新型コロナに職業感染した医療従事者に労災認定




コロナ対策

新型コロナウイルス感染症で
初めての労災認定

厚生労働省は5月15日、新型コロナウイルスに感染した医療従事者など2人を労働災害(労災)として認定したことを明らかにしました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)での労災認定は、今回が初めてです。

認定を受けた2人は労災保険給付の対象として認められたことになり、本人が請求すれば、国から治療費や生活費の補償を受けることができます。

今回労災認定された2人の詳細は明らかにされていませんが、いずれも職業感染とのこと。
つまり仕事が原因で新型コロナウイルスに感染した医療従事者1人と、生活関連サービス業(クリーニング業、理容・美容業など)に従事する1人と説明されています。

6月30日18時の時点で、仕事中に感染したとして労災を申請した人は、全国で433人。業種別では、医師、看護師ら医療従事者が最も多く306人、次いで介護や福祉に携わる人が51人。このうち、32人の医療従事者等と4人の介護・福祉従事者を含む、合計54人に給付が行われています。

医療従事者が安心感をもって業務に専念できるように

加藤勝信厚生労働大臣は、15日の閣議後の会見で、日本医師会、日本医療法人会、日本病院協会などに向け、労災補償申請への協力を要請したことを明らかにしています。

そのうえで、「日々懸命に新型コロナ感染症の患者さんへの治療・看護などの業務に当たっていただいている皆さんに、何かあったときに対応してもらえるといった安心感をもって業務に専念していただくためにも、医療従事者が感染したら速やかに本人に労災申請をすすめ、手続きに協力していただけるよう強くお願いしたい」と話しています。

特に院内感染が確認された全国のおよそ100の医療機関に対しては、引き続き申請を呼びかけたいとしています。

仕事が原因で感染したら
労働災害保険給付の対象に

新型コロナウイルス感染症の労災認定について、厚生労働省は4月29日、医師や看護師などの医療従事者、さらに介護従事者については、仕事以外で感染したことが明らかな場合を除いて、原則、労災として認めるとしています。

ご承知のように、新型コロナウイルスの感染が拡大するのに伴い、感染経路を特定できない新規感染者が日を追って増えています。

そのため、医療・介護現場で働くスタッフの間では、職業感染により新型コロナウイルス感染症に罹患しても、感染経路を特定できないために労災が認められないのではないかと、心配する声が上がっているようです。

この点について厚生労働省は、職場以外の場所や勤務時間外に感染したことが特定される場合以外は、医療や介護従事者については原則として労災を認めるとしています。

医療や介護の従事者以外にも労災認定を

また、医療や介護以外の仕事に就いている人で、客と接近したり接触したりして感染者と濃厚接触するリスクの高い人が新型コロナウイルス感染症に罹った場合も、業務により感染した可能性が高いとして、感染経路を特定できなくても個別に判断する方針です。

その際の対象としては、タクシーやバスの運転手、商店やコンビニなどの小売業者、育児サービス業従事者などが想定されます。

具体的には、労働基準監督署において、個々につき、症状が出るまでの潜伏期間内(1~14日間)の仕事内容や生活状況などを調べ、業務との関連性を判断する方針です。

労災保険給付の申請には
所属機関のサポートを

労災の保険給付を受けるには、給付を受ける本人が、労働基準監督署に備え付けてある請求書を提出して、必要な調査を受ける必要があります。

しかし、本人が新型コロナウイルス感染症のために入院中であるとか、指定の宿泊施設などで療養中であり、感染拡大防止のためにも、自らがその手続きのために動くことができない、といったこともあり得るでしょう。

そのような場合は、加藤厚生労働大臣が15日の会見で医療関係団体に要請したように、事業主、つまり医療従事者であれば勤務先の医療機関がサポートしなければならない*ことになっています。

ですから該当する方は遠慮なく、「自分は労災の対象になるのかどうか」「労災認定の手続きはどうしたらいいのか」など職場の上司、看護師さんなら病棟などの看護師長や医療ソーシャルワーカーなどに相談するといいでしょう。

*労働者災害補償保険法施行規則第23条で次のように定められている。
「保険給付を受けるべき者が、事故のため、自ら保険給付の請求その他の手続きを行うことが困難である場合には、事業主は、その手続きを行うことができるように助力しなければならない

なお、自分で請求手続きをする場合は、必要な書類などについて、職場を管轄する労働基準監督署*¹に「労災保険給付の手続きをしたい」旨、電話で相談するといいでしょう。

健康保険法の傷病手当金が
支払われる場合

新型コロナウイルスに感染して業務に就けないものの、たとえばライブハウスなどで感染したことが判明したため、労災が認定されないといったことも起こり得ます。

このような場合は、労災保険の給付は受けられません。
しかし、公的健康保険に加入しているでしょうから、自覚症状の有無に関係なく、他の病気に罹患している場合と同様、傷病手当金を受け取ることができます*²。

その場合、支給を受け取ることができる期間は、新型コロナウイルス感染症の治療および療養のために業務に就くことができなくなった日から起算して3日を経過した日(4日目)から業務に就くことができた前日までとなります。

また、支給額は、直近12カ月の標準報酬月額の30分の1に相当する額(つまり、日額)の3分の2に相当する金額となります。

この場合も給付申請手続きが必要です。
手続きに際しては、医師の意見書が必要になるケースがあるのですが、感染対策上受診できず、医師の意見書が手に入らないこともあるでしょう。

そのようなときは、職場の直属の上司や医療ソーシャルワーカー、あるいは加入している健康保険の保険者*に相談してみるといいでしょう。

*保険者とは、健康保険事業を運営している組織のこと。
健康保険証の下の方に、「〇〇健康保険組合」「全国健康保険協会(〇〇支部)」「〇〇共済組合」、国民健康保険なら都道府県名となる。

濃厚接触者で休暇をとるなら
傷病手当金は支払われない

新型コロナウイルスに関しては、こんなケースも想定されます。
友人数人と会食したところ、その中の1人が無症候性の感染者だったことがわかり、保健所から濃厚接触者と判断されて2週間の自宅待機を命じられ、やむなく休職することになった、といったことも起こり得るでしょう。

このような場合は、本人、つまり被保険者に自覚症状はなく、「労務不能」とは認められません。
傷病手当は、被保険者が職業感染のような業務災害以外の理由による疾病や負傷等の療養のために業務に就くことができないときに給付されるものですから、労務不能と認められない限り、傷病手当金は支給されません。

家族が新型コロナウイルスに感染して濃厚接触者になったために休暇を取らなくてはならない場合も、傷病手当金は支給されません。

なお、感染リスクと闘いながら新型コロナウイルス感染症の患者対応に当たる医療従事者には、1人当たり上限20万円の危険手当ならぬ慰労金が給付される予定です。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ 医療従事者ら310万人に新型コロナ慰労金

参考資料*¹:労働局・労働基準監督署一覧
参考資料*²:新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A