便秘ケアにガイドラインの活用を




食物繊維

看護に生かしたい、
「慢性便秘症診療ガイドライン」

わが国では、高齢化率が上がる一方です。
それに伴い看護師のみなさんは、日常の看護場面で、高齢患者を中心に「便秘のケア」を求められることが日増しに多くなっているのではないでしょうか。

これまで便秘については、日本内科学会が「3日以上排便がない、または毎日排便があっても残便感がある場合」と説明してはいるものの、はっきり病気としてみなして、きちんと診断基準などを示してきたわけではありません。

そのため、頑固な便秘に悩まされている患者が医療機関を受診しても、効果的な治療を受けられず、市販の下剤や漢方薬、あるいはサプリメントなどに頼らざるを得ないというのが大方の実情でした。

看護師さんもまた、入院患者や在宅療養中の患者の長引く便秘への対応に、試行錯誤しつつ取り組んではみるものの、なかなかめぼしい効果が得られず、日々苦慮されるようなことも珍しくないのではないでしょうか。

こうした現状を何とかして改善しようと、消化器内科の医師を中心とする研究グループが、高齢者に特に多い慢性的な便秘をいかに診断し、より効果的な治療につなげていくかについて、数年にわたり検討を重ねてきました。

その結果がまとめられ、この10月3日(2017年)、便秘に関しては日本初となるガイドライン『慢性便秘症診療ガイドライン2017』(南江堂)として刊行される運びとなりました。

看護師も知っておきたい
ガイドラインでの「便秘症」の定義

ところで、人知れず悩む人が多いといわれる便秘ですが、果たしてその実態はどの程度把握されているのでしょうか。

少し前のデータになりますが、厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査」によれば、便秘に悩んでいる人は60歳までの年齢層では男性よりも女性が多いものの、その後加齢とともに男性の有病率が増加し、80歳以上では男性が女性を上回るという結果になっています。

推計すれば、便秘に悩む日本人は1000万人を優に超えるものとみられています。
ただし、「自分は便秘だ」と訴える、あるいは便秘症だと自覚していても、そのなかには下痢型の過敏性腸症候群のような病気による排便障害のケースもあり、便秘の実態を正確に把握することは容易ではないのが実情でした。

こうした現状を憂慮して、この度作成されたガイドラインでは、便秘を「本来なら体外に排出すべき糞便(ふんべん)を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義。
この定義のもとにガイドラインは、大腸がんなどの病気による大腸の形態的変化を伴わないもので、排便困難や残便感が続いていて日常生活に何らかの支障が出ている状態を「便秘症」と呼び、排便回数や便の性状(外観)、腹部症状の有無を把握し、必要な検査を合わせて行いながら治療していく、としています。

ちなみにここでいう「排便困難」とは、排便回数や排便量が少ないために糞便が大腸内に滞っている状態であり、「残便感」とは、直腸内にある糞便を十二分に排出できていない状態、とそれぞれ説明しています。

便秘診断上重要な要因となる
便の性状観察

ガイドラインに沿って便秘を診断し、治療していくうえで、排便回数以上に重要な判断材料となるのが便の性状(外観)です。

これについては、外来患者であれば、「便はどのようなかたちをしているのか」を患者自身、あるいは家族から情報を得るしかないでしょう。
しかし、入院患者や在宅療養中の患者の場合は、やはり看護師さんや訪問看護師さんの観察に期待がかかることが多くなってくるのだろうと思います。

看護師さんはすでにご存知と思いますが、一般に便の性状は、形状と硬さで評価する「ブリストルスケール」の分類で7タイプ(段階)に分けられます。
ガイドラインはこの分類で、タイプ1の「硬くてコロコロしたウサギの糞のような便」とタイプ2の「ソーセージ状をしているが硬い便」を便秘の便としています。

ちなみにブリストルスケールでは、タイプ3は「表面にひび割れのあるソーセージ状の便」、タイプ4は「表面がなめらかで、軟らかいソーセージ状の便」、タイプ5は「軟らかい半分固形状の便」、タイプ6は「形のない泥状の便」、そしてタイプ7は「固形物を含まない水様の便」となっています。
このうちタイプ4を最も健康的な便と規定し、タイプ3~タイプ5が正常範囲の便、タイプ6とタイプ7は下痢の便と判断されることになります。

排便時の姿勢もチェックして
完全排便を目指す

慢性的な便秘のケアといえば、看護師さんがまず思い浮かべるのは「腹部を温罨法したり、腹壁マッサージをしたりして腸の蠕動運動を促す」ことでしょうか。
加えて最近は、このところ看護師さんの間で徐々にですが認知度が高まっていると聞く「リフレクソロジー」も、腸蠕動を促す方法として、活用されているようです。

これらのケアを行っても効果がみられない場合は、浣腸や坐剤の利用、さらには摘便なども検討されることでしょう。
あるいは予防の観点から、「適切な食事と運動」など、生活習慣を見直して必要な指導を行うことに取り組む看護師さんも多いことでしょう。

いずれも保存的アプローチですが、ガイドラインも、治療の基本は、酸化マグネシウムなどの緩下剤による内服療法をはじめとする保存療法にあるとしています。
そのうえで、いくつか具体的な治療法をあげて、それぞれのエビデンスレベルをもとに、推奨度を「1 強い推奨」か「2 弱い推奨」で表しています。

そこで、先ほどの温罨法やマッサージ、リフレクソロジー、食物繊維の摂取をすすめるなどの生活面での指導について見てみると、ガイドラインでは、これらはいずれも科学的根拠のレベルは低いとして、積極的に進めるほどではない「弱い推奨」にとどめています。

ただ、エビデンスレベルや推奨度は一段低くなっているものの、コストがかからず副作用もないことから、「やらないよりもやったほうがいい」とのこと。
とはいえ、そうしたケアだけで、ブリストルスケールのタイプ4に相当する便の完全排便を望むのはなかなか難しく、やはり内服薬と併用するのがいいようです。

ガイドラインを読んでいて、排便しやすい姿勢について改めて考えさせられました。
慢性的な便秘は高齢者に多く、腹圧をかけやすく排便しやすいとされる、たとえばロダンの彫刻にある「考える人」のような姿勢をとることは容易でない病状の患者が多く、そのことが便秘をさらに長引かせ、深刻化させているように思います。

排泄介助をする際は、消化・吸収の過程を経て不要になった糞便が体外に送り出される解剖学的な経路と、送り出す腹圧、つまりいきむということを考えながら、できるだけその排出を助ける姿勢をとってもらえるような支援を行うことも、看護師さんならではのケアだと思うのですが、いかがでしょうか。

幸い最近は、洋式のトイレにトイレサポート トイレスムーズ のような踏み台を活用することで、腹圧をかけやすい姿勢で排便を試みることができるようになっていて、頑固な便秘で悩んでいる人の間で静かな人気を集めているようです。