看護師と「地域包括ケアシステム」の構築




地域包括ケアの構築

「地域包括ケアシステム」
看護師の理解度は?

日本で最大級とされる医療従事者専用医療情報サイト「m3.com」編集部は、今年(2017年)5月8日-5月11日の4日間、医師会員を対象に、「医師と地域・多職種連携の在り方」をテーマにアンケート調査を実施しています。

この調査結果の第一報が6月6日、第二報が8月25日に紹介されています。
アンケートに回答した医師は706人で、そのうち日本医師会に加盟している医師が490人、216人が非加盟とのことですが、その回答結果を見て、少々意外な印象を受けました。

■地域包括ケアシステムとは
ところで、厚生労働省の地域包括ケア研究会は2013年3月、「地域包括ケアシステム」関する報告書をまとめています。
このなかで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい生活を人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・生活支援・介護予防が一体的に提供される支援・サービス体制として、地域包括ケアシステムを2025年を目途に構築すると説明しています。

同時に、システム構築の大前提に、当事者の意思、選択があることを明記しています。
すなわち、たとえば要介護状態にあるからと病院に入院したり施設へ入所したりするのではなく、在宅で生活することの意味を、高齢者自身と家族が理解して主体的に選択し、そのための心構えを持つことが重要であるとしているのです(厚生労働省資料:地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」参照)。

このような、国が打ち出している地域包括ケアシステムの考え方とその仕組みについて、看護師のあなたはどの程度理解したうえで、高齢者にかかわっているでしょうか。
特に、訪問看護や退院支援・退院調整に携わっている看護師さんは、いかがでしょう。

「地域包括ケアシステム」の概念を
医師の36.5%が理解していない

さて、医師を対象に行われた調査結果をみると、地域包括ケアシステムの「詳しい仕組みまで理解」していると回答した医師は11.6%、「概念は理解」しているは51.8%です。
トータルすれば6割を超える医師が、必ずしもケアシステムの詳細までは理解できていないものの、これからの地域ケアの方向性は理解できていることがうかがえます。

その一方で、32%が地域包括ケアシステムの「言葉は聞いたことがあるが、概念はわからず」と回答し、4.5%の医師が「言葉を聞いたことがない」と回答しています。
トータルすると、調査に参加した医師の36.5%、少なく見積もっても3人に1人が、地域包括ケアシステムの考え方自体を理解していないことになり、これは少々驚きの結果です。

■大学病院勤務の医師の理解度が低い
アンケート調査は、回答した医師の属性別に分析も行っています。
たとえば勤務先別では、「詳しい仕組みまで理解」している医師の割合が最も高かったのは診療所医師で14.4%、次いで公立病院勤務の医師が13.5%、民間病院勤務11.7%、公的病院勤務7.5%と続き、最も低かったのは大学病院に勤務する医師で4.2%でした。

大学病院に勤務する医師については、39.4%が地域包括ケアシステムの「言葉は聞いたことがあるが、概念はわからず」と回答していました。さらには8.5%が「言葉を聞いたことがない」と回答しているのには、いささか驚ろかされます。

国がその方向性を示し、各自治体レベルで、構築に向けた取り組みがすでに始まっている地域包括ケアシステムについて、理解できていない医師がこんなに高率に存在しているという事実は、訪問看護師さんや退院支援・調整に取り組む看護師さんの目にどのように映るでしょうか。

地域包括ケアシステム構想が打ち出されて5年余り。全国の市区町村で地域にふさわしい独自の取り組みが進むなか、課題も見えてきた。看護職ら医療関係者に関しては、コミュニケーションをとりにくいとの指摘が他職種から出ている。どういうことなのか探ってみた。

現行の退院支援・調整に
6割の医師が「問題あり」と認識

今回の調査では、「病院から退院して在宅医療に移行する際、退院支援・調整で問題を感じることがありますか」という質問も設けてありました。
これに対する回答状況が、m3.com8月25日のサイトで紹介されています。

この質問には、調査に回答した医師706人の半数を少し超える58.9%が、問題を感じることが「ある」と回答しています。
これを回答医師の勤務先別で見ると、最も多かったのは入院中の患者を地域に送り出す側の大学病院勤務の医師で70.4%でした。

これに対し、問題を感じることが「ある」との答えが最も少なかったのは、病院を退院して在宅生活に移行する患者を託される立場の診療所医師でした。
ただ、ランキングで見れば少なかったものの、半数近く(46.7%)が「問題あり」と考えていることが明らかになっています。

■退院後訪問指導に無関心、不熱心?
その診療所医師が、退院支援・調整に「問題を感じている」点としてあげていたのは、おおむね次のような点です(順不同)。

  • 医療機関が在宅医療の現状を理解せず、無理な要求をしてくることがたまにある
  • 事前の調整がないまま、退院後に、一方的に書類を送ってくるだけの事例があり、そのような場合はすぐ入院に戻る例が多い
  • 患者の退院後の生活に無関心、あるいは不熱心な医療機関がある
  • 自宅で看取る覚悟があるかどうか、はっきり説得も説明もできない病院関係者が多い
  • 開業医は病院医師のようにスタッフを多く抱えているわけではないことを、理解できていない病院関係者が多い
  • 入院先の病院の都合が優先されがち
  • 病院側のスタッフが患者の退院後の生活をイメージできていない。在宅でも病院と同じ医療が受けられると思っている

このほか、「多職種との連携」に「問題を感じている」点として、ケアマネジャーなど介護領域スタッフの「病気」や「医療」に関する知識の乏しさを指摘する声が目立っています。
また、「行政の作った枠組みを無理に当てはめて、患者・家族に無茶を求めるスタッフが多い」といった声もあげられていました。

以上の調査結果は、m3.com2017年6月6日のサイトとm3.com8月25日のサイトでそれぞれ詳しく紹介されていますので、関心のある方は是非読んでみてください)。

なお、ここで3点目に指摘されている「患者の退院後の生活」を自分の目で見て、入院中の支援の修正などを行うことのできる退院後訪問指導については、こちらの記事で詳しく書いています。参考にしていただけたら幸いです。

退院して自宅に戻った患者のことが気になっている、との看護師さんの声をよく聞きます。退院後の生活に向けてあれこれ指導してきたがあれでよかったのか。伝えたことがきちんと実践されているだろうか、等々。そんな方は「退院後訪問指導」制度の活用を!!