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「QOL」ならわかるけど
「QOD」の意味は?
入院、在宅の別なく、医療やケアサービスが提供されている現場では今、アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)、いわゆる「人生会議」の実践が求められています。
人生の最終段階における医療やケアを、患者(利用者)本人の人生観や価値観、希望に沿って行うことにより、最期までその人らしく生き抜いてもらおうという取り組みです。
このACPに関連して、このところ「QOD(quality of death)」という言葉をよく見聞きするようになりました。たとえば、「QODを高める」とか「QODに着目する」、あるいは「QODを支える」などと使われていることが多いように思います。
一方で、「QOLという略語なら使い慣れているけど、QODってどういう意味なの?」という方も少なくないようです。そこで今回は、この「QOD」について、ちょっと書いてみようと思います。
「QOD」を高めて
本人が納得できる終末期を
「QOL」が「生活の質」なら「QOD」は「死の質」となります。ただ実際は、「良い死(good death)」とか「理想的な死」、あるいは「その人らしい逝き方」といった意味を込めて使われていることが多いように思います。
たとえば厚生労働省は、終末期の医療やケアの在り方について解説した2013年8月発出の資料*¹のなかで、「終末期における医療の在り方」として、「医療提供者の側だけでなく、医療を受ける側がどう考え何を求めるかが大きな要素になっている」と、ACPの重要性を示唆しています。そのうえで、QODについて次のように説明しています。
超高齢社会に見合った「地域全体で、治し・支える医療」の射程には、そのときが来たらより納得し満足のできる最期を迎えることができるように支援すること――すなわち、死すべき運命にある人間の尊厳ある死を視野に入れた「QOD(クオリティ・オブ・デス)」を高める医療」も入ってこよう。
後掲参考資料*¹より
患者本人だけでなく
家族も安らげるQOD支援を
また、東海大学の西村昌記教授(健康学部健康マネジメント学科)は、QODとは「死のあり方や死にゆく過程における全般的な質を意味するもの」としたうえで、QODが患者個人の話にとどまるものではないことを次のように説明しています。
本人にとっての安らかな死を指すだけでなく、死の直前にある者が個人として尊厳を守られ、同時に残された家族にも安らぎがもたらされるような死の迎え方をも含んでいる。
引用元:QOD 人生の最終段階への支援*²
QOD支援の前提として
ACPの実践を
そこで終末期医療・ケアの実際ですが、患者本人や家族が求めるQODの実現を図るには、「どのように終末期を過ごし、人生を終えたいのか」について、医療やケアを受ける側の患者や家族とそれを提供する医療者側とが遠慮なく話し合う必要があります。つまり、ACPの実践です。
ACPは、このところ徐々に普及しつつあるようです。ただ、いざ取りかかろうとしたものの「どこから話を始めたらいいのか」、「死にまつわるデリケートな話だけに、患者や家族にどのように話を持ちかけたらいいのか」……などなど。考え込んでしまっている方も多いのではないでしょうか。
そんな方に是非参考にしていただきたいのが、看護の視点からQOL・QOD・ACPの研究を続ける関西医療大学保健学部の森岡広美准教授(刊行当時。現在は教授)らの監修によるこちらの一冊です。
その人らしい生き方を支え
その人らしい逝き方を実現するために
本書の表紙にあるように、サブタイトルとして「意思決定する人・その支援をするすべての人に向けた参考書」とあります。
具体的には、人生の最終段階を迎える患者やその家族と、どのように向き合い、関わっていけば、その人らしい生き方(QOL)を支え、その人らしい逝き方(QOD)で看取ることができるのかを、実際に看取りの経験をもつ医療関係者や遺族、葬儀関係者など、様々な立場の方の生の声から学ぶことのできる内容となっています。
患者個々のQODを支えるACPの実践に、是非お役立てください。
参考資料*¹:厚生労働省「終末期相談支援員の育成について」P.3
引用・参考資料*²:西村昌記「QOD 人生の最終段階への支援」