指定感染症となった新型肺炎、何が変わるのか




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新型肺炎が「指定感染症」に
感染拡大防止に万全を

中国湖北省武漢市で発生し、世界的規模で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎について、安倍晋三首相は1月27日の衆議院予算委員会で、感染の拡大防止に万全を期すべく、感染症法上の「指定感染症」とする方針を明らかにしました。

指定感染症に指定する理由について首相は、
「感染者に対する入院措置や公費による適切な医療を可能とするため」
と説明しています。

28日の閣議において、感染症法に基づく「指定感染症」とともに、検疫法に基づく「検疫感染症」についても指定するための政令を定めています。

この政令は当初、必要な手続きを経て2月7日に施行される予定でした。
ところが、WHO(世界保健機関)が31日未明、
「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言したことを受け、
安倍首相は1月31日、前倒しして2月1日施行とすることを表明しました。

新型コロナウイルスによる肺炎が「指定感染症」および「検疫感染症」に位置づけられることにより、具体的に何がどのように変わるのか、まとめてみました。

「指定感染症」の指定により
入院などの強制措置が可能に

まず「指定感染症」ですが、ご承知のように感染症法は、さまざまな感染症を感染力や危険性の高さに応じて1~5類に分類し、あらかじめ各類に対する対応の仕方が決められています。

指定感染症は、今回の新型コロナウイルスによる肺炎のように、感染症法上の分類がまだ決まっていないものの、国民の生命や健康に深刻な被害を与える恐れがあり、かつ緊急、迅速な対応が求められる感染症に適用されます。

「指定感染症」に指定されると、2003年に指定を受けた重症急性呼吸器症候群「SARS(サーズ)」や2006年の高原性鳥インフルエンザ、さらには2014年の中東呼吸器症候群「MERS(マーズ)」同様、感染症法そのものの改正を待たずに、診断や入院の勧告、就業制限といった強制的な措置をとることができるようになります。

指定感染症の指定期間は最長1年間が原則ですが、必要に応じて1回に限り、さらに1年延長することもできるとされています。

一次的な就業制限や
公共交通機関の運行中止も

新型コロナウイルスによる肺炎が指定感染症に指定されたことにより、国内で感染が確認された場合、患者を診察した医師には管轄の保健所への報告が義務づけられます。

一方で「疑い例」、つまり感染が疑われる人には、医師の診断を受けさせることができます。
また感染が確認された患者に対しては、都道府県知事が、全国に約400ある感染症対策に必要な設備や医療チームなどが整っている指定医療機関*¹への入院を勧告することができます。

患者がこの勧告に従わない場合は、感染症法に基づいて強制的に入院させることができます。

同時に、就業制限や患者が立ち寄った商業施設や公共交通機関の消毒、場合によっては一時的な使用や運行を禁止することもできます。

指定感染症に指定されていなければ、新型コロナウイルスに感染していることが確認された患者に医療機関への入院、あるいは外出を控えて自宅待機するよう「お願い」することはできても、強制することはできません。

この点だけみても、新型コロナウイルスによる肺炎が指定感染症に指定されたことは、感染拡大の防止に大きな意味を持つことになります。

医療費の公費負担は
公的保険加入の外国人も

同時に、感染を受けてしまったために保健所の勧告を受けて入院することになり、一定期間仕事を休むことになった患者には、感染症法第37条が適用され、指定感染症認定期間中にかかる医療費は各自治体の判断のもとに公費で負担されます。

この場合、患者が加入している各種公的医療保険を優先して適用し、その自己負担分を公費で負担することになります。

ただし、自治体のなかには、世帯員(日常の住居、生活を共にしている人の集まり)の総所得額によっては、一部自己負担額に20,000円の上限を設けているところもあります。

この指定感染症の医療費公費負担については、政令が施行される2月1日までの間にかかる医療費についても公費負担とすることが閣議決定されています。
これにより、少なくとも経済面では安心して治療に専念することができるようになります。

なお、指定感染症の医療費公費負担には国籍要件が設定されていません。
したがって、日本に入国する外国人には、基本的に公的保険への加入がすすめられていますから、この保険に加入している外国人であれば、各自治体の判断にもよりますが、保健所の勧告による入院にかかる医療費のうち、自己負担分の一部が公費で賄われます。

「検疫感染症」指定により
検疫所でもウイルス検査が可能に

冒頭で記したように、新型コロナウイルスによる肺炎については、指定感染症だけでなく検疫法の「検疫感染症」にも指定されています。

検疫感染症に指定されたことにより、入国時に感染が疑われる人、いわゆる「疑い例」が出た場合、これまでのように医療機関を受診しなくても、入国した空港や港などの検疫所で、法律に基づいてウイルス検査や診察を実施できるようになりました。

具体的には、空港や港などで入国者に発熱や咽頭痛、咳嗽などの呼吸器症状が出ていないかを確認し、発熱などの症状が見られる入国者に対しては、検疫所長もしくは検疫官がウイルス検査や診察を強制的に行うことができます。

一方、入国した時点では発熱などの症状がないものの、新型コロナウイルスによる肺炎の発生地とされる湖北省武漢市への渡航歴や、武漢市内での病人との接触歴があり、感染が懸念される入国者に対しては、健康カードなどを渡して一定期間、毎日、発熱や咳嗽、息苦しさの有無など、健康状態をチェックし、報告するように求めることができます。

これらの指示や要請に従わない場合には、罰則を課すこともできます。
検疫法によれば、たとえば検疫所長や検疫官による診察やウイルス検査を拒んだ場合は、6か月以下の懲役、または50万円の罰金を課されます。

なお、新型コロナウイルス肺炎への院内感染対策指針はこちらの記事で紹介しています。
是非参考にしてください。
→ 新型コロナウイルス肺炎への院内感染対策指針

一般医療機関における新型コロナウイルス感染症対策についてはこちらを。
→ 一般医療機関向けに新型コロナウイルス感染症「対応ガイド」を公表(日本環境感染学会)

*¹厚生労働省 感染症指定医療機関の指定状況(2019年4月1日現在)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02.html

*指定感染症・検疫感染症に関する厚生労働省の参考資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000589260.pdf