アルコール消毒製品の転売規制とその代用品




アルコール消毒液

アルコール消毒製品の品薄に
拍車をかける転売を法的に禁止

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が、5月25日、最初の発令以来7週間ぶりに全面解除となりました。

解除を受けて経済活動を段階的に再開するオフィスや店舗において、感染予防対策上欠かせないのが手指消毒用消毒液などのアルコール消毒製品です。

これらの製品の品薄や品不足により経済活動が停滞することのないよう、品薄に拍車をかけている不正な転売が、5月26日より法律(国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令)により全面禁止となりました*¹。

転売規制の対象となる製品は、「消毒等に使用されることが目的とされるアルコール製品(医薬品、医薬部外品、その他)」です。

販売業者や卸売業者はもちろんですが、個人も、不特定または多数の一般の消費者に、店舗、フリーマーケット、インターネット(SNS含む)等を通じて、仕入れ価格より高値で転売する行為が全面的に禁止となりました。

仕入れ価格を1円でも超える金額で転売したらアウトと厳しく、違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられることになります。

転売禁止となったアルコール消毒製品

具体的には、以下の製品が規制の対象となります。

【医薬品、医薬部外品】
エタノールまたはその含有製品で、消毒、殺菌、除菌、抗菌等に使用することが目的とされているもの(エタノールの濃度に関係なく、わずかでも含まれていれば規制の対象となるが、エタノールを含有しない製品は規制対象外)
▪消毒用エタノール
▪エタノールを含む手指消毒液・ハンドソープ
▪エタノールを含む消毒用タオル
▪エタノール含浸綿(がんしんめん)

【高濃度エタノール含有製品】
医薬品、医薬部外品以外で、濃度60%以上のアルコールまたはその含有製品で、消毒、殺菌、除菌、抗菌等に使用することが目的とされているもの
▪エタノール濃度が60%以上の除菌製品(除菌ジェル、除菌シート、除菌タオルなど)
▪食品添加物(一部のエタノール製剤)
▪酒類(「飲用不可」とうたったスピリッツなど)
▪酒類に不可飲処置を施したもの(塩などの添加物を加えるなどしてそのままでは飲めないようにした酒類)

ちなみに、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、先に衛生用マスクの転売が禁止されていますが、上記法律に基づいて検挙される事例が実際に出ているようです。

手指消毒用アルコールに代えて
石けんと流水で手洗いを

今回転売規制の対象となったアルコール消毒製品については、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、メーカーが平時(2019年1月)の6倍以上の増産を行い、医療機関や介護施設等に優先的に消毒液等を供給する体制を構築しています。

その結果、4月には医療機関などからの要望に対しては、全量を供給できるまでになっているそうですが、市中では、依然としてアルコール消毒製品の深刻な品薄状態が続いています。

こうした事態に、たとえば東京都医師会会長の尾崎治夫氏はラジオ番組に出演した際に、手指消毒用のアルコールがなかなか手に入らない場合は、どこの家庭にも必ずある石けんで代用することを提案し、その方法を次のように説明していました。

「石けんをよく泡立てて、30~45秒しっかり洗っていただくと、せっけんには油を溶かす作用がありますから、ウイルスの表面を覆っている脂肪分、つまり油が溶けることにより、ウイルスは不活化、つまり人に感染できなくなります」

洗い終えた手はよく拭いてからハンドクリームを

グリセリンなどの皮脂保護剤が入っている市販のアルコール消毒液に比べ、石けんは手が荒れやすいという問題が残ります。

この点について尾崎医師は、流水で石けんを十分に洗い流した後、ソフトタイプのペーパータオルなどで水気が残らないようにしっかり拭き取り、その後ハンドクリームなどをつけておけば手荒れの心配はない、と話していました。

アルコール消毒製品の代用に
界面活性剤入り洗剤の活用を

アルコール消毒液の代わりに、台所洗剤など家庭用洗剤の成分である「界面活性剤」にも新型コロナウイルスを不活化する消毒効果があることが、経済産業省の要請に応じNITE(独立行政法人製品評価基盤機構)が行った実験により確認されています*²。

界面活性剤とは、界面(物質の表面)に作用して、界面の性質を変える物質のこと。1つの分子内に親水性(水になじみやすい)と親油性(油になじみやすい)という2つの部分を合わせもっていて、本来混ざり合わない水と油を混ざるようにする性質により、新型コロナウイルスの表面を覆っている「エンベロープ」という膜を壊し、ウイルスを不活化させる効果が期待できるというわけです。

実験で消毒効果が確認されたのは、以下5種類の界面活性剤です。
⑴ 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
⑵ アルキルグリコシド(0.1%以上)
⑶ アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
⑷ 塩化ベンゼルコニウム(0.05%以上)
⑸ ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)

家庭用洗剤で身近な物の消毒を
ポスターで呼びかける

品薄が続いているアルコール消毒薬の代わりに上記界面活性剤を含む家庭用洗剤を消毒に活用してもらいたいとして、「ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょう」と呼び掛けるポスターを作成し、WEBサイトで公開しています*³。

同時に、効果が確認された界面活性剤が使われている住宅・家具用、浴室用、トイレ用、台所用洗剤のリストも作成し、同じくWEBサイトで公開しています*⁴。

使用に際しては、それぞれの製品に記載された使用方法に従い、使用上の注意を守り、ドアノブや机、ソファなど、身近なものの消毒に利用してほしいとしています。

またポスターでは、リストにある「住宅・家具用洗剤」が手元にない場合は、界面活性剤を含む台所用洗剤を水で薄めて溶液を作り、キッチンペーパーや布などに染み込ませて、ドアノブなどの表面を拭き取る方法で消毒に使うこともできるとして、その方法を紹介しています。

その際は安全上の注意として、手指や皮膚の消毒には使わないよう求めているほか、スプレーボトルでの噴霧も避けてほしいとしています。

NITEは、「次亜塩素酸水」などについても消毒効果の検証を進めていて、この先順次、結果を公表するそうです。

参考資料*¹:国民生活安定緊急措置法施行令の改正について
参考資料*²:新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します
参考資料*³:ポスター
参考資料*⁴:有効と判断された界面活性剤を含む家庭用洗剤のリスト