乳がん発症リスクを下げる食生活




植物性トリプトファン

乳がん発症リスクと
睡眠ホルモン「メラトニン」

病棟勤務や介護施設等、24時間稼働している場所で働いている看護師さんは、夜勤が避けられませんが、看護師さん以外でも、夜間勤務に就く女性は最近は増えています。

この、女性の夜勤と乳がん発症の関連性を検証した研究で、
「夜間勤務は乳がん発症リスクを高める可能性がある」
との結論が出ていることを先に記事にしました。

「女性の夜間勤務は乳がんの発症リスクを高める」との雑誌記事を読んだのをきっかけに、そのエビデンスを探ってみた。日本乳癌学会の疫学調査によるエビデンス検証によれば、可能性があるとのこと。あながち否定できないからには、リスクを踏まえた予防的行動を。

この、夜間勤務が関係する乳がん発症リスクを最大限回避する手立てを探る研究が重ねられるなかで、そこには、睡眠に深く関係している「メラトニン」と呼ばれるホルモン物質が深く関係しているという仮説が、なんと1980年代という早い時期に報告されています。

脳内でのメラトニンの分泌は、目から入ってくる光(太陽光)により調節されています。
夜になり辺りが暗くなってくるとメラトニンの分泌量が増え、心身の休息と回復を担っている副交感神経が優位になってきます。

夜間勤務していると、これとは真逆の環境に身を置いていることになります。
そのためメラトニンは十分量分泌されず、交感神経が優位な状態に身を置いていることになり、このことが乳がんの発症に関係しているというわけです。

乳がん発症因子「メラトニン」と
食事で摂る「トリプトファン」

そこで、夜間起きて勤務についているために分泌量が減少傾向にあるメラトニンの、脳内における生産量を増やしてその濃度を上げることができれば、乳がん発症リスクの低減が期待できるはずだと考えられるようになってきました。

その方法はいくつかあるのですが、最も手軽で、しかも誰でもできるのは、毎日の食事によってメラトニンを増やすという方法です。

脳内、正確には脳細胞内に存在するメラトニンは、やはり脳内の神経伝達物質である「セロトニン」から作られます。
うつ病や抑うつの原因として注目されることの多い、あのセロトニンです。

セロトニンの原料となっているのは、必須アミノ酸の一つ、「トリプトファン」です。
トリプトファンは、体内で十分な量を合成することができないアミノ酸です。
そのため、毎日の食事から、コンスタントに体内に取り込んでいく必要があります。

トリプトファンは
動物性より植物性食品から

トリプトファンは、たんぱく質を多く含む食品に含まれています。
たんぱく質には、肉や魚、卵、チーズなどに含まれる動物性たんぱく質と、豆腐や納豆、味噌などの大豆食品に含まれる植物性たんぱく質があります。

忘れられがちですが、ゴマ類やナッツ類、およびバナナやアボカドなどの果物類にも植物性たんぱく質が多く含まれています。

たんぱく源としてとっさに頭に浮かぶのは、動物性のたんぱく質、それも鶏肉、豚肉、牛肉などの食肉類ではないでしょうか。
実際のところ、私たちのたんぱく源は動物性、それも肉類に偏っていることを実証した研究報告もあります。

ところが、脳内でセロトニンの原料として利用されやすいのは、動物性ではなくむしろ植物性たんぱく質のほうだと考えられています。

乳がん発症リスクと
植物性トリプトファン

その理由は、なかなかややっこしいのですが概ねこんな感じです。
食事で摂取したたんぱく質が分解・吸収の過程を経て、トリプトファンとして血液中から脳内に取り込まれるには、まず「血液脳関門」を通過しなくてはなりません。

血液脳関門は、脳にとって有害な物質をブロックするバリア機構です。
と同時に、アミノ酸のような脳の活動に有益な物質であっても、血液中から脳内へ一度に輸送できる量を制限する働きもしているのです。
たとえてみれば、海外旅行の際に必ず通る検疫所のようなものです。

血液中のトリプトファンがこの関門を効率よく通り抜けるには、同時に関門を通過しようとするさまざまな競争相手をできるだけ少なくして、トリプトファンの取り込みが増えるようにすることが大切です。

この競争相手を少なくするという点からみて、動物性より植物性たんぱく質のほうがより効果的というわけです。先に記したバナナやアボカドなどの果物類に加え、豆乳 なども、手軽に飲めることからも理想的な一品です。

また、飲酒時の従来のおつまみやコーヒータイムのお菓子に替えて丹波黒しぼり豆 カシューナッツ などをつまむのも血液中のトリプトファンを増やすことにつながります。

最近では、豆腐や納豆以外にも、野菜に大豆をおからまで丸ごと使ってブレンドしたカゴメ野菜生活Soy+(ソイプラス)やおやつで手軽に植物たんぱく質をとってもらえるように商品化されたというビスケットギンビス アスパラガスプロテイン グリコ 植物生まれのBigプッチンプリン など、植物性たんぱく質がとれる食品が数多く市販されていますから、上手に活用するといいでしょう

トリプトファンの輸送に必須の炭水化物も

トリプトファンが血液から脳への関門をスムーズに通過するためには、他の物質の手助けが必要です。その強力な助っ人となるのが、インスリンです。

看護師さんにインスリンに関する説明は不要だと思いますが、炭水化物を摂取して血糖値が上がると分泌される、あのインスリンの筋肉合成作用が、二次的に、先の競争相手を減らす役目を担い、トリプトファンが脳内に取り込まれるのを手助けしてくれているのです。

とかく炭水化物は、ダイエット志向の方には嫌われがちです。
しかし、炭水化物も重要な栄養素であり、必要なものなのです。

乳がん予防には
大豆やバナナなど植物性たんぱく質を

結論としては、豆腐、納豆、豆乳といった大豆製品と、バナナやアボカドなどの果物を中心に、バランスのとれた食事を心がけることをおすすめします。

とはいえ、夜勤などで食事が不規則になりがちで、朝食抜き、コンビニランチになることも多く、食事からの摂取だけではどうも心細いというも少なくないでしょう。
そんな方には、麻の実(種)を丸ごとつぶして粉末にしたナチュラル ヘンププロテインを上手に活用されるいいでしょう。純植物性たんぱく質の粉末ですから、水や豆乳、野菜ジュースなどに混ぜて飲むだけで、トリプトファンを補給できます。

なお、アメリカでは、メラトニンの栄養補助食品やサプリメントが売られています。
日本では薬事法の規定により、原則として輸入・製造・販売が禁止されているのですが、インターネットで取り寄せている人もいるようです。
その是非については、個人の判断にお任せするしかないのが現状のようです。

MEMO:乳がん治療・ケアに関する書籍情報
看護師さん自らの乳がん予防はもとより、がん看護の現場で乳がん患者の対応に役立つ書籍として、日本乳癌学会の編集による『患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2019年版が、2019年7月18日に金原出版より刊行されています。乳がん患者やその家族から寄せられる質問のなかから64を厳選し、日々乳がん診療・看護に携わっている医師、看護師、薬剤師らがQ&A形式で丁寧に解説しています。関心のある方は是非一度目を通してみてください。