病室内の消毒や清掃は「環境整備」では?




清掃

日本看護協会が会見
「すでに限界に」と窮状訴える

新型コロナウイルスの感染拡大で医療従事者、とりわけ看護師の方々の労働環境の悪化や感染リスクにより、離職者や離職希望者が相次いでいることが、連日報じられています。

12月22日には、日本看護協会の福井トシ子会長らが記者会見を開き、
「新型コロナの対応で看護職員は心身の疲労がピークを迎えていて、使命感だけではすでに限界に近づいている」
と、医療崩壊に近い窮状を訴えました。

そのなかで、感染防止のためにいつもお願いしている外部の清掃業者が入れず、病室の消毒や清掃といった作業まで看護師が行わざるを得ないことが負担をさらに増大させている、といった主旨のことが語られていました。

これを聞いて、少々違和感を覚えたのは、私だけではなかったようです。

この記者会見があった日のかなり遅い時間、東京近郊の病院で看護師長を務めるYさんから、
「病室内の消毒や清掃って、環境整備の一環ではないのかしら……」
とのメールが届きました。

メールを読んですぐ、深夜でしたが、電話をして30分ほど話をしましたので、今回はそのとき話題になったことを書いてみたいと思います。

病室内の消毒や清掃が
看護師の負担を増している

福井会長は、その日の夜の報道番組に出演され、そこでもやはりコロナ対応で苦慮する看護師の方々の現状を切々と訴えておられたそうです(私は見逃しましたが……)。

話を聞いていた男性アナウンサーが、最も関心を持ったのは、病室内の消毒や清掃まで看護師に任され、それが負担増になっているという部分だったようです。

そこで、用意していたパネルをおもむろに取り出し、それを提示しながら、
「その点については菅首相が、専門業者に政府からお願いして看護師に負担がかからないよう、しっかり支援をしていきたいと語っています」
と説明したのだと……。

この話は、夕方のニュースでもやっていましたので、私も聞いて知っていました。

苛酷な状況にあるのは
コロナ対応最前線だけではない

メールをくれたYさんのことをちょっと説明すると、彼女が看護師長を務めているのは回復期リハビリテーション病棟です。

今回のコロナ対応では、新型コロナウイルス感染症患者が入院している感染症病棟の応援に看護師4人を送り込んでいるとのこと。

しかし、すでに2カ月ほどになるが、欠員を補充できていない状態が続いていて、人手不足の大変さ、とりわけ夜勤のやりくりの難しさは身をもって体験しているそうです。

同時に、幼子をもつ看護師2人と80代の老親と暮らす看護師1人の計3人が、いまのところ自分は感染していないが、ウイルスを自宅に持ち帰って家族が感染するといった最悪の事態になることを恐れて、3人で病院近くのホテルに宿泊し、そこから通勤する生活をすでに3カ月余り続けているとのことです。

勤務先がコロナ対応をしている病院であることにつき、近隣の住民から改めて、
「あなたは大丈夫なのね」などと怪訝な表情で話しかけられ、とても嫌な気分がしたと話してくれるスタッフもいたそうです。

病室の消毒や清掃を
専門業者にお願いする?

このようにYさんもコロナ禍の真っただ中で、日々奮闘しているわけです。

ただ、何ごともプラス思考を心がけているというYさんは、
「大変だと訴えることも必要だけど、一般の方々に私たちが日々やっている看護という仕事を具体的に理解していただけるいい機会だとも思っている」と話します。

「だから若いスタッフには、SNSで愚痴を書いたりしてもいいけれど、情報の出し方を間違えないようにと伝えています」とも。

このような姿勢でコロナに立ち向かっているだけに、
「看護師が消毒や清掃もやっていて大変らしいから、専門業者に政府からお願いして……」
という受け止め方をされるのは、看護にとってはむしろマイナスではないだろうか、とYさんは考えているようです。

ナイチンゲールの
「看護とは」に立ち返ると

Yさんは、私がこのブログで「看護師は今こそナイチンゲール看護の実践を」という記事を書いたとき、真っ先に感想を寄せてくれた方です。

Yさんが「看護の師と仰ぐ」というナイチンゲールは、
「看護とは、患者の生命力の消耗を最小にするよう療養環境を整えること」
と定義しています。

具体的には、新鮮な空気や陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に保ち、食事を適切に選択することだと――。

さらには、患者が呼吸する室内の空気を「屋外の空気と同じ清浄さに保つこと」こそ、看護者が最優先してやるべきことだ、とも。

この教えから言えば、新型コロナウイルスという未知の脅威と闘っている患者の生命力の消耗を最小限にとどめるために消毒や清掃をして療養環境を整えることは、
「本来、看護師が責任をもって引き受けるべきことでしょう」
というのがYさんの考えです。

とは言え、ただでさえ人手が足りない今の状況にあっては、いつも出入りしている清掃業者の手を借りることもやむを得ないでしょう。

「その際は、自分たちで清掃業者の方々に感染対策についてきちんと説明し、ノウハウもしっかり伝え、さらに一度一緒にやって見せてお願いする、というのが本筋ではないかしら」

感染対策も熟知した
環境整備のプロが必要?

「新型コロナウイルス感染症患者への対応の最前線にいる方にこのようなことを強いる気持ちはさらさらないけれど、看護部で役割分担をしてやっていけたらいいなぁと思ったりもするんだけど、私って甘いかしら」

そう聞かれ、
「いや、甘いとは思わないし、そうするのが本筋だとは思う。けれど、やはり事前の準備がないとなかなか難しいことではないかしら」
と答えるのがやっとの私でした。

たとえば、昔は看護が全部引き受けていたことを、リハビリテーションに関することはリハビリのプロに、食事は栄養士に、などと仕事を手渡してきた経緯があります。

このように、清掃などの環境整備についても、感染リスクにも対応できるように感染対策をマスターしたプロを養成して彼らに託していく、なんてことがこれからは必要なのかな、といった話にもなりました。みなさんはいかがお考えでしょうか。