「かかりつけ医」との協働が欠かせない時代です




かかりつけ医

そもそも「かかりつけ医」は
「主治医」と何がどう違うのか

地域包括ケアシステムの時代にあって、「退院時カンファレンス」や「地域ケア会議」において、また「訪問看護指示書」の交付にも「かかりつけ医」との協働が欠かせなくなっています。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の取り組みに至っては、かかりつけ医の積極的なリーダーシップが求められています。

先日は、もしものときに心肺蘇生を望まないという意思表示をしている患者への救急隊の対応について記事を書きました。
そこでもかかりつけ医の判断で対応が決まるという話を紹介しました。

在宅療養中の患者が急変すると、家族は慌てて119番通報する。要請を受けて出動した先で患者が心肺停止の状態にあれば、救急隊は即座に心肺蘇生にとりかかる。が、これを家族が本人の意思を理由に拒むことがある。このようなときに救急隊員がとる対応についてまとめた。

こうした流れもあり、このところ「かかりつけ医」という文言をよく見聞きします。
そんな折、ある一般の方から「かかりつけ医というのは、私たちが主治医とか担当医と呼んでいる医師とどう違うのですか」と、尋ねられました。

漠然とはわかっているものの、きちんと説明しようとすると一瞬言葉に詰まります。
そこで今回は、この「かかりつけ医」をテーマに、「かかりつけ医機能」と呼ばれるその役割を中心に書いてみたいと思います。

かかりつけ医には
予防も含めなんでも相談できる

■かかりつけ医の定義
かかりつけ医については、2013年8月8日、日本医師会と四病院団体協議会*が合同で「医療提供体制のあり方」に対して出した提言*¹のなかで、
「なんでも相談できるうえに、最新の医療情報を熟知し、必要なときには専門医や専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」
と定義しています。
*四病院団体協議会とは、民間病院を中心とする全国組織の病院団体の連合会のこと、通称「四病協」。

ここにある「なんでも相談できる」というのは、
「健康に関することであれば、予防も含め、診療科の別なくなんでも気軽に相談できる」
ことを言い、この点において主治医や担当医とは一線を画す、と理解することができます。

■「かかりつけ医機能」の定義
また、この提言では、かかりつけ医が積極的に果たすべき機能(以下「かかりつけ医機能」)として、以下のように定義しています。

  1. 日常診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療および保健指導を行う。
    その際、自らの専門性を超えて診療や指導を行えない場合は、地域の医師や医療機関などと協働して解決策を提供する
  2. 診療時間外であっても患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関などと必要な情報を共有するとともに、密に連絡を取り合い、協働して休日や夜間も患者からの要請に対応できる体制を構築する
  3. 日常診療以外にも、あらゆる機会をとらえて地域住民との信頼関係の構築を心がけ、健康相談、健診・がん検診、母子保健、地域保健など、地域における医療を取り巻く社会的活動や行政活動に積極的に参加する。
    同時に、それらの活動にかかわる保健・介護・福祉関係者らとの連携を密に行う。
    また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する
  4. 患者や家族に対して、医療に関して、適切かつわかりやすい情報提供を行う

都道府県医師会が実施する
「かかりつけ医機能研修制度」

かかりつけ医については、いざというときに慌てないために、またより適切な医療・ケアサービスを受けるために、厚生労働省も日本医師会も、元気なうちからかかりつけ医を決めておくことを広く一般にすすめています。

2025年を目途に、国の主導のもと急ピッチで整備が進められている地域包括ケアシステムも、中心的な役割を期待されているのはかかりつけ医と言っていいでしょう。

とはいっても、前記のような「かかりつけ医機能」は、医師であれば誰もが一朝一夕にマスターできるというものではありません。

そこで日本医師会は、かかりつけ医に期待されるさまざまな役割を存分に担うことにより、地域住民に信頼される医師を増やそうと、2016年4月から都道府県医師会が実施主体となり
「かかりつけ医機能研修制度」を新たにスタートさせています。

この研修制度では、①患者中心の医療の実践、②継続性を重視した医療の実践、③チーム医療、多職種連携の実践、④社会的な保険・医療・介護・福祉活動の実践、⑤地域の特性に応じた医療の実践、⑥在宅医療の実践、を「かかりつけ医機能」としています。

かかりつけ医機能研修修了者は
都道府県医師会によっては公表も

日本医師会のホームページで紹介されているその研修内容を見てみると、「在宅医療・緩和医療」「感染対策」「メタボリックシンドロームからフレイルまで」「医療保険と介護保険」「認知症とポリファーマシーと適正処方」「摂食嚥下障害」「栄養管理」「医療倫理」等々、カバーする範囲はかなり広範囲にわたっています。

研修では座学に加え、実地試験として学校医や産業医として、あるいは地域の健康診断医を引き受けたり、訪問診療を行うことなども求めています。

申請後の3年間に決められた要件をすべて満たした医師には、都道府県医師会から研修修了証書、あるいは認定書(有効期間3年間)が発行されます。

各都道府県医師会から発行されたかかりつけ医機能研修修了証書あるいは修了認定証は、在籍する医療機関に掲示することが認められていて、患者や医療・福祉領域の他職種が医療機関やクリニックを訪れる際に参考にできるようになっています。

また、都道府県の医師会によっては、たとえば栃木県医師会群馬県医師会のように、研修修了者が在籍する医療機関名、あるいは修了者名をホームページで紹介している医師会もあります。最寄りの医師会のホームページをチェックしてみてはいかがでしょうか。

なお最近では、かかりつけ医による慢性疾患患者に対するオンライン診療が、徐々にですが普及し始めています。詳しくはこちらの記事を参照してみてください。

普及が進まないオンライン診療が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い注目を集めている。感染すると重症化しやすい慢性疾患患者の受診での感染源接触リスクを防ごうと、定時処方のオンライン診療・服薬指導について、手続きが簡略化され、利用しやすくなっているという話を。

参考資料*¹:「医療提供体制のあり方」ー日本医師会・四病院団体協議会合同提言(pdf.)