離床支援にマルチポジションベッドの活用を




ベッド

腰痛の原因となりがちな
離床支援に強力な助っ人

術後の早期離床や褥瘡予防、廃用症候群の予防などに向けた離床支援は、診療科の別なく、また入院中の患者はもちろん訪問先の在宅患者や高齢者施設の入所者等々、さまざまな場面で繰り返し行われていることと思います。

病室や集中治療室などであれば、何人かのスタッフに声をかけてチームを組み、「1、2の3」などと力を合わせて行うこともできるでしょう。

しかし、訪問先での離床支援となると、仮に家族などの手助けがあったとしてもとても大変で、
「腰を痛めるいちばんのきっかけではないかしら……」
などと、訪問看護師の友人から聞いたことが一度ならずあります。

先日、その友人からの電話で、こんな話を聞くことができました。

寝たきりに近い状態が3か月近く続いていた患者が、ベッドを取り替えただけで、数日後にはベッドサイドに坐った姿勢で、1人で食事をすることができるようになった――。

電動ボタン一つの操作で
寝起きが安全かつ簡単に

そのベッドとは、このところ在宅ケアの現場で話題になっている、
「マルチポジションベッド」とのこと。
フランスベッド社が今年(2020年)5月に売り出したばかりの製品です。

この時期が、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令されたさなかだったことが影響したのでしょうか。
新製品売り出しのキャンペーンはかなり控えめだったようです。

それでも、「ボタン操作で寝起きが安全かつ簡単にできる凄いベッドをテレビCMで見た」
といった声を何軒かの訪問先でちょくちょく耳にしていた友人は、実際にそのベッドを初めて目にしたときは、その予想以上の万能さに驚いたそうです。

「ボタン一つの操作で、ベッド上で坐位をとれるだけでなく、ベッドサイドに腰掛けることも、また立ち上がることもできるから、車イスへの移乗も簡単にでき、介護している家族はもちろんのこと、ケアする私たちも負担が大幅に軽減される」と――。

ベッドがイスになり、
立ち上がりも助けて離床へ

友人をいたく感動させたこのベッドは、正式名称を「離床支援 マルチポジションベッド」と言います。略称「マルポジ」とのこと。

ここにある「離床」とは、文字どおり「床を離れる」ことです。
ベッド上など寝床の上で生活していた人が、ベッドから徐々に離れて立ち上がり、そして歩くようになっていく過程を指すことはご承知でしょう。

「離床支援」という名のとおり、このベッドは、
「ベッドがイスになって、さらに立ち上がりまでできる。
マルチなポジションを取れるベッドだから、マルチポジションベッド」
と説明されています。

百聞は一見にしかず、まずは商品説明の30秒動画をご覧ください(コチラ)。
ベッド上に寝た姿勢から立ち上がる姿勢まで、しっかりサポートする機能がついています。

具体的には、以下の4つのポジションのうち、その時々にとりたいポジション(姿勢)へと、
「マルチポジションボタン」の操作により、電動で移ることができるようになっています。
⑴ ベッドポジション
⑵ リクライニングポジション
⑶ シーティングポジション
⑷ スタンディングポジション

セミファーラーやファーラー位で
誤嚥防止や呼吸を楽に

⑴のベッドポジションは、ベッド本来の眠る姿勢です。
背上げ機能がついていますから、睡眠中に唾液や胃液の逆流により誤嚥する可能性がある患者の場合は、上半身を15~30度ほど挙げた、いわゆる「セミファーラー位」にして眠ることによりそのリスクを防ぐことができるのではないでしょうか。

呼吸困難があれば、45~60度挙上したファーラー位にすれば、呼吸が楽になるでしょう。
経管栄養の患者であれば、注入後にセミファーラー位を維持することにより、逆流による誤嚥を防ぐことも期待できます。

⑵のリクライニングポジションは、リクライニングチェアさながらに、背中が当たる部分を挙げることにより、ベッド上での読書やテレビ鑑賞、あるいは家族や面会人との団欒時には目線を同じ高さにして談笑することもできます。

このリクライニングポジションをとる際には、背上げと同時にサイドアップ機能により、両サイドの床板で身体を支えることができます。
これにより、ベッドからの転落を防止することができます。

坐位や立位の保持により
褥瘡予防やリハビリ効果をアップ

⑶のシーティングポジションの「シーティング」とは、seatig、つまり坐ったときの姿勢を安定させることを言います。

マルチポジションベッドのシーティングポジションでは、患者の身長に合わせて足裏全体が床につくようにベッドの高さを調節することでできます。
これにより、安定した坐位を確保できるようになっています。

このポジションで背もたれ機能を操作すれば、安定した坐位で食事を摂ることができますから、誤嚥リスクの軽減効果も期待できます。

⑷のスタンディングポジションは、座面と背もたれが傾斜して臀部を持ち上げることで、立ち上がりや車いすへの移乗をサポートするポジションです。

以上の4ポジションを、患者のその時々の「できるADL」や「しているADL」に応じて上手に活用し、サポートしていけば、褥瘡予防やリハビリテーションの効果アップにつなげることができるのではないでしょうか。

誤嚥リスクを心配することなく、自立度に応じたより適正なポジションで無理なく食事を摂ることもできますから、リハビリテーションの効果と相まって、低栄養によるフレイルの予防効果も期待できそうです。

「要介護2」以上なら
レンタル料に介護保険適用も

そこで気になるのはコストでしょうか。
商品カタログを見ると、販売価格は99万円とのこと。
とてもお手頃とは言えず、患者に安易には購入をすすめられません。
が、幸いなことに、月額1万8140円でレンタルできます。

さらに嬉しいことに、このマルチポジションベッドは、介護保険の福祉用具貸与・介護予防福祉用具貸与商品になっていますから、患者が介護保険の要介護認定で「要介護2」以上であれば、レンタル料が介護保険の適用となります。

たとえば、介護保険の自己負担が1割の患者の場合は、月額1800円程度でマルチポジションベッドのレンタルサービスを受けることができるというわけです。

患者が介護保険の要介護認定を受けていても、認定結果が「要支援1」「要支援2」あるいは「要介護1」では、介護保険の適用から外れます。
この場合のレンタル料は、毎月1万8140円となります。

なお、市町村により介護保険の対象から外れる場合もあります。
また、2018年8月1日から、一定の収入がある高齢者は、所得額に応じて自己負担が2割、3割になりますから、自ずとレンタル料は変わってきます。

この辺の話は、担当ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が熟知しているはずですから、連携し、相談してみてはいかがでしょうか。