政府が新型コロナウイルス対策基本方針を決定




パソコン

感染の拡大阻止は
今後1~2週間が正念場

国内における新型コロナウイルス感染症の患者発生が相次ぐなか、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(座長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)は24日の会合で、
「この先1、2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際となる」
との見解*¹を示しています。

続いて政府に対し、
「国内の感染が急速に拡大しかねない状況にある」ことを念頭に、
「可能な限り重症者の発生と死者数を減らす」
ことを今後の対策の最大目標とするよう求めました。

これを受け政府は25日昼、総理大臣官邸で新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、
「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」*²
を決定し、公表しています。

基本方針では、国内における現在の感染状況を、
「ここに来て国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生し、一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態だ」としています。

そのうえで、「まさに今が、今後の国内での健康被害を最小限に抑えるうえで、極めて重要な時期である」との認識のもと、「国民が一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていく」ことの大切さを訴えています。

新型コロナウイルス感染症の
感染経路・臨床経過の特徴

国民一人ひとりが、それぞれの立場で感染症対策に取り組んでいくには、「新型コロナウイルス感染症」という新興感染症の特徴を知っておくことが重要です。

■飛沫・接触・閉鎖空間での近距離接近に注意
まず感染経路については、
「一般的な状況においては、飛沫感染か接触感染であり、空気感染は起きていないと考えられる」とする一方、「閉鎖空間において近距離で多くの人と会話するなど、一定の環境下であれば、咳やくしゃみがなくても感染を拡大させるリスク*がある」と指摘。

また、感染力は事例によりさまざまで、
「一部に、特定の人から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例があるものの、大半の事例では感染者は周囲の人にほとんど感染させていない」としています。

*閉鎖空間における「感染リスク」について、専門家会議副座長の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は、「対面(顔を向き合わせた状態)にて、お互いに手を伸ばしたら届く距離で、一時間以上会話が続くような状況下では感染拡大のリスクが高まる」と説明している*²。

■多くは軽症だが、高齢者・基礎疾患がある人は重症化も
次に臨床経過*については、
「発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強い倦怠感を訴える人が多い」
「重症度としては、致死率がきわめて高い感染症ほどではないものの、季節性のインフルエンザと比べて高いリスクがある」としています。

このリスクについては、「特に高齢者や基礎疾患がある人(糖尿病、心不全、COPD等の呼吸器疾患があり定時処方を受けている人)は重症化のリスクが高い」と警告しています。

*新型コロナウイルス感染症の典型的臨床経過については、厚生労働省の技術参与として新型コロナウイルス感染症対策に日々尽力している高山義浩医師による概念図が参考になる。

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。一般市民はもちろん医療従事者も「敵の姿」が見えてこないだけに不安が強い。幸い、感染症と公衆衛生の専門医により「新型コロナウイルス感染症の典型的な臨床経過」と、その経過を踏まえた感染対策が公表された。

■治療は対症療法が中心だが抗ウイルス薬への期待も
現時点では、インフルエンザのように一般の医療機関で使用できる迅速診断用簡易キットも、また有効性が確認された抗ウイルス薬もなく、治療は対症療法が中心となるが、その一方、
「他のウイルスに対する治療薬*等が効果的である可能性もある」と記しています。

*新型コロナウイルスに対する治療薬候補の投与については、2月23日現在、アビガン(抗インフルエンザ薬)、ロピナビル(抗HIV薬)、レムデシビル(エボラ出血熱治療薬)について、一部の医療機関で倫理委員会等の手続きを経て、患者の同意を得た上で必要な患者に使用開始していることが報告*³されている。

上記の薬のうちレムデシビルについては、厚生労働省が5月7日、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、特例承認している。

一般医療機関も患者対応
感染症指定医療機関は重症患者を

基本方針では冒頭で、感染の流行を早期に終息させるために、感染者集団が次の感染者集団を生み出すことのないよう徹底した感染拡大防止策を講じていくとしています。

さらに「この時期は、今後、国内で患者数が大幅に増えた時に備え、重症者対策を中心とした医療提供体制等、必要な体制を整える準備期間にもあたる」とし、以下の具体策を明示しています。

  1. 感染への不安から帰国者・接触者相談センターへの相談なしに医療機関を受診することは、かえって感染するリスクを高めることになる。
    まずは、帰国者・接触者相談センターに連絡し、新型コロナウイルスへの感染を疑う場合は、相談センターから感染症指定医療機関の帰国者・接触者外来へ誘導する
  2. 地域で患者数が継続的に増えた状況での外来対応については、一般の医療機関で、診療時間や患者の動線を区分する等の感染対策を講じた上で、新型コロナウイルスへの感染を疑う患者を受け入れる
  3. 2の患者の受け入れについては、地域で協議し、新型コロナウイルスを疑う患者の診察を行わない医療機関(透析医療機関、参加医療機関など)を事前に検討しておく
  4. 一般医療機関が外来対応を行うことにより、患者数が大幅に増えて重症者を多数受け入れることが見込まれる感染症指定医療機関の帰国者・接触者外来を段階的に縮小していく
  5. 風邪症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に、相談センター、またはかかりつけ医に相談したうえで受診する
  6. 風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する人に対する継続的な医療・投薬については、感染防止の観点から、電話による診療などにより処方箋を発行するなど、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制をあらかじめ構築する
  7. 患者のさらなる増加や新型コロナウイルス感染症の特徴を踏まえた、病床や人工呼吸器などの確保、地域における医療機関の役割分担(集中治療を要する重症者を優先的に受け入れる医療機関など)等々、適切な入院医療の提供体制を整備する
  8. 医療機関における感染制御に必要な物品を確保し、院内感染対策のさらなる徹底を図る

新型コロナウイルス感染症の
院内感染対策の見直しを

なお、感染症指定医療機関および一般医療機関における新型コロナウイルス感染症の院内感染対策については、こちらの記事を参照してください。

中国武漢市で多発している肺炎が新型のコロナウイルスに関連した肺炎であることがWHOで確認された。その数日後、日本で初めての感染者が確認された。死者も出ているだけに、パンデミックを恐れる声もあるが、感染力は低いとのこと。その院内感染対策指針を紹介する。
国内の感染者増加に備え 一般医療機関での診療を想定 国内で新型コロナウイルスの感染が拡大しています。 現時点で…

参考資料*¹:「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00006.html
参考資料*²:「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599698.pdf
参考資料*³:「新型コロナウイルスに対する治療薬候補の投与」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020223.pdf