高山医師の「新型コロナウイルス感染症 臨床像」




文献

新型コロナウイルス感染症の
典型的臨床経過が示される

「今何が起きているのかわからない」ことほど人を不安にさせるものはありません。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のことです。

とりわけ医療現場で日々さまざまな患者に接している看護師のみなさんは、実際にウイルス曝露により職業感染を受けた看護師さんの報告があっただけに、
「もしかしたら自分も感染を受けてしまうのではないか」
「どう対処するのが自分の身を守るうえで最善なのか」……等々、
心配は尽きないことでしょう。

こうした不安や心配への特効薬は、新型コロナウイルス感染症がどのような病気なのかということを、現時点でわかっている範囲で、より正確かつ具体的に理解することに尽きます。

そんなことを考えていた折も折、これまで報告されている各種データに基づく「新型コロナウイルス感染症の典型的な臨床経過」の概念図が公開されました。

まとめられたのは、感染症と公衆衛生がご専門で、現在厚生労働省の技術参与として新型コロナウイルスによる感染症対策に日々尽力しておられる高山義浩医師(沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科)です。

ご自身のface bookに簡単な概念図と共にわかりやすい解説文が公開されています。
原文を直接読んでいただくのが一番かと思いますが、face bookにアクセスできない方もいると思い、「文章も図表も、著作権主張しません。皆さん自由に使ってください」とのお言葉に甘え、ここに紹介させていただきます(内容を変えない範囲で、一部編集しています)。

感染者の大多数は軽症だが
高齢者や基礎疾患があると重症化も

まず、新型コロナウイルスに感染したときの臨床経過を大別すると、下図にあるように、「軽症」と「重症化」の2パターンが考えられます。

写真の説明はありません。

■圧倒的に多いのは「軽症」パターン
新型コロナウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は5日ほど(1~11日)。
「軽症」例では、普通は2,3日で治る風邪症状が長引き、1週間ほど続いた後に軽快する、といった経過をたどるようです。

感染者に圧倒的に多いのはこの軽症パターンです。
このパターンでは、風邪症状を自覚してから3~4日目が一番感染力が強いと考えられています。

■倦怠感や息苦しさは重症化(新型肺炎)のサイン
感染者が入院を要するほど重症化するのは、通常の風邪症状を自覚するようになって10日ほど(9.1~12.5日)経った頃と見込まれています。

風邪症状に加えて倦怠感や息苦しさを自覚するようになるのが重症化パターンの特徴で、人によっては身体の浮腫や下痢といった症状が重なることもあるようです。

この重症化の経過をとるのは、高齢者や基礎疾患(糖尿病や高血圧、腎臓病などの慢性疾患)がある人に多いのですが、健康な壮年層に見られることもあります。
一方、この経過を子どもがとることは極めて稀とされています。

重症化すると感染力も維持されていて院内感染を引き起こしやすくなっていますから、感染対策のいっそうの強化が求められます。

今後の対策は重症化を防ぎ、
感染者の死亡減少に力点を

ウイルスに感染して発症した後の重症化率と致命率(死亡率)については、
「若者と高齢者では臨床経過が異なるため、世代別に考えた方がよい」としています。

現時点で世代別の疫学報告はなく、高山医師のざっくりとした印象では、
「若者の重症化率と致命率は、統計的に見れば、ほぼゼロ%」とのこと。

一方で、「感染した高齢者のおよそ1割が重症化し、1%ぐらいが死亡するのではないか」としたうえで、「これは、やや甘めの見積もりであり、要介護高齢者や入院患者では、さらにリスクが高まるものと考えてください」と警告しています。

こうした臨床像から考えて、これから私たちが力を入れるべきは、
「もはや、流行を抑止することは主たる目的ではなくなってきました(やれることはやるべきですが)。むしろ、重症化する人を減らし、とくに新型コロナに感染して死亡する人をできる限り減らすことに力を注ぐべきです」と記しています。

高齢者等のハイリスク者を
ウイルスから守る対策の徹底を

感染者の重症化を防ぎ、死亡者を極力減らすためにすべきことは、次の2点に尽きるとのこと。
⑴ 高齢者や基礎疾患のある人*に感染させないようにする
⑵ 院内感染を防ぐ
*ここで言う「基礎疾患のある人」とは、糖尿病や高血圧、腎臓病など慢性疾患があって、定期の内服薬を要する人を指す(以下、「ハイリスク者」)。

■家庭内でハイリスク者をどう守るか
このうち⑴について、一般の家庭内でどう対応したらいいのか、具体的に提示されています。
訪問看護師さんには貴重な情報と考え、そのポイントをまとめました。

  1. ハイリスク者がいる家庭では、ウイルスを外から持ち込まないように、玄関先に消毒用アルコールを用意しておき、帰宅時の手指衛生を徹底する
  2. 消毒用アルコールが手に入らないときは、おしぼりでもOK(やらないよりはマシ)。ドアノブなどあちこちを触ってから、洗面台に行って手洗いをしても手遅れ
  3. 同居する家族に風邪症状が出た場合は感染を疑い、ハイリスク者と接触しないよう、症状が治まるまで(その家族を)家庭内で隔離する
  4. 風邪をひいている人が(隔離中の)部屋から出るときは、マスクを着用させて、消毒用アルコールで手指衛生をする
  5. 部屋の外では、できるだけ余計なものに触らない
  6. トイレ後は、触った場所を消毒用アルコールを染みこませたペーパータオルで拭う
  7. お風呂は(風邪症状のある人が)最後に入ることとし、バスタオルは絶対に共用しない

以上の対応を発症してから7日間は厳守する。
それが困難なら、一時的にハイリスク者を親族の家などに疎開させることも検討する。

■受診に関して気をつけること
病院の救急外来には、体調を悪化させたハイリスク者が数多く受診しています。
彼らへ感染させないために、風邪症状に過ぎないのに新型コロナかどうかを確認するためだけに、救急外来を受診することは避けること。

また、救急外来には新型コロナの重症患者もいるかもしれません。
「ただの風邪」だったとしても、救急外来を受診することで新型コロナに感染して帰ってくるといったリスクがあることも伝えています。

■外来看護で求められること
流行期にハイリスクの方が人混みを避け、なるべく自宅で過ごすことは大切です。

ハイリスク者が感染リスクのある病院に行く回数を減らすためにも、1カ月おきの外来受診を3カ月おきに切り替えるために、長期処方や予約延長の検討をかかりつけ医に相談してみることをすすめています。

■高齢者施設こそ万全の感染管理を
さらに「高齢者施設の感染管理は極めて重要」とし、その感染リスクをこう説明しています。
「100人の入所者がいる施設で新型コロナがアウトブレイクした場合、30人以上が発症し、10人以上が救急搬送を要して、数人がお亡くなりになるというイメージが必要です。このような事態を避けるためにも、全力で感染管理に取り組みましょう」

続いて、施設内感染管理の具体策が詳しく書かれています。
そのポイントをまとめると以下のようになります。

  1. ウイルスを外から持ち込ませない(流行期は、原則として面会はすべて中止。物品の搬入などは玄関先で行い、やむを得ず業者が施設内に入る場合は、玄関先でアルコールによる手指衛生を行い、トイレも含め共用の場所には立ち入らないように求める)
  2. 職員も、玄関先で手指衛生と毎朝の検温および症状確認を自己申告ではなく、管理者による指差し確認で行う
  3. その際に、軽微であっても症状を認める職員は、絶対に休ませる
  4. 勤務中であっても職員に症状を認めたら、絶対に休ませる
  5. 流行期には、出勤できる職員数が半減することも想定しておく必要がある。
    その際は、すべての業務を継続させようとしたり、現場の判断で場当たり的に仕事をさせるのではなく、優先的に継続させるべき中核業務を決定しておく。入居者の協力のもと、どこまで業務をスリム化できるかが勝負。

■流行期の通所サービスは全て休止を
感染管理を徹底することは不可能と考えられる通所サービス(デイケアやデイサービス)については、最善策は「流行期にはすべて休止させることです」としています。

そのうえで、「もちろん、その分、訪問系サービスを充実させる必要があります。通所サービスの職員に、利用者宅を巡回させるなど工夫してください。これは事業者だけで解決できる問題ではないので、市町村が主導するなどして、どうすべきかを急ぎ話し合っていただければと思います。いま、話し合ってください」と記しています。