N95マスク等呼吸用防護具の使用に注意喚起




マスク

新型コロナ感染第2波に備え
関連学会が適正使用を促す

日本では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第1波は何とか乗り越え、今のところ流行はいったん落ち着いているかのように見えます。

しかし世界的に見れば、感染拡大の波はまだ続いています。
この先、海外からの感染者の流入も予測され、またいつ大規模な流行が起こるかわからない状況にあると言っていいでしょう。

そのときへの備えとして、日本環境感染学会と職業感染制御学会、およびフィットテスト研究会感染部会・産業部会は6月12日、医療従事者向けのメッセージとして「新型コロナウイルス感染症対応における呼吸用防護具製品の適正使用に関する注意喚起」*¹を公表しています。

個人防護具の例外的取扱いから適正使用へ

医療崩壊が懸念されるほど国内で新型コロナウイルス感染症患者が急増した際には、患者対応に当たる医療従事者の感染防止に不可欠な個人防護具(PPE)が品薄状態で、スタッフ全員に十分行き渡らないといった残念なこともありました。

とりわけ「N95マスク」については需要に供給が追いつかず、厚生労働省が、使い捨てとされているものを再使用するなどの例外的取扱いを認めるほどでした。

このような、N95マスク等の呼吸用防護具製品が適正使用されているとは判断しかねる諸事情を鑑みつつ、メッセージでは、マスク製品等の選択、およびその使用方法に改めて慎重さを求める内容となっています。

大量のエアロゾル発生と
N95マスクの装着

ところで、日本環境感染学会は5月7日に公表した「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド」の第3版*²のなかで、一時的に大量のエアロゾルが発生しやすい状況における呼吸用防護具について、次のように記しています。

「サージカルマスクの代わりにN95マスク(またはDS2などN95マスクと同等のフィルター性能を有するマスク)、あるいは電動ファン付呼吸用防護具(PAPR)を追加します。
N95マスクは装着のたびにユーザーシールチェックを実施します」

なお、大量のエアロゾルが発生しやすい状況としてガイドラインは、
「気管挿管・抜管、気道吸引、非侵襲的陽圧換気マスク(NPPV)装着、気管切開術、心肺蘇生、用手換気、気管支鏡検査、ネブライザー療法、(検体採取のための)誘発採痰時」
をあげています。

N95規格のマスクなら
飛沫核の吸収をほぼ阻止できる

「N95マスク」という名称自体は、医療従事者はもとより、今回の新型コロナウイルス感染拡大により、市中の人々にもすっかり知れ渡っていますが、では具体的にどのようなマスクをいうのか、正確にご存知でしょうか。

「N95マスク」の「N」とは、Not resistant to oil、つまり耐油性がないという意味です。
「95」は、0.3μm(マイクロメートル)*以上の微粒子を95%以上捕獲できるという意味ですから、飛沫核の吸収をほぼ100%阻止できると考えていいでしょう。
*1㎛は0.001㎜

現在日本では、新型コロナウイルスなどに対する感染防止策としての呼吸用防護具は、米国NIOSH(労働安全衛生研究所)と米国FDA(食品医薬品局)で承認された「N95規格」の使い捨て式防塵(ぼうじん)マスク製品を使用することになっています。

N95マスクのなかには規格外の製品も

ただし、N95マスクは諸外国で製造されているため、数ある製品のなかには呼吸用防護具としての適正基準を満たさないものが相当数あるようです。

しかも、呼吸用防護具としての性能や防護性が担保されていない製品が、「N95マスク」の「規格品」をうたって日本国内で広く流通し、医療機関や介護施設で使用されている可能性が否定できない現状にあるようです。

米国FDAの「EUA」付きなら
N95規格を満たすマスク

結局のところ、感染防止を徹底するには、各医療機関や介護施設側で適正品の製品か規格外なのかをチェックして自衛するしか策がないのが現状なのですが……。

そんななか、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に伴うマスク需要の高まりに伴い、規格外製品が世界中に横行しはじめたのを受け、米国FDAは2020年3月下旬、急遽1つの対策を打ち出しています。

米国外、具体的には日本、オーストラリア、欧州、韓国、ブラジル、メキシコで生産され、規格・性能検定が行われた製品については、科学的根拠に基づいて使い捨て式防塵マスク(N95マスク)として使用することを認める「緊急使用承認(Emergency Use Authorizations;EUA)を与えることにしたのです。

つまり、日本国内に多種出回っている医療用マスクのうち、米国FDAの緊急使用承認(EUA)を得ている製品については、N95規格を満たしているマスクとして安心して取り扱うことができるということになります。

KN95等の中国製マスクに
規格外の不良品が多い

米国FDAのEUAに関する通知を受け、国立感染症研究所と国立国際医療研究センター国際感染症センターは「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年6月2日改訂版)」において、「DS2」「FFP2」「FFP3」「KN95」については、装着前に、
⑴ 使用期限の確認
⑵ しめひも(合成ゴム等)の劣化がないか
を確認して問題がなければN95マスクと同等に扱う、としています。

この使用前の安全確認で特に注意したいのは、中国で生産された呼吸器用保護具(使い捨て式防塵マスク)の国家認定規格であることを示す「KN95」とうたった製品のなかに、オリジナルではないコピー品、つまり規格外の製品が少なからず紛れ込んでいることです。

フィルターの微粒子濾過効率に深刻な問題が

米国NIOSHが行ったフィルターの微粒子濾過効率の評価検査では、「惨憺たる性能の製品が多数確認されている」とのこと。

さらに米国NIOSHは、KN95規格適合をうたった製品の多くが耳掛けタイプになっていて、呼吸用保護具の顔へのフィットが困難であることも指摘しており、マスク製品を選択する際には細心の注意が必要です。

なお、4月下旬以降、KN95等の中国製品に不良品が多数あることを注意喚起している職業感染制御研究会はWEBサイトで「KN95等の不良品マスクを見分ける方法について」*³として、随時最新の情報を提供しています。是非活用してください。

参考資料*¹:日本環境感染学会 「新型コロナウイルス感染症対応における呼吸用防護具製品の適正使用に関する注意喚起」

参考資料*²:「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版」

参考資料*³:職業感染制御研究会「KN95等の不良品マスクを見分ける方法について」