コロナ死の患者と遺族の最後の対面が可能に

カーネーション

診療の手引き第4版に
故人と遺族との対面を追記

厚生労働省は12月4日、新型コロナウイルス感染症で死亡した患者と遺族の最後の対面を可能にすることを新たに盛り込んだ「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」*¹を公開しています。

この手引きは、新型コロナウイルス感染症の2020年12月2日時点における現状を、本手引き検討委員会が平易かつ具体的にまとめ、患者対応にあたる医療従事者が参考にすることを目的に、3月17日に第1版が発行されています。

その後、感染者の増加による症例の蓄積、病態の理解や診断・治療分野における進歩を踏まえ、随時改訂が行われてきました。

今回の改訂では、国内発生状況の更新、妊婦感染例の特徴や症状の遷延(いわゆる後遺症)としての嗅覚障害、呼吸困難、倦怠感、味覚障害などが追記されています。

また、インフルエンザとの鑑別、入院勧告・措置の対象、再感染が疑われたときの注意点が新たに記載されるとともに、検査方法や薬物療法などに関する最新の知見が盛り込まれています。

死後のケアとして遺族に別れの時間を

看護の観点から注目すべきは、「院内感染対策」のなかの「死後のケア」の項に、適切な感染対策を実施することを条件に、遺族らが病室で、遺体となった故人と別れの時間を持つことができるとする記述が加えられている点です。

今回はこの「新型コロナウイルス感染症で死亡した患者と遺族との最後の対面」について、
詳しく見てみたいと思います。

新型コロナで入院中は
家族でも面会は制限される

新型コロナウイルス感染症患者が死亡した後のケアについては、本診療の手引きでは、「死後のケア」の項にまとめられています。

この手引きの第3版までは、「故人の尊厳にも十分配慮する」との記載はあるものの、遺体の取扱い方法、消毒方法、医療施設内で納棺後に搬送する、といった程度の記載にとどまっており、故人と遺族とのお別れに関することは一切触れられていませんでした。

新型コロナウイルス感染症により入院といった事態になれば、感染防止のため、家族と言えども面会は厳しく制限されることになります。

患者の重症度によっては、直接対面での面接はできないまでもオンラインで面会できるように配慮している施設もあるようです。

しかし、そもそも新型コロナウイルス感染症で入院治療の対象*となり、不幸にもその後死の転帰をとるような患者の多くは、映像による家族との最後の対面さえ果たせず、無情にも家族に看取られることもなく死別という事態に直面せざるを得ないのが現状でした。

適切に感染対策を行いながら別れの時間を

今回の改訂により、死後のケアに、
「適切に感染対策を行いながら、病室で別れの時間を設けることもできる」
という一文が加えられたのは、最期に立ち合うこともできず、遺骨となってからしか会えなかったことを悔やむ遺族らの声を受けてのことと考えられます。

*入院勧告・措置の主な対象*²
新型コロナウイルス感染症と診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出る。この届出に基づき、患者に対して感染症指定医療機関などへの入院勧告・措置が行われる。この対象者は2020年10月24日より以下に限定されている。
①65歳以上の者、②呼吸器疾患を有する者、③腎臓疾患、心臓疾患、血管疾患、糖尿病、高血圧症、肥満その他の事由により臓器等の機能が低下している恐れがあると認められる者、④臓器の移植、免疫抑制剤、抗がん剤の使用、その他の事由により免役機能が低下している恐れがあると認められる者、⑤妊婦、⑥現に新型コロナウイルス感染症の症状を呈する者であって、当該症状が重度または中等度である者、等。

遺体に触れる際には
接触感染予防に手袋の着用を

そこで、故人との対面場面で遺族に必要とされている「適切な感染対策」ですが、改めて言うまでもなく新型コロナウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。

このうち、感染者のくしゃみや咳嗽、会話などの際に生じるウイルスを含む飛沫が目や鼻、口などの粘膜に付着したり呼吸器に入ることによって起こる飛沫感染については、遺体からの感染リスクはまずないと考えていいようです。

注意したいのは、ウイルスを含む飛沫などによって汚染された環境表面に触った手で目や鼻、口などの粘膜に触れたりすることにより起こる接触感染です。

この接触感染に関しては、京都府立医大の研究チームが、新型コロナウイルスはヒトの皮膚表面上で9時間程度生存することを実験で確認した旨、報告しています。

遺体からの新型コロナウイルスの感染リスクは、この接触感染に注意することで抑えられるとの判断から、厚生労働省は、サージカルマスク等、通常の感染対策に加え、遺体に触れる場合は、手袋を着用するよう呼びかけています。

なお、故人と最後の対面を行った後、火葬に立ち合ったり、通夜や葬儀などに参列する遺族らに濃厚接触者*に該当する人がいる場合は、氏名、症状の有無、PCR検査実施の有無とその結果の確認を行うことを医療機関に求めています。

*濃厚接触者の定義(2020年4月21日改訂)*³
「患者(陽性確定者)」の感染可能期間(発症2日前以降)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者
▪患者と同居あるいは長時間の接触があった者
▪適切な感染母語なしに患者を診察、看護もしくは介護していた者
▪患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
▪その他、手で触れることのできる距離(約1m)で、必要な感染予防策なしで、患者と15分以上の接触があった者

参考資料*¹:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」
参考資料*²:参考資料*¹のp.23 表3-7
参考資料*³:参考資料*¹のp.19 表3-2