに伴うリスクに十分気を配る
⑵ スタッフやその家族が生活している地域で誹謗中傷やいじめなどの対象になることがないよう、組織として支える対策を検討し、職員を守る

こころのケアチームや相談室の活用を

いずれにしても、うつ状態を防ぐには、自分でストレスを抱え込み孤独に陥らないようにすることが何より大切と言えそうです。

その防止策として、院内に「こころのケアチーム」などを立ち上げ、新型コロナウイルス感染症患者あるいはその疑いのある人に対応する医療スタッフのメンタル面をサポートする医療機関が続々と出現しているようです。

また厚生労働省も、「新型コロナウイルス感染症関連 SNS心の相談」コーナー(https://lifelinksns.net)を設けていますから、気軽に活用してみてはいかがでしょうか。

なお、文中で臨床心理士の秋山さんが言及している「燃え尽き」、つまりバーンアウトに関してはこちらの記事を読んでみてください。
→ 看護師の「バーンアウト」を防ぎたい!!

参考資料*¹:新型コロナ患者対応の医療従事者 3割近くがうつ状態(NHK 2020-7-7)
参考資料*²:「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイド」(日本赤十字社医療センター)