新型コロナ自宅療養者に行う治療プロトコール

本

自宅療養者に対する
治療プロトコールを追加

新型コロナウイルス感染症で呼吸困難等の症状が認められる「中等症」以上の患者については、厚生労働省は、原則入院して加療するよう求めています。

しかし、関西を中心に医療がひっ迫し、中等症以上でも病床を確保できず、入院できないまま自宅や自治体が指定した施設で療養せざるを得ない患者が相次いでいます。

こうした事態を受けて厚生労働省は、3カ月ぶりに改定し、5月26日に発行した
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5版」*¹に、自宅療養中の患者に投薬治療などを行う際の手順(治療プロトコール)を新たに追加しています。

この治療プロトコールは、日本在宅ケアアライアンスが5月18日に発表した
「新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に対する医療提供プロトコール 第2版」*²
に掲載されているものです。

そこでは、
⑴ 血中酸素飽和度(SpO₂)が低下した場合はためらわずに酸素療法を行うこと
⑵ 酸素療法を行う患者には治療薬としてステロイドを投与すること
⑶ 重症化のリスク要因である深部静脈血栓症の兆候を確認すること
などを求めています。

低酸素血症が認められたら
原則、入院加療を行う

改訂された「診療の手引き」の重症度分類では、「中等症」について、
「対症療法を行うとともに、さらなる増悪を防止、また早期に対応するために入院して加療を行う」ことを求めています。

加えてこの入院加療は、自宅に隔離されて在宅療養を強いられている「患者の不安に対処する」ためにも必要と説明しています。

「診療の手引き」において「中等症」は、呼吸不全があるかどうかで「中等症Ⅰ」と「中等症Ⅱ」の2段階に分けられています。

このうち「中等症Ⅰ」は呼吸不全のない状態で、その評価基準および診療のポイントとして「診療の手引き」には、以下の点が明記されています。

  • 血中酸素飽和度:93%< SpO₂ <96%
  • 臨床状態:呼吸困難、肺炎所見
  • 診療のポイント
    ・入院の上、慎重に観察する
    ・低酸素血症があっても呼吸困難を訴えないことがある
    ・患者の不安に対処することも重要

さらに、血中酸素飽和度(SpO₂)が93%、もしくはそれを下回るようなら「中等症Ⅱ」に該当する呼吸不全の状態と判断し、酸素投与を行うとともに、呼吸不全の原因を推定し、高度な医療を行える施設へ転院を検討する必要がある、としています。

なお、重症度分類のさらなるステージについてはこちらの記事で確認してみてください。

→ 新型コロナ診療の手引き改訂「重症度分類」提示

自宅療養者の低酸素には
ためらわず酸素療法を

「診療の手引き」に今回追加された「自宅療養者のための診療プロトコール」では、
発症から7日前後で悪化する可能性が高い」として、
以下をポイントとする綿密なフォローアップを求めています。

  1. 初回診療時には、基礎疾患(重症化しやすいことが指摘されている糖尿病・心不全・高血圧・がん)や免疫抑制状態、妊娠の有無などを確認し、必要に応じて血液検査を行うことに加え、悪化時の治療に対する本人の意向を確認しておく
  2. 訪問看護あるいは電話診察を活用して状態を確認する
  3. 可能であればパルスオキシメータ―を貸与し、使用方法・判読方法を指導したうえで、酸素飽和度(SpO₂)を他のバイタルサイン(脈拍・呼吸数・体温・血圧)を含め1日3回程度測定してもらう
  4. 腎機能悪化や血栓症発祥のリスクとなる脱水を予防するため、心・腎疾患がないことを条件に、1日1500㎖程度を目標に水分摂取を促す。
    経口にて十分量を摂取できない場合は輸液療法を行う
  5. 低酸素( SpO₂≦93%)や呼吸促迫があればためらうことなく、「SpO₂96%、呼吸数16回/分」を目標に在宅酸素療法を行う
  6. 酸素療法を行う患者には、治療薬としてステロイド投与を行う
  7. 酸素療法を開始する際には、積極的な治療に対する本人の意向、特に人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)の使用の可否について再確認する
  8. 高齢者や基礎疾患を抱える患者は、発熱期間が長引くと体力の消耗や食事・水分摂取不良、ADLの低下を招くため、積極的に解熱を行う
    その際の解熱薬としてはアセトアミノフェンを優先的に使用する
  9. 発症から10日が経過して症状が軽快(解熱薬なしで72時間解熱かつ呼吸器症状に改善傾向がみられる)していればフォローアップを終了する(隔離解除)
  10. フォローアップ終了後も深部静脈血栓症(下肢腫脹、発赤、疼痛)・褥瘡・二次性肺炎に注意し、ADLの低下が認められる患者にはリハビリテーションを行う

なお、「3」にあるパルスオキシメーターの使用方法を指導する際には、センサー装着が長時間に及ぶと熱傷(やけど)などが起きやすいことも伝えておく必要があります。

→ パルスオキシメータープローブによる熱傷に注意

酸素療法時にはステロイド投与を

以上のプロトコールのうち「6」の酸素療法が必要な患者へのステロイド投与については、
⑴ 内服が可能であれば、デカドロン錠の経口投与
⑵ 内服が難しいようなら、デキサート注射薬の静注
を、10日間またはフォロー終了まで投与することが推奨されています。

ストロイドの投与に際しては、
⑴ 糖尿病を合併している患者の場合は血糖コントロールが必須
⑵ 消化性潰瘍、せん妄に注意が必要
と明記されています。

この治療薬に関しては、病院での診療において使用されている「レムデシビル」と「バリシチニブ」は、在宅診療では使用が認められていないなど、在宅で使用できる薬剤に限界があることも明記されています。

重症化を反映する「重症化マーカー」のチェックを

新型コロナウイルス感染症については、重症化を回避するためには血栓症が起こっていないかどうか注意深く見ていくことが特に重要となります。

重症化を見極めるうえで指標となる検査所見、いわゆる「重症化マーカー」の主な項目として、「診療の手引き」は、以下の点をあげています。

①Dダイマーの上昇:凝固マーカーである「Dダイマー」が高値を示すときは体内のどこかに血栓があることを示す、②CPRの上昇、③LDHの上昇、④フェリチンの上昇:鉄貯蔵たんぱく「フェリチン」は溶血性疾患で高値となる、⑤リンパ球の低下、⑥クレアチニンの上昇、⑦心筋トロポニンの上昇、⑧KL-6の上昇

治療費は訪問看護料も含め、すべて公費負担

なお、患者にとって気になるのは治療費ですが、在宅における治療費も入院した場合と同様に、訪問看護も含め、すべて公費で負担されることになります。

同居者や介護者の濃厚接触者としての健康観察期間については、最終的判断は保健所が行うが、一般に、感染者(自宅療養者)の隔離解除日からさらに14日間、トータルして感染者の発症日から最低24日間の健康観察期間が必要と説明されている。家庭内感染を防ぐためにも、同居者や介護者に理解を求める必要がある。

参考資料*¹:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5版

参考資料*²:新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に対する医療提供プロトコール 第2版