おしゃれマスクに感染予防・拡大防止効果は?




おしゃれマスク

布製やウレタン製マスクで
感染第2波は防げるか

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が7週間ぶりに全面解除となり、自粛生活から解放された人々が、一気に街に繰り出しています。

その様子を伝えるテレビを見ていて、老若男女を問わず、人々が着けているマスクがあまりにカラフルなことが気になってきました。
いわゆる「おしゃれマスク」です。

気になるのは、おしゃれマスクの素材です。

布製のものが多いようですが、ファッション性が高いとして若者が好んで着けているのは薄いスポンジのようなウレタン製のマスクです

使われている布やウレタンに、ウイルスの感染を防ぐ、あるいは感染拡大を防止する効果はどれほど期待できるのでしょうか。

また、気になるのは、素材だけではありません。

口だけをマスクで覆って鼻を出している、いわゆる「鼻出しマスク」の人もいれば、口と鼻は丸出しで顎(あご)にマスクをひっかけている「顎マスク」姿も目に付きます。

新型コロナウイルスの感染は完全に収束したわけではありません。
感染の第2波、第3波が懸念されるなか、「マスク着用」のそもそもの目的に立ち返り、おしゃれマスクでいいのかどうか、ここで少し考えてみたいと思います。

「新しい生活様式」では
症状がなくてもマスク着用

政府の専門家会議は、緊急事態宣言解除後の日常生活と新型コロナウイルス感染対策とを上手く両立させていくためのポイントとして「新しい生活様式」をまとめ、公表しています。

このなかでマスクについては、「咳エチケット」としてこう書いています。
▪マスクを着用する
▪咳などの症状がなくても、外出時はもちろん、屋内でも会話をするときは着用する

これを見たり聞いたりした多くの人から、
「症状がなくてもマスクは必要なのか」といった疑問の声があがりました。

「濃厚接触者」の定義に見るマスク着用の必要性

この疑問に対する答えは、国立感染症研究所が4月21日に公表した、新型コロナウイルス患者の「濃厚接触者」に関する新たな定義にあるのではないでしょうか。

ある人が新型コロナウイルス感染症と診断された場合、
「その人が発症した日からさかのぼって2日前までに、目安として1m以内にマスクなしで15分以上会話をするなどの接触をした人」
が濃厚接触者として定義されています。

つまり、今私たちが闘っているウイルスは、感染を受けた人が新型コロナウイルス感染症を発症する、つまり症状を自覚する2日も前から人にうつす力を持っているということを意味します。

だから、「自分は熱もないし咳も出ていないから、マスクは必要ないだろう」ということにはならない。「無症状でも新型コロナウイルスに感染していれば、人に感染させるリスクがあるから、感染を広げないためにマスクを着用しよう」となるわけです。

布製マスク着用に期待できる
感染拡大の防止効果

その際ですが、「では、どんなマスクを着用していれば、感染拡大を防ぐことができるのか」といったマスクの素材に関することまでは、この「新しい生活様式」でも言及されていません。

そこで、「布製やウレタン製のマスクでもOKなのか」といった疑問を持つのですが……。

このうち布製マスクについては、厚生労働省がWEBサイトで、布製マスク着用による効果として以下の3点をあげ、感染の拡大防止に効果が期待できるとしています。

⑴ (ウイルスを含む可能性のある)咳やくしゃみなどの飛散を防ぐ(咳エチケット)
⑵ (ウイルス付着の可能性がある)手指で口や鼻に直接触れるのを防ぐ(接触感染予防)
⑶ のどや鼻など呼吸器をうるおして粘膜を保護する(バリア機能がアップし、ウイルスに感染しにくくなる)

飛沫は咳で6m先、くしゃみでは8m先まで届く

このうち⑴にある「咳やしくゃみなどの飛散」については、米国マサチューセッツ工科大学の研究チームが、ハイスピードカメラや光センサーを使って実験を行っています。

その結果、咳では最長6m先まで、くしゃみでは最長8m先まで飛沫、つまりウイルスを含む可能性のあるつばや唾液などが飛ぶことを確認したそうです。

この結果から研究チームは、マスク着用の効果として次の2点をあげています。
⑴ 換気の悪い室内などでは、感染リスクを低減できる
⑵ 感染者と対面している場合は、感染者からの呼吸の流れを遮断し、大量のウイルスを口や鼻など呼吸器から遠ざける助けになる

マスクには飛んできた飛沫を横に流す効果がある

ただし、「フィルター効果のない薄いマスクでは、マイクロ飛沫やエアロゾル粒子と呼ばれるような微細な飛沫からは守ってくれないだろうが、咳やくしゃみによって勢いよく吐き出される飛沫を正面から受け止めず、横に流す効果は期待できるかもしれない」ともあります。

布製マスクの多くは、ウイルスやウイルスを含む飛沫を除去する効果が期待できるとされているサージカルマスクに比べれば網目がずっと荒いため、フィルターとしての性能はかなり低く、この指摘は布製マスクにも当てはまると考えていいでしょう。

マスクの限界を知って
手指衛生、3密の回避なども

一方、おしゃれマスクのもう1つ、ウレタン製マスクについては、ウイルスを除去するフィルターとしての性能をきちんと調べた報告は、現時点では確認することができません。

そのため確たるエビデンスはないのですが、少なくとも感染拡大を防止するという点では、ウレタン製マスクにも布製マスク同様の効果は期待できると考えていいだろうと思います。

つまり、感染者が咳やくしゃみをしたときにウイルスを含む飛沫が周囲に飛び散るのを防いだり、ウイルスが付着しているかもしれない手で口や鼻に触ることを防ぐ、といったかたちでの予防効果はあるのだろう、と――。

ウイルスを取り除くフィルター機能に疑問

ただ、布製マスクにしてもウレタン製マスクにしても、ウイルスを取り除くフィルターとしての性能を存分に担保できていないという、素材面での限界はあります。

同時にもう一点、冒頭で書いたように、「鼻出しマスク」や「顎マスク」のようなマスクの着け方をしていると、マスクを着け直したりする際に、鼻先など顔の表面に付着していたウイルスを、そのまま鼻や口の中に送り込んでしまうといったリスクがあります。

また、マスクと鼻や頬の部分がフィットしていなければ、ウイルスをブロックする効果も低減することにもなります。

マスクは正しく装着してこそ

市販のマスクのパッケージには、多くの場合イラスト入りで、「このマスクの正しい装着方法」を紹介しています。またマスクによっては、装着の仕方や取り扱い上の注意点を詳細に記した取扱説明書付きの製品もあります。

さらにそのパッケージの裏面をよく見ると、小さな文字で「本品は細菌やウイルスの侵入を減らすことを補助するために作られた製品で、病気や感染症のリスクを完全に回避するものではありません」と書いてあります。

マスクは正しく装着すること、正しく装着しても感染防止には限界があることを忘れずに、「マスクをしているから安心」などと油断することなく、こまめな手指の清潔や密閉・密集・密接の3密を避けるなど、新しい生活様式の励行に努めたいものです。

『マスクの品格』の著者であり、マスクの性能に詳しい聖路加国際大学の大西一成准教授(公衆衛生学)はNHKの取材に応え、屋外で人との距離が保てるようであれば布製マスクでも問題はないだろうが、屋内で3密に近い状況では、性能が確認されている不織布製のマスク(サージカルマスク)を着用するのが望ましいと答えています。