新型コロナの抗原検査、PCR検査、抗体検査




鼻スワブ

感染の有無を迅速判定する
抗原検査キットを薬事承認

新型コロナウイルスへの感染の有無を短時間(15分程度)で調べることのできる「抗原検査」の検査キットが5月13日、厚生労働省から薬事承認されました。

わが国の新型コロナウイルス対策における重要課題の1つである検査の効率化、および検査件数の拡充につながると期待されています。

抗原検査は、ウイルスに含まれる「特徴的なたんぱく質(抗原)」を狙ってくっつく物質を使い、患者から採取した検体中にウイルスがいるかどうか、つまり「今感染しているかどうか」を調べる簡易検査です。

インフルエンザ検査で多くの人が経験しているように、鼻やのどの奥に長めの綿棒を差し込んで採取した粘液、いわゆる鼻咽頭ぬぐい液を検体処理液に浸した後に、その液をキットに垂らすだけで、すぐに結果を知ることができます。
キット上に線が浮かべば陽性、変化がなければ陰性です。

今回薬事承認されたのは、臨床検査薬メーカー「富士レビオ」が4月に申請していた検査キットで、当面、週に20万件分の供給が可能とのこと。
まずは東京、神奈川、大阪、北海道など、感染者の多い地域を中心に使用が始まる見通しです。

抗原検査で「陰性」なら
発症9日目以降はPCR検査で

新型コロナウイルス感染症の診断法、つまり「今感染しているかどうか」を診断する検査法としてすでに使用されているのは、ご存知のPCR検査(Polymerase Chain Reaction test:ポリメラーゼ連鎖反応検査)です。

この検査は、専用の装置(サーマル・サイクラー;高速温度制御装置)でウイルスの核酸を増幅して、「特徴的な遺伝子配列」を検出する方法で行われます。

したがって、PCR検査には専用装置が必要なうえ、判定に4~6時間ほどかかります。
これに対し抗原検査は、検査キットがあれば通常15分、長くかかっても30分もあれば結果がわかるのが大きなメリットです。

結果判定の時間は短いが精度がネックだったが……

ただし、PCR検査に比べ抗原検査はウイルスを検出する感度の低さがネックとされています。
採取した検体に含まれるウイルスの量が少ないと、感染していても「陰性」と誤って判定されてしまう場合もあります。

特に濃厚接触者の場合は、概して検体中のウイルス量が少ないことから、感染していても陽性と判定されずに陰性(偽陰性)と判定してしまい、感染者を見逃すリスクがあります。

このようなすり抜けを防ぐため、厚生労働省は当初、抗原検査で陰性と出た場合は、確定診断のために数時間を要するPCR法により再検査を行う方針を打ち出していました。

しかし、抗原検査の精度を正しく調べた結果、ウイルス排出量が多い発症2日目から9日目であればPCR検査との一致率が高く、信頼できると判断。

厚生労働省は6月16日、発症2日目から9日目の患者であれば陰性の結果が出ても、さらにPCR検査を受ける必要はないと、ガイドラインを変更しています。

厚生労働省は6月2日、発熱などの症状発症から9日以内であれば、検体採取がずっと簡便かつ安全な唾液によるPCR検査法を可能とすることを発表しています。

検体採取時の感染予防に
感染防止策が万全の場所で

抗原検査に必要な検体(鼻咽頭ぬぐい液)は、PCR検査と同じ方法で採取します。
検体を採取する医師や看護師らと被験者が対面で行うことになりますから、採取する際にウイルスが飛散して、医師らが感染を受けるリスクがあります。

そのため「帰国者・接触者外来」や「新型コロナ専門外来」のような、感染防止策が十分とられている医療機関などで行うことが条件となります。

自ずと抗原検査は、発熱や咳などの風邪症状がある人で、医師が新型コロナウイルスの感染を疑い、検査が必要と判断した人に行われることになります。

あるいは、院内感染防止のために、救急搬送されてきた患者や手術前の患者の感染チェック、あるいは高齢者施設内での感染者調査などへの活用も想定されます。

今回承認された検査キットを使えば検査自体はかなり簡便化されます。
しかし、インフルエンザ検査のように、一般のクリニックや外来などで、希望すれば誰でも受けられるというものではありません。

抗原検査の具体的な検査方法や対象者、その評価方法などについては、厚生労働省は、後日ガイドラインにまとめて公表するとしています。

抗体検査キットとして
現存のキットには課題が……

新型コロナウイルスの感染に関する検査には、もう1つ、感染歴、つまり以前に感染したことがあるかどうかを調べる「抗体検査」があります。

これは、感染した後に、免疫反応によって体内に作られるたんぱく質(抗体)の存在を、指先から採血した血液でチェックできる検査方法です。

この抗体検査には、現在多くの検査キットが売り出されていますが、その性能について十分な評価が行われたキットはまだありません。

そこで厚生労働省の新型コロナウイルス対策推進本部は、すでに海外で開発、市販され、新型コロナウイルスの抗体検査に用いられている4種類の検査キットについて、性能を評価する調査を日本感染症学会に依頼しました。

その結果が4月23日、日本感染症学会から発表されています*。
その報告書では、測定結果にキット間の差が大きいことや、血液中の新型コロナウイルス抗体を検出するキットそのものに確定した評価法がないことなどを指摘しています。

そのうえで、いずれの検査キットも、
「感染症の診断に活用するには今後さらに詳細な検討が必要であり、現時点で活用することは推奨できない」として、活用に慎重な見方を示しています。

精度の高い抗体検査キットへの期待

しかし、ワクチンの開発にはまだおそらく年単位の時間が必要とされるなかにあっては、新型コロナウイルス感染からの出口戦略を考えるうえで抗体検査の重要性がいやがうえにも高まってくると言っていいでしょう。

そこで厚生労働省は、抗体の有無を高感度で確認することができ、陰性のものを正しく陰性と判定する、つまり「擬陽性」がゼロであることが保証された2種類の抗体検査薬を、急遽米国の食品医薬品局(FDA)から取り寄せる約束を取り付けています。

すでに出荷準備に入っており、5月下旬から研究用として使用できる見込みとのこと。
これにより抗体検査の更なる検出感度アップが期待できそうです。

ただ、抗体検査が陽性だからといって新型コロナウイルスに終生免疫が得られたわけではありませんから、「私は新型コロナウイルスに耐性ができたから安心!!」とはなりません。

こまめな手洗いや3密を避ける、さらにはソーシャルディスタンシングといった基本的な感染対策をこれまで通り油断なく続ける必要があります。

医師の判断で行われるなら
検査費用の自己負担はゼロ

参考までに、検査にかかる費用の話を――。

新型コロナウイルス感染症の診断に現在活用されているPCR検査は、帰国者・接触者外来などで医師が感染を疑って検査が必要と判断して実施された場合は、公的医療保険の適用となり、検査費用に、患者の負担分はありません。

また、最近は、都道府県が指定する医療機関、あるいは地域の医師会が設置した「地域外来・検査センター」などで検査が行われていますが、ここでの検査も、医師がその必要性を認めて実施した場合には患者負担は発生しません。

同時に、今回薬事承認された抗原検査の検査キットについても、5月13日、中央社会保険医療協議会(いわゆる「中医協)が公的医療保険の適用を決めており、PCR検査同様、医師が感染を疑って実施した場合は患者の自己負担はゼロとなります。

なお、新型コロナが疑われる人が「相談・受診」する目安については、新たな目安が発表されています。詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ PCR検査や相談の新たな目安を厚労省が発表

参考資料*:日本感染症学会「抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キット4種の性能に関する予備的検討」
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kensakit_0423.pdf