高齢患者のポリファーマシーを防ぐ服薬支援




多剤服用

ポリファーマシーで注視すべきは
併用する薬の数ではない

高齢者を中心とするポリファーマシーを防ぐための取り組みが、医療機関はもとより地域社会においてもさまざまなかたちで進んでいます。

つい先日も、地元の自治体からの広報誌に、
「あなたは、今、何種類の薬を服用していますか?」
と高齢者に問いかけ、数種類の処方薬を同時に服用することに伴うリスクをアピールして、注意を促す記事が掲載されていました。

ただ、これでは「ポリファーマシー」の意味を誤解させます。
そもそも「ポリファーマシー」という言葉は、「poly(多くの)」と「pharmacy(薬剤)」を組み合わせた造語です。

この組み合わせから、ポリファーマシーを「多剤併用」とか「多剤処方」と解釈しがちです。
しかし、ポリファーマシーで問題にすべきは、多剤を併用すること自体、つまり服用する薬の数ではないことを、まずは押さえておく必要がありそうです。

ということで、今日はこのポリファーマシー問題について書いてみたいと思います。

ポリファーマシーとは
多剤併用により有害事象を起こすこと

ポリファーマシーについては、厚生労働省が2018年5月に公表した「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」のなかで、こんなふうに説明されています。
「単に服用する薬剤の数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスクの増加や服薬過誤、服薬アドヒアランスの低下などの問題につながる状態である」

ここで言う「薬物有害事象」とは、医薬品を使用することによって起こるあらゆる好ましくない、あるいは意図しない反応のことです。
通常よく言われる「副作用」は、この有害事象のうち、使用した医薬品との因果関係が否定できない薬物有害反応のことです。

また、「服薬過誤」とは、処方や調剤の段階ではなく、薬剤を服用する時点でのミスのことです。
本人の薬の飲み忘れや飲み間違い、あるいは入院中の患者の場合であれば医療スタッフによる配薬ミスなども服薬過誤となります。

そして「服薬アドヒアランス」ですが、アドヒアランス(adherence)とは、「自ら納得して自分の意思で行う」という意味です。
ですから、服薬アドヒアランスとは、患者が薬物治療の目的を正しく理解し、納得したうえで、医師の処方に従って薬を服用すること、と理解することができます。

週刊誌やテレビの報道番組が「飲んではいけない薬」などを取り上げることがある。それらの薬を見ると、高齢者が医師の処方を受けて定期的に服用している薬が数多く含まれている。当然患者は不安を募らせるのだが。そんなときの看護師の対応についてまとめた。

高齢者のポリファーマシーを招く
服薬アドヒアランスの低下要因

高齢者、特に75歳以上の後期高齢者では、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、不眠症など、複数の疾患を抱え、複数の病院や診療科で治療を受けることが多くなります。
自ずと、処方を受ける薬の種類や数も増えることになります。

服用する薬の数が多くなれば、薬の管理は複雑になり、混乱をきたしやすくなります。
一方で、加齢に伴う視力の低下や手指の機能障害、さらには理解力、記憶力の低下なども加わって、服薬アドヒアランスが低下し、「薬を飲み忘れる」「薬の服用を拒む・自己中断する」「自分では薬を飲めない」といった事態を招きがちです。

このような高齢者の服薬アドヒアランスを低下させる要因として、先の厚生労働省の指針は以下の点をあげ、高齢者に服薬支援を行う際には、各要因が適正な服薬に影響しているかどうかをまず確認しておくことをすすめています。

服薬アドヒアランス低下の要因
●服用管理能力低下
①認知機能の低下 ②難聴 ③視力低下 ④手指の機能障害
⑤日常生活動作(ADL)の低下
●多剤服用
●処方の複雑さ
●嚥下機能障害
●うつ状態
●主観的健康感が悪いこと
(薬効を自覚できない等、患者自らが健康と感じない状況)
●医療リテラシーが低いこと
●自己判断による服薬の中止
(服薬後の体調の変化、有害事象の発現等)
●独居
●生活環境の悪化

(引用元:「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」p.15)

なお、ここに書かれている「医療リテラシー」とは、ヘルスリテラシー(health literacy)とも呼ばれ、健康や医療に関する意思決定に必要な情報を、自身の目的に沿って入手・理解・活用できる能力のことを意味します。

服薬アドヒアランス改善に向け
医師や薬剤師らと連携し支援する

高齢患者の服薬アドヒアランスを低下させている要因を確認したうえで、該当する低下要因に応じて、医師や薬剤師らと連携しつつ、服薬しやすく、服薬アドヒアランスが改善されるように処方や調剤、さらには服薬上の工夫をしていくことになります。

たとえば視力低下や手指の機能障害等によりシートからの薬剤の取りこぼしや紛失が認められるようなら、薬剤師と話し合い、無理なく服用できる剤形に変更します。

また、頭痛や腹痛、不眠などへの対症療法的に使用する薬剤については、1日3回といった定期的服用ではなく、できるだけ頓用に切り替えることにより1回に服用する薬の量を減らすなどの工夫を、処方医に相談してみるのもいいでしょう。

嚥下障害が認められる場合は、剤形の変更や服薬補助ゼリーを使うなど、服用方法を患者に提案してみるのもいいようです。

なお、紹介した「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます(コチラ)。
指針の巻末には、高齢者に広く用いられる薬剤について基本的な留意点をまとめた別表、および使用に際して特に慎重さが求められる薬剤のリストが添付されています。