感染対策としての血圧計本体&カフの消毒法

血圧計

血圧計を介しての
感染拡大を防ぐために

厚生労働省の集計によれば、全国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人は、2021年5月31日時点で、74万1524人とのこと――。
これは総人口の約0.6%に相当します。

ただ、ウイルスに感染していても症状がなく、医療機関を受診していない、いわゆる無症候性感染者等がいることから考えると、実際の感染者はもっと多いと見られています。

ところで、高血圧は患者数が最も多い生活習慣病です。
その数は予備群も含めると、全体として約4300万人いると推定されています。

実に、日本人の3人に1人が高血圧という状況ですから、医療機関において、また訪問先でも、日常のケア場面で血圧測定を行う機会はかなり多いものと推測されます。

コロナ禍にあり、医療機器を介しての院内感染等のクラスター発生が連日のように伝えられる状況下で、血圧測定に使用する血圧計の感染拡大のための清拭・消毒は万全でしょうか。

今回は、日本高血圧学会 学術委員会の「血圧計に関するワーキンググループ」が公表しているコメントをもとに、血圧計の清拭・消毒方法について書いてみたいと思います。

血圧計は本体もカフも
ノンクリティカル器材

使用した血圧計や聴診器などの医用器材は、すべての患者に適用される患者と医療従事者双方を院内感染リスクをから守る標準予防策(スタンダード・プリコーション)として、その都度清拭・消毒するのが原則です。

その際の、血圧計の清拭・消毒方法について当ワーキンググループは、コメントの冒頭で、
「詳細は血圧計付属の添付文書(取扱い説明書)を参照してください」と明記しています。

とは言われても、使用している血圧計の添付文書が手元にないこともままあるでしょう。
そんな時は、各メーカーのWebサイトで確認することができます。

新型コロナウイルスにはアルコール清拭を

一般的に血圧計は、本体もカフ(腕帯)も患者の健康な皮膚とは接触するものの、粘膜や創傷のあるような皮膚に直接接触することはまずありません。

したがって、聴診器同様、「ノンクリティカル器材」であり、例外を除き、感染伝播には関与しないとされています。

そのため、血圧測定に用いる血圧計や聴診器の感染対策としては、高度な汚染を受けていないかぎり、低水準消毒薬による消毒やアルコール清拭のみで十分とされています。

低水準消毒薬としては、グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン®、ヘキザック水®)や第4級アンモニウム(オスバン液®、ジアミトール®)、あるいは両性界面活性剤(ニッサンアノン®、テゴー51®、)等があげられます。

ただし、これらの低水準消毒薬はいずれも、ウイルスには十分有効ではない場合が多いことがわかっています。

したがって、新型コロナウイルスに対しては、消毒用エタノールによる「アルコール清拭が望ましい」と推奨しています。

とはいえ、メーカーによっては取扱い説明書の「お手入れ方法」に、「汚れを落とすときは、アルコールやベンジンなどを使用しないこと」と明記しているところもありますから、その際は、その指示に従うことが大切です。

血圧計本体とカフは
アルコール清拭で感染予防

その具体的な方法は、日本臨床工学技士会の医療機器管理業務検討委員会がまとめた
「医療機器を介した感染予防のための指針」*¹が参考になります。

本指針の「電子血圧計(非観血式)」の項(p.81-82)では、アルコール清拭を行う際のポイントとして、以の点をあげています。

  • 血圧計使用後は、清拭を行う前に忘れずに電源を切る
  • ガーゼなど柔らかい布に消毒用エタノールなど製造販売業者が推奨する消毒液を浸し、よく絞ってから、血圧計の本体、加圧ゴム球(送気球)、カフの表面を清拭する
  • 清拭する際に、血圧計本体の内部に消毒液が侵入しないように注意する
  • 清拭した後は、乾いた柔らかい布で水気(消毒液)を完全に拭き取る
  • 水気を拭き取った後は、自然乾燥する
  • カフが汚染し、清拭だけでは汚れが落ちないときは、カフの外布を洗う
  • その際、変色を背ぐために漂白剤は使用せず、中性洗剤で洗い、十分乾燥させる

訪問先で家庭用血圧計を使用するとき

ただ、ときには訪問先で患者宅専用の家庭血圧計を使用することもあるでしょう。

その際も、医療機関における清拭・消毒法に準じます。

ただし、メーカーによってはアルコール清拭ではなく薄めた中性洗剤での拭き取りを指示しているところもあるようです。

必ず、使用している血圧計付属の取扱い説明書を確認すること。

また、消毒や清拭の後に血圧を測定する際は、消毒液が完全に拭き取られ、乾燥していることを確認してから測定するよう、注意を促しています。

参考資料*¹:日本臨床工学技士会「医療機器を介した感染予防のための指針」