新型コロナの自粛生活と「生活不活発病」




不動

新型コロナの感染再拡大で
「動かない」生活の弊害が

新型コロナウイルスの感染再拡大に歯止めがかりません。
今朝は新聞もテレビも、国内における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により死亡した人が、昨日(7月20日)の時点で1,000人を超えたことを伝えています。

2月に初めての死者が出てから5カ月余り……。
感染の再拡大に伴い、亡くなる人の数がこの先増加する懸念が伝えられ、人々はそのぶん感染を恐れ、家に閉じこもりがちになります。

とりわけ高齢者や持病といわれる基礎疾患のある方には、感染すると重症化しやすいことが再三伝えられ、人が多く集まる場所を避けるように注意喚起されています。

そのため、どうしても自宅に閉じこもったままの生活が続くことになります。
その結果、「動かないこと」、つまり日々の生活が不活発になることがもたらす「生活不活発病」による健康への深刻な影響が懸念されています。

ということで今日は、「動かない」でいること自体がもたらす病、したがって誰もがかかる可能性のある「生活不活発病」について書いてみたいと思います。

「廃用症候群」改め
「生活不活発病」へ

「生活不活発病」という病名に心当たりがないという方でも、「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」という学術用語ならピンとくるという方は少なくないと思います。

廃用症候群とは、「廃用」つまり生活が不活発で身体の機能を使わないでいることによって生じる全身のあらゆる機能や頭の働きが低下することをいいます。

ただ、「廃用」の「廃」という文字からは、「廃墟」「廃棄物」「廃人」といった言葉が連想されますから、「廃用症候群ですね」などと言われたら本人は全くいい感じがしません。
「もうだめになった」と言われているようで、不快に思う方が少なくないでしょう。

そこで、生活が不活発になったことが原因で起こる病気だからということで、「生活不活発病」という表現が使われるようになったようです*¹。

というわけで、生活不活発病とは、文字どおり「生活が不活発」になること、言い換えれば「動かない」状態が続いたことが原因で、全身のあらゆる機能が低下してしまう病気です。

生活不活発病が進むと
フレイルから要介護状態へ

不活発で「動かない」生活を続けていると、関節の拘縮や筋萎縮により足腰が弱くなり、歩いたり、立ち上がったり、日常生活のさまざまな動作がやりにくくなってくるものです。

心肺機能も低下しますから、少し動いただけで息切れがしたり、脳貧血から立ちくらみが起こることもあります。同時に、疲れやすくもなってきます。

リハビリテーションの領域でよく言われる「安静の弊害」ということをイメージすると、わかりやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

周囲への関心も薄れ、外的刺激が少ない生活になりがちですから、頭の働きが鈍くなることもあるでしょうし、気持ちが晴れない日が続き、抑うつ状態にもなりかねません。

このような状態になってくると、動くこと自体がどうしても億劫になってくるものです。
しかし、だからといってそのまま「動かない」生活を続けていると、要介護の前兆とされる心身の虚弱状態、いわゆる「フレイル」に陥り、さらには人の手を借りないと「動けなくなる」要介護状態へと進むことになりかねませんから、ことは深刻です。

災害時に多発する
生活不活発病

生活不活発病は誰もがかかる可能性がある反面、幸い予防可能です。
また、いったん起きても、自助努力と工夫次第で回復させることができます。

そのためには不活発な生活になっていることにいち早く気づき、1日も早く日々の暮らしを活発化させることが大切になってきます。

その第一歩として、厚生労働省が作成・公表している「生活不活発病チェックリスト」*²を活用して、セルフチェックしてみることがすすめられます。

生活不活発病は、災害時、特に避難所における「することがない」「動きたくても動けない」生活が続くなかで多発することが2004年の新潟中越地震以来知られています。

そこで作成されたのがこのチェックリストで、2011年3月の東日本大震災の際にもその有用性が実証されているようです。

私たちが今まさに闘っている新型コロナウイルス感染症においても、「外出自粛を求められる」など「動きたくても動けない」生活を強いられています。
まさに文字どおりの災害と捉えることができますから、このチェックリストが役立ちます。

生活不活発チェックリストで
「自粛生活前」と「現在」を比較

「生活不活発チェックリスト」では、「地震前」と「現在」の生活を振り返り、活動状況を比較してみるようになっています。

今回のチェックでは、「地震前」を新型コロナウイルス感染拡大による「自粛生活を始める前」に置き直し、以下の項目ごとに、自粛生活を始める前と現在とに分け、それぞれチェックしてみるようにすすめるといいでしょう。

  1. 屋外を歩くこと
  2. 自宅内を歩くこと
  3. 身の回りの行為(入浴、洗面、トイレ、食事など)
  4. 車いすの使用
  5. 外出の回数
  6. 日中どのくらいからだを動かしていますか

このチェックリストは、生活が不活発になっていることを発見して終わりではなく、チェックをしていくなかで発見された活動が低下している項目への早期対応に役立てることが、そもそものねらいとされています。

したがって、チェックした結果、「自粛生活に入る前」より「現在」がいずれかの項目で1段階でも低下しているようなら、このまま不活発な生活が続けば生活不活発病に進んでしまうと判断し、低下している項目を中心に「生活を活発にする」取組みを始めるように指導するといいでしょう。

限られた生活の中でできる
生活不活発病予防

生活を活発にする取組みは、運動に限りません。
限られた生活の中でできることを続けて、要は極力身体を動かすことです。

そのための啓発資料が各種紹介されています。
たとえば東京都作業療法士会が作成し、公表している
「お家でできる生活不活発病の予防 ~ひとは作業することで健康になれる~」*³は、

  1. 普段何気なく行っている家事も一工夫で、脳や筋肉をより使った活動になる
  2. ラジオ体操を生活に取り入れる
  3. 子どもと一緒に昔遊び(折り紙、けん玉、あやとり、花札など)をする
  4. 昔の写真を子どもや孫たちと見る(思い出話をすることが脳の活性化になる)
  5. 笑うことで、呼吸能力や発声能力が高まり、気持ちが晴れる

といったように、多少の制限はあっても身近な生活の中で無理なく実践できる生活不活発病予防のための活動がさまざま紹介されています。

生活の活性化に専用アプリの活用も

また、厚生労働省は生活不活発病予防の観点から、
⑴ 高知県高知市の「いきいき百歳体操
⑵ 茨城県立健康プラザの「シルバーリハビリ体操チャンネル」
⑶ 新潟県理学療法士協会の「生活不活発に負けるな!1日ちょっとずつ体操」
など、全国各地の体操動画やリーフレットをWeb上で紹介しています*⁴。

また、こちらの記事では、東京都健康長寿医療センター研究所と慶應義塾大学理工学部の共同研究チームが開発した高齢者向け「健康づくりアプリ」を紹介しています。
是非活用を!!
→ 高齢者の新しい生活様式とフレイル予防アプリ

参考資料*¹:大川弥生「災害時に多発する生活不活発病」(日内会誌106:857~864,2017)
参考資料*²:生活不活発病チェックリスト
参考資料*³:東京都作業療法士会「お家でできる生活不活発病の予防」
参考資料*⁴:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症への対応について(高齢者の皆さまへ)」