退院支援で気づかされる
意外と知らなかった訪問看護のこと
入退院支援を担当している看護師さんから、「看護職間での連携の大切さを改めて痛感させられるケースが増えている」という話を、このところ何度か聞かされました。
聞いた当初は、医療的なケアを必要とする状態で在宅療養に移行する患者が増加傾向にあるということだろう、といった程度の理解で終わっていたのですが、よくよく聞いてみると、ことはそう簡単ではないようです。
患者に退院後も医療的ケアが必要ということになれば、訪問看護につなぐことになります。そこで、訪問看護師との連携が必要と判断はしたものの、さてどう連絡をとり、どのようなかたちで話をもっていこうかと考えたとき、同じ看護職でありながら訪問看護や訪問看護師のことを意外とわかっていなかったことに改めて気づかされたと言うのです。
そこで、退院支援において訪問看護師と連携するうえで知っておきたい基礎知識のうち、今回は訪問看護を利用するまでの流れとして、どのような条件が揃えば訪問看護サービスを利用できるのか、利用できる頻度や時間などについて整理してみたいと思います。
訪問看護を知り活用してほしいと
訪問看護師らがまとめた冊子
訪問看護については、これまで硬軟合わせ数多くの書籍類が刊行されています。そのなかで退院支援を担う看護師さんに手引き書としてお勧めしたいのが、在宅医療助成勇美記念財団「在宅医療と訪問看護のあり方検討会」(委員長:佐藤美穂子日本訪問看護財団常務理事)がまとめた『「訪問看護」活用ガイド―在宅医療を始める方へ 改訂版』*¹です。
当冊子の「はじめに」のなかで筆者らは、在宅医療をスムーズに行う一つの方策として「訪問看護を知ってもらい、活用してもらうこと」を念頭にまとめた、と記しています。
また、病院や診療所の医師、看護師、退院支援看護師、ケアマネジャーら在宅ケア関係者に、「訪問看護を利用することで、どれだけ利用者が望むように過ごせるか」を知ってもらうために事例を取り上げている、とも書き添えています。
ちなみに、A4版68ページにまとめられているこの冊子は、ダウンロードして活用できるようになっています*¹。まずはクリックして、一度目を通してみてください。
また、この冊子の最終ページには、「ファックスまたはE-mailでお申し込みください(冊子は無料)」ともありますので、取り寄せる手もあります。
訪問看護が継続して必要なら
誰もが訪問看護を利用できる
訪問看護をざっくり言えば、医療ニーズはもちろんですが生活面のニーズにも、基本的には24時間365日欠かすことなく対応して在宅療養を支える訪問サービスです。
しかも、さまざまある在宅サービスの多くは利用上満たすべき要件が厳しく定められているのですが、訪問看護はその制限があまり厳しくないのが特徴です。
退院支援の場合で言えば、退院支援看護師が患者の病状や自立度などから、患者が退院後に在宅療養を続けていくには訪問看護を利用する必要があると判断し、主治医もそれに同意して「訪問看護指示書」が発行されると、基本的にはそれでOKです。
たとえば、退院後の2、3日だけの一時的な利用ではすんなりとは認められないようですが、継続的に訪問看護が必要な状態にあると判断されれば、病気の種類や年齢、家族状況などとは一切関係なく、希望する人は誰もが利用できるようになっています。
医療保険による訪問看護の利用には
利用時間や回数に制限がある
では訪問看護の利用にはいっさい制限がないのかというと、そうではありません。訪問看護は、介護保険サービスの一環として利用することが勧められていますが、医療保険で利用することもできるようになっています。
介護保険で訪問看護を利用する場合は、まず要介護認定を受ける必要があります。そのうえで認定を受けた要介護度に応じて、ケアプランに組み込まれる範囲であれば利用制限はなく、1日に複数回、毎日でも、1人の訪問看護師から訪問看護を受けることができます。
一方、医療保険で訪問看護を利用する場合には、ちょっと厄介な利用制限があります。基本的には、「1日1回(30分から1時間30分程度)、週3回まで、1カ所の訪問看護ステーションから、訪問看護師1人で対応」が原則となっています。
原則に縛られずに訪問看護を利用できる3つのケース
ただし、以下3つの特別な場合は、この基本的な利用制限が外され、「週4回以上、ただし1日3回まで」利用できるようになっています。
- 「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合
- 「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する特別管理加算の対象者
- 主治医から「特別訪問看護指示書」が発行された場合
まず「1」の「厚生労働大臣が定める疾病等」には、末期の悪性腫瘍や重症筋無力症、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患、人工呼吸器を使用している状態(睡眠時無呼吸症候群における口鼻マスク使用の場合は除く)などが入っています(先の冊子P.17参照)。
「2」の「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する特別管理加算の対象者には、気管カニューレもしくは膀胱留置カテーテルを使用している患者や人工肛門または人口膀胱を設置している患者、在宅酸素療法や在宅中心静脈栄養法を受けている患者、さらには真皮を越える褥瘡の状態にある患者などが入ります(先の冊子P.63参照)。
特別訪問看護指示書があれば退院直後から2週間は毎日利用可
「3」の「特別訪問看護指示書」は、以下のいずれかに当てはまる場合に限り、主治医が発行することができます。この指示書があれば、退院直後から2週間は基本的な制限に縛られず、毎日でも訪問看護を利用できます(書式は先の冊子P.53参照)。
- 肺炎や心不全などの急性増悪
- 疾病にかかわらず終末期であること
- 退院直後であること
以上の基本を踏まえたうえで、訪問看護の利用が必要と判断した患者の居住地にある訪問看護ステーションと連絡をとることになります。
なお、関連記事としてこちらも読んでみてください。
参考資料*¹:「訪問看護」活用ガイド―在宅医療を始める方へ 改訂版(2023年1月26日に新版が刊行されています。ご希望の方はこちらへ)