心不全患者にCOVID-19について伝えたいこと




心臓病

心臓病がベースにあると
COVID-19は重症化しやすい

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)が続くなか、基礎疾患のある人がこのウイルスに感染してCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に罹ると、重症化して人工呼吸器などによる集中的な治療が必要な状態に陥るリスクが高いことが指摘されています。

この、重症化リスクの高い基礎疾患の一つに、糖尿病やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などと並び、心臓病があげられます。

米国CDC(疾病対策センター)が3月31日に発表したレポートによれば、COVID-19が重症化して集中治療室(ICU)に入った患者で何らかの基礎疾患を抱えていたのは78%ですが、そのうち29%は心臓病や脳卒中などの循環器疾患だったことを明らかにしています。

また、中国におけるデータでも、COVID-19により集中治療室で治療を受けた患者の25%、つまり4人に1人が心臓病の持病があったと報告しています。

循環器学会が「COVID-19対策特命チーム」を結成

これらの報告を受けるかたちで日本循環器学会は、4月10日、現在医療現場で発生している問題や、これを解決するための提言、患者に向けてのメッセージなどを学会レベルで積極的に進めていくことを決定し、そのための組織として、
「COVID-19対策特命チーム」(委員長/野出 孝一佐賀大学医学部循環器内科・教授)
を立ち上げています。

同チームはその活動の一環として、一般の医療機関に向け
「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制についてのQ&A」*¹
をまとめ、公表しています。
今回はそのポイントを紹介したいと思います。

手洗いなど手指衛生の徹底と
「3つの密」を避ける

公表された「Q&A」では「問1」として、
「心臓病患者が、新型コロナウイルスに関して気をつけることはありますか」
をあげています。

これに対する「答」の冒頭では、COVID-19に罹った場合、糖尿病や呼吸器疾患同様、心臓病も重症化するリスクが高いことを強調しています。

そのうえで、各種ある心臓病のなかでも、とりわけ心不全*がある患者では、まずは以下2点の感染予防策を徹底することを求めています。

  1. インフルエンザなど他の感染症同様、石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる手指衛生など、一般的な衛生対策を徹底する
  2. 不要不急の外出や人込みの多い場所を避ける
    屋内でお互いの距離が十分に(最低でも1.8m)確保できない状況で一定時間を過ごすなど、「三つの密、すなわち換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、身近で会話や発声をする密接場面」を避ける

なお、COVID-19対策としての「マスクの着用」については、空中のマイクロ飛沫やエアロゾル飛沫のような小さな飛沫を防ぐ効果は期待できないものの、咳やくしゃみにより勢いよく吐き出される飛沫を正面で受け止めず、横に流す効果は期待できるとされています。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

新型コロナウイルス感染症の感染対策としてのマスク着用につき、WHOは指針を修正し、咳エチケットの効用を認める見解を新たに明記。これを受け、米国CDCもマスクの着用を推奨。欧州各国も同じ動きを見せている。布製マスクにも言及しているこの指針を紹介する。
*心不全については、日本循環器学会と日本心不全学会が2017年10月、一般国民に向けて発表した共同プレスリリースのなかで、次の定義を提示して、正しい理解のもとに心不全の予防や早期発見、早期治療につなげることを求めています。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」*²

COVID-19の症状は
心不全の症状に類似している

先の「Q&A」ではもう1点、COVID-19に罹患すると現れることの多い症状のうち、「咳」や「息苦しさ」といった呼吸器症状について、
「心不全が悪くなったときの症状と似ている」ことを指摘しています。

そのうえで、
「熱を伴うときはもちろんのこと、咳や息苦しさがいつもと違うと少しでも感じたときは」
主治医(かかりつけ医)に相談するよう促しています。

この場合の「咳や息苦しさがいつもと違う」といった症状の変化に、患者自身が、もしくは家族が気づくことができるかどうかが、大切なポイントになります。

いち早く気づくためには、日本心不全学会と日本循環器学会が合同で制作した「心不全手帳」にある「毎日の記録」のページを活用して、症状の変化を記録上からも把握できるようにすることをすすめてみてはいかがでしょうか。

「心不全手帳」の詳細については、こちらの記事に詳しく書いてあります。
是非参照してください。

慢性心不全は急性増悪を繰り返すものの、最期には比較的急速な経過をとるという特徴があり、ACPのタイミングを計りにくい。このACPの進め方について、国立循環器病研究センターの循環器緩和ケアチームに参加する高田弥寿子氏が指摘する留意点を紹介する。

咳や息苦しさの変化に気づいても
いきなり受診しない

咳や息苦しさが「どうもいつもとは違うな」と気づいたときは、躊躇なく主治医なりかかりつけ医なりに相談することが大切です。

とは言え、COVID-19の感染者のなかには、無症候性感染者(無症状病原体保有者)といって、新型コロナウイルスに感染しているにもかかわらず症状がいっさい現れない人が少なからずいることがわかっています。

また、感染してから症状が現れるまでの、いわゆる潜伏期間が、10日以上のケースも稀ではないこともわかっています。

したがって、「歩く感染源」となって感染を拡大してしまうようなことを防ぐためにも、咳や息苦しさといった症状の変化に気づいて自ら感染を疑った場合でも、いきなりかかりつけの病院やクリニックを受診しないように伝えておきたいものです。

まずは電話やテレビ電話で相談する

まずは電話、もしくはオンライン診療が可能ならテレビ電話により、かかりつけ医などに、症状の変化について相談し、そのうえで医師の指示に従うように伝えておくことが大切です。

相談内容から、かかりつけ医がCOVID-19が疑われると判断した場合は、医師が最寄りの「帰国者・接触者相談センター」、あるいは保健所に連絡して協議し、その結果から、感染の有無を調べるPCR検査を実施するなどの対応につなげることになります。

参考資料*¹:「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制についてのQ&A」
https://www.j-circ.or.jp/old/topics/jcs-notice20200218.pdf
参考資料*²:「心不全の定義について」
http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/topics20171101.pdf