がん患者にCOVID-19について伝えたいこと




covid-19

免疫障害がベースにあると
COVID-19は重症化しやすい

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)が続くなか、基礎疾患のある人がこのウイルスに感染してCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に罹ると、重症化して人工呼吸器などによる集中治療が必要な状態に陥るリスクの高いことが指摘されています。

この、重症化リスクの高い基礎疾患の一つに、心不全などの心疾患や糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のような呼吸器疾患と並び、免疫力(防御機能)の低下、つまり免疫障害を招きやすい「がん」があげられています。

COVID-19に罹患したがん患者を対象に行った中国における研究では、がん患者、とりわけCOVID-19の発症前1か月間に化学療法もしくは外科療法を受けたがん患者において、COVID-19の感染リスクが高く、また重症化して集中治療室(ICU)に入る確率も高かったことが報告されています。

日本臨床腫瘍学会が
「COVID-19に関するがん患者向けQ&A」を公表

がん患者の感染リスクが高いことは言うまでもないでしょう。
とりわけがん治療中の患者は免疫障害に陥りやすく、COVID-19に限らず、呼吸器感染症や皮膚感染症など、さまざまな感染症にかかりやすいことについてはご承知のとおりです。

国外はもとより、国内においてもCOVID-19の感染拡大に歯止めがかからない状況が続いているのを受け、日本臨床腫瘍学会は、4月14日、がん患者向けCOVID-19の感染予防策をまとめ、
「がん診療と新型コロナウイルス:がん患者さん向けQ&A」*¹として公表しています。

このなかで「Q8」として「一般的に、免疫障害とは何ですか?」をあげ、
「ウイルスや細菌などからからだを守る白血球の数が少ないか、その機能が低下している状態」であることを説明。そのうえで、
「がん患者さんは免疫障害を有しています」と断言しています。

がん患者で特にCOVID-19の感染リスクが高いのは?

さらに「Q9」として「がん患者にとって新型コロナウイルス感染症のリスクは何ですか? 」
を取り上げ、がん患者のなかでもとりわけCOVID-19の感染リスクが高く、より厳重な感染対策が求められる状況として次の3点をあげています。

  1. 現在がん治療を受けている患者は、寛解*している患者よりもおそらくリスクが高い
  2. 造血幹細胞移植**またはCAR-T細胞療法***を受けて1年以内の患者は、COVID-19に感染するリスクが高く、感染すると合併症を発症するリスクが高い
  3. これらの治療後1年以上経過していても、免疫障害がある患者は高リスクである
*寛解(かんかい)とは、一時的あるいは永続的にがん(腫瘍)が縮小または消失している状態を言う。寛解後の再発や転移もあり得る。
**造血幹細胞移植は、主に急性骨髄性白血病などの血液がん患者に行われる。
***CAR-T(カーティー)細胞療法は、がん免疫療法の1つ。白血病など難治性がんに行われる

がん患者、それも治療中のがん患者には日頃から、感染予防を心がけるよう指導しているはずです。しかし、COVID-19のパンデミックといった深刻な事態を受け、より慎重を期すためには、COVID-19の特徴を踏まえた感染予防策と、自らが感染を疑った場合の対応について、患者には改めて具体策を伝えておく必要があろうかと思います。

その参考にしていただければと思い、学会が公表している「がん患者さん向けQ&A」をベースに、ポイントをまとめてみたいと思います。

手洗いなど手指衛生の徹底と
「密閉・密集・密接」を避ける

公表された「がん患者さん向けQ&A」では、
「2.新型コロナウイルス(COVID-19)感染に対する備え」のなかで、
「新型コロナウイルス感染はどのよう予防しますか?」
を「Q1」としてあげています。

これに対する回答として、以下2つの観点から、「手を洗う」「目鼻口を触らない」「握手しない」など9項目の具体策を提示し、感染予防策の徹底を求めています。

  1. インフルエンザなど他の感染症同様、石けんと流水による20秒間の手洗い、あるいは60%の手指消毒用アルコールによる手指衛生をこまめに行うとともに、公共の場の手すりやドアノブなどに直に触れないなど、一般的な衛生対策をより徹底する
  2. 不要不急の外出や旅行、人込みの多い場所を避け、できるだけ家にいる
    屋内でお互いの距離が十分に(最低でも2m)確保できない状況で一定時間を過ごすなど、「三つの密、すなわち換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、身近で会話や発声をする密接場面」を避ける

マスクの着用に期待できる感染予防効果

なお、COVID-19対策としての「マスクの着用」については、仮に自身が感染者になってしまった場合には、咳やくしゃみを介して他人にウイルスをうつさないという、いわゆる「咳エチケット」として必須です。

反対に、感染者からのウイルスを含む飛沫を防ぐうえでのマスクの着用は、空中のマイクロ飛沫や医療的な処置時などに一時的に発生するエアロゾルのような極めて小さな飛沫まで防ぐ効果は期待できないようです。

しかし、咳やくしゃみにより勢いよく吐き出される飛沫を正面で受け止めず、横に流すことによる予防効果は期待できるとされています。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

新型コロナウイルス感染症の感染対策としてのマスク着用につき、WHOは指針を修正し、咳エチケットの効用を認める見解を新たに明記。これを受け、米国CDCもマスクの着用を推奨。欧州各国も同じ動きを見せている。布製マスクにも言及しているこの指針を紹介する。

COVID-19流行時のがん治療
継続・延期は主治医と相談を

「がん患者さん向けQ&A」ではもう1点、現在のようにCOVID-19がオーバーシュートと呼ばれるほど国内で感染者が急増し、医療崩壊の危機が叫ばれるまで深刻な状況にあるなかで、
「がん治療はどうすべきか」について、再三触れています。

まず、はっきりしているのは、
「がん治療(薬物・手術・放射線)は延期するべきですか?」
の問いに、ある意味当然ながら、こう答えている点です。
「患者さん一人ひとりにより状況が異なるため、自分で判断せずに、必ず主治医と相談して決定してください」

一方で、現在継続しているがん治療のうち、薬物療法に関しては、
「すべての内服薬や外用薬を30日分確保し、これらの薬が(手元に)なくなる1週間前に処方してもらう準備をしてください」とあります。

おそらくこの答えを読んだ患者は、外出の自粛が求められるほどCOVID-19の感染リスクが高い状況にあるなか、受診のために外出することには抵抗があるだけに、
「どう準備すればいいのか」迷うところでしょう。

オンライン診療には時限的特例措置がとられている

がん患者のような、感染リスクが高く、感染すれば重症化するリスクの高い患者が、医療機関を受診する際にウイルス感染源と接触して感染するリスクを減らす目的で、オンライン診療やオンライン服薬指導を利用しやすくする措置がとられていることはご存知でしょうか。

定期的に受診している患者であれば、直接受診しなくても、電話による再診、もしくはスマートフォンやタブレットなどの情報通信機器を用いたオンライン診療により、これまでと同じ処方を受けられるようになっているのです。

しかも、オンライン診療で医師が発行した処方箋は、患者や家族の手を介することなく、患者のかかりつけ薬局へファクシミリにより直接送付され、その薬局から患者の自宅に処方薬を送り届けることができるようになっています。

患者のかかりつけ医療機関がこのオンライン診療システムを導入していることが条件になりますから、残念ながら、すべての患者が利用できるわけではありませんが、患者にはオンライン診療という方法もあることを伝えてみてはいかがでしょうか。

なお、COVID-19の感染拡大を受けた時限的処置として厚生労働省は、初診からオンライン診療を認める方針を打ち出しています。
詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

普及が進まないオンライン診療が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い注目を集めている。感染すると重症化しやすい慢性疾患患者の受診での感染源接触リスクを防ごうと、定時処方のオンライン診療・服薬指導について、手続きが簡略化され、利用しやすくなっているという話を。

COVID-19を疑っても
いきなり受診しない

がん患者、とりわけ抗がん剤を使用している患者が発熱や咳などの軽い風邪症状を自覚して「COVID-19ではないだろうか」と疑ったとき、あるいは知人が感染していたことがわかり、自分が濃厚接触者*に該当するのではないかと疑うようなときは、すぐに主治医なりかかりつけ医に、ありのままを相談することが大切です。

*濃厚接触者の定義が4月21日変更されている。 COVID-19の確定患者が発症した2日前から接触した者のうち、①その患者と同居、あるいは15分以上の接触(車内、航空機等内を含む)があった者、⓶適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した者、③患者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者、④手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安として1m以内)で、必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者、のことをいう。

とは言え、COVID-19の感染者のなかには、無症候性感染者(無症状病原体保有者)といって、新型コロナウイルスに感染しているにもかかわらず症状がいっさい現れない人が少なからずいることがわかっています。

また、感染してから症状が現れるまでの、いわゆる潜伏期間が、10日以上のケースも稀ではないこともわかっています。

したがって、がん患者自身が「歩く感染源」となって感染を拡大してしまうようなことを防ぐためにも、体調の変化を自覚してCOVID-19の感染を疑った場合でも、いきなりかかりつけの病院やクリニックを受診しないように伝えておきたいものです。

まずは電話やテレビ電話で相談する

まずは電話、もしくはオンライン診療が可能であればテレビ電話により、主治医に、自覚している症状やCOVID-19への感染を疑う出来事などについて相談し、そのうえで医師の指示に従うように伝えておくことが大切です。

相談内容から、かかりつけ医がCOVID-19が疑われると判断した場合は、医師が最寄りの「帰国者・接触者相談センター」、あるいは保健所に連絡して協議し、その結果から、感染の有無を調べるPCR検査を実施するなどの対応につなげることになります。
PCR検査については、こちらの記事を参照してください。

新型コロナウイルス感染患者がPCR検査で「陰性」になり退院した後再び「陽性」になったことが話題になっている。持続感染はありうることなのだが、PCR検査の感度に疑義を持つ声がある。果たしてどうなのか、PCR検査の検体採取法は一つではないことなど、まとめた。

参考資料*¹:「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」