依存症啓発サポーターの存在をご存知ですか?




薬物依存

依存症からの回復には
依存症者を孤立させない環境を

麻薬取締法違反の罪で起訴された女優の沢尻エリカ被告が12月6日、保釈されました。
その日、彼女の保釈を報じたメディア各社に向けた謝罪文には、
「専門家の指導も受けて立ち直る」との一文がありました。
この言葉を信じ、個性あふれる女優としてスクリーンに戻ってくる日を待ちたいと思います。

彼女のような違法薬物はもちろんですが、アルコールもタバコ(ニコチン)も、またパチンコや競輪、競馬といったギャンブルなどの依存症は、完全に治癒することはむずかしいものの、回復して社会に復帰することが可能な病気です。

ただ、回復するためには専門家による適切な治療と支援が不可欠でしょう。
加えて、依存症者を周りの人々の偏見や差別によって孤立させないよう、環境を整えることが何より大切になってきます。

この環境づくりを目的に、厚生労働省(以下、厚労省)はここ数年、依存症の理解を深めるための普及啓発活動にことのほか力を入れています。

この活動の中心的役割を担ってもらおうと、毎年、いわゆる有名人のなかから「依存症啓発サポーター」を起用しているのですが、今年はお笑いタレントで、あの「ピコ太郎」をプロジュースしたことでも知られる古坂大魔王(こさかだいまおう)さんが就任しています。
ご存知でしたでしょうか?

依存症の理解を深めて
依存症者を受け入れる社会づくり

厚労省はさまざまな健康課題について、理解促進のための啓発活動を展開しています。
その、旗振り役といいましょうか推進役の代表に古坂さんのようなお笑いタレントを起用するケースが多いのですが、最近私たちは「人生会議PRポスター」の件で、とても残念な体験をしています。

そんなこともあって、
「えっ、またお笑いタレントなの?」といった危惧の念もなきにしもあらずなのですが……。

古坂さんが厚労省から「依存症啓発サポーター」の任命を受けたのは、あの1件より1か月以上も前の10月18日だったようです。

厚労省の担当部署(障害保健福祉部精神・障害保健課依存症対策推進室)は、依存症の理解を深めるための啓発事業をよりわかりやすく紹介し、依存症の人々を「受け入れられる社会」をつくり上げていくための、いわば応援団長として、古坂さんを任命したと説明しています。

そのうえで、具体的な活動としては、
「依存症に対する昨今の社会的な排除風潮に対してポジティブに問題提起を行っていただき、誤解だらけの依存症について、ご本人の類似体験や取材活動などを交えながら活躍していただく予定」としています。

依存をやめなくてはならないのに
やめられないのが依存症

「依存症」と呼ばれる病気について世界保健機関(WHO)は、
「精神に作用する化学物質の摂取や、快感・高揚感を伴う行為を繰り返し行った結果、さらに刺激を求める抑えがたい渇望が起こり、その刺激を追求する行為が第一優先となり、刺激がないと精神的・身体的に不快な症状を引き起こす状態」
と定義しています。

やさしく言えば依存症とは、依存をやめなくてはならないのに、やめられない病態です。
たとえば日中の度重なるストレスから解放されるために晩酌を続けてきたものの、依存が過ぎて健康を害したり、家族関係を損なったりするようになってしまう。

そこで、晩酌を控えなくてはならなくなったものの、脳がアルコールによる鎮静効果を覚えてしまっているために、晩酌なしにはこころが落ち着かず、夜も眠れず、鎮静効果を求めてついまた飲んでしまう、といった状態です。

このような状態に陥るのは、依存性のあるものを繰り返しているうちに、脳のなかにある自らの行動にブレーキをかける部分が働かなくなり、依存したいという欲求をコントロールできなくなってしまうからだと、一般に説明されています。

依存症は治癒は難しいが
回復状態を続けることはできる

ひとたびこのような状態、つまり依存症に陥ってしまうと、本人の意思や努力だけで、特定の行為や物質への依存から脱却することは到底無理です。

仮に、本人が意を決してその行為に走らないようにしようとしても、過度のストレスを感じたり孤独感に襲われたりすると、元の木阿弥、また同じことを繰り返してしまうのが依存症という病気です。

そこで、精神神経科などの専門医療機関で認知行動療法のような専門的治療やサポートを受けながら、回復を目指すことになります。

この場合の回復とは、自分が依存症という病気であることを認めて、特定の物質や行為に頼らずに生活できている状態を言います。
たとえば薬を飲んだから治ったということではありませんから、依存に陥るリスクは常にかかえていると言っていいでしょう。

そこで、回復している状態を維持して社会生活を続けていけるようにするためには、正しい理解にたったサポートが欠かせないことになり、その推進役を、依存症啓発サポーターの古坂さんに担ってもらおうというわけです。

■自己効力感を高めるサポート
慢性疾患患者の生活の再構築に向けた自己効力感を高めるセルフケア支援は、依存症からの回復支援にも通じるものがあるように思います。

それだけに看護職の皆さんのこの活動へのいっそうの理解とサポート活動への積極的なかかわりを期待して、紹介させていただきました。

厚労省が取り組んでいる依存症の理解を深めるための普及啓発事業の詳細は、こちらからチェックしてみてください。
https://www.izonsho.jp/